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コロナ禍でも連続2ケタ成長!快調サブウェイを牽引する学生デジマ部隊と新体制で描く成長戦略

コロナ禍で明暗が分かれた飲食業界。そうした中、日本サブウェイ(東京都)は、2年連続で対前期比2ケタ成長を果たし、快調に苦境を乗り越えた。一時は500近くあった店舗を半分以上に減らす苦難の時期もあったが、復調。20234月からは、二人三脚で業績を牽引してきた共同代表の鈴木孝尚氏の退任により、阿相智久氏が単独で舵を取っている。同氏に、好調の要因や新体制で描く成長戦略などについて聞いた。

連続2桁成長で乗り越えたコロナ禍

京成千葉駅店

 コロナ禍の収束ムードが高まる中、日本サブウェイの代表 阿相智久氏は、満足げにこの3年を振り返った。

 「2021年度(コロナ前2019年12月期対比)、2022年度(前年対比)がいずれも2ケタ成長だった。さらに20233月時点でも前年同期比で2ケタ成長を継続している」と阿相氏。ファーストフード業態は、コロナ禍でも影響は比較的少なかったものの、それでも2年連続の2ケタ成長は同社の復調が本物の証だ。

 要因として阿相氏は、店舗やスタッフのクリンネス徹底、デリバリー強化、フランチャイズへの厚い支援などを挙げる。

苦難の時期を脱し、再び成長モードへ

 急速に店舗数を増やし、500店に迫る時期もあった同社。だが、2015年前後から停滞が続き、4年で約200店舗を閉店。成長曲線に陰りがみえた。当時について阿相氏は、「契約終了に伴い(当時親会社だった)サントリーさんの撤退で、当社が本国のサブウェイ直轄(サブウェイ・インターナショナル・ホールディングスの子会社)になる中、体制の移行などが負荷となり、人材育成も十分でなかった側面があった」と振り返る。

 急成長と急ブレーキ。飲食事業の難しさを、一員として直に経験してきた阿相氏だからこそ、現在の好調にも浮つきは微塵もない。むしろ、さらなる成長のためにやるべきことを真摯に見据え、捲土重来を期さんとサブウェイの進むべき未来を見据える。

SNSマーケで増強した「集客」

 「復調の兆しはコロナ前からあった。特に集客の部分、『呼び込む』力が強まった。ここは引き続き強化していきたい」と阿相氏。原動力となったのは、SNSを活用したマーケティング施策だ。

 同社は、マス広告依存から脱却し、SNSを最大限に活用するマーケティングで、サブウェイファンによる情報交換、来店促進、ロイヤリティ形成までを実現させるモデルを構築。コンセプトは「話せる公式」で、ファンと直の対応も積極的に行うなど相互交流の場として機能させ、SNSマーケティングの成功事例として広く知られる存在になっている。

集客けん引する学生デジマ部隊

 同社ではその運営の中で、デジタルネイティブの大学生インターンを活用。SNSの活用法を誰よりも知る世代にあえて裁量を与えることで、より踏み込んだ打ち手を可能にし、成果につなげている。

 こうした体制の構築もあり、同社のTwitterフォロワー数は201811月時点の20万人弱から、4年で110万人超と5倍以上に成長。いまでは同社の重要な集客ツールとして、最大限に活用されている。

呼び込む、飲み込む、囲い込むの「3コム」で成長を持続

えびアボガド ポテトドリンクセット

 集客力が強まり話題を集め、来店者は増加した。だが、それだけでは実益につながらない。「集めた顧客を、今度は店舗で受け入れなければならない。私たちは『飲み込む』と言っているが、これがしっかりできないと売上にはつながっていかない。さらに『囲い込んで』リピートも増やさないと」と阿相氏。

 「飲み込む」ためには、店舗オペレーションの改善や人材育成が重要になる。そこに対し、さらに教育体制を強化するなどで対応。さらに「囲い込む」ために、新商品や限定商品を積極的に開発・投入し、継続的に興味を持ち続けてもらえるブランドとして、進化を続けていく。

 「新メニューの開発は本国の意向も無視できず、簡単ではない。しかし、日本独自のメニューはやはり重要。2006年に誕生し人気No.1商品へ成長、いまではグローバルでもメニューに入っているえびアボガドは日本発の商品。こうした日本オリジナルの商品開発にも引き続きトライしていく」と阿相氏は力を込める。

米国本国の株式売却話も改革の一環!新体制で描く、サブウェイの成長戦略

キオスクレジをテスト導入している天王洲シーフォートスクエア店

 共同代表の鈴木孝尚氏の退任により、20234月から単独でサブウェイの舵取りを担っている阿相氏。同社で長いキャリアを重ねたトップとして「いい時から苦しい時期を経て、今また売上が好調な状況。もう、ターンアラウンド(再生)の期間は終わったのかなと。これからはより成長を加速させるモードにシフトチェンジしていかなければならない。創業者の株売却の話もあるが、これもグローバルでの改革の一環であり、ポジティブに捉えている。今のこの勢いをしっかりと成長軌道にのせていきたい」と話す。

 その上で、「成長を軌道に乗せる上で大事なのは人。しっかりオペレーションができる環境だったり、サービスだったり。ここに今年は力を入れていく。教育に関しては一つひとつの作業をすべて動画にして、オーナー、店長からアルバイトスタッフにまでしっかりと落とし込んでいく」と、人の強化に注力し、フランチャイズ全体のポテンシャルまでを底上げする方針を示した。

生産性向上のためのDXも積極推進

 さらに、「スタッフが店舗で、サンドイッチをつくることに集中できる環境も構築したい」と、デジタルメニューボードやキオスクレジなど、DXを積極推進。これまで人力で対応していた部分を機械化・自動化することで店舗スタッフの労力の最適化・最大化にも取り組み、「飲み込む」力をさらに増強する考えを明かした。

多様で柔軟な出店戦略で店舗網も拡大へ

代表の阿相智久氏

 より多くのニーズを「飲み込む」ためには、出店戦略も重要になる。阿相氏は、「現在168店舗2023331日時点)だが、今年は、まず 15 店舗を出店したい。サブウェイを取り巻く環境も変わってきており、デベロッパーからのお声掛けも増えている。だからこそ、サブウェイのビジネスに共感してくれていることを大事にし、慎重に見極めながら出店計画を進めていきたい」と展望を語る。

 出店要請の中には、テイクアウト & デリバリーに特化した小規模店舗や2階層の店舗など、これまでのサブウェイにはなかったバリエーションもあるという。そうした要請にも柔軟に対応しながら、ニーズや立地、地域性に合わせた出店をすることで、ペースがより加速することも期待される。

巨人に肉薄する「定番」として31年目を躍進元年に

 ファーストフードでありながら、健康的でオーダーメイド型という独自のポジションで成長を続けてきたサブウェイ。日本上陸から30年を経て客層も広がり、ファーストフードの一つの「定番」としても認知されつつある。

 コロナ禍で復調を強く印象付けた同社は、健康志向のさらなる高まりを追い風に、巨人が君臨するファーストフード業態で、V字回復の完結と、止まらない躍進を目指していく。