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高齢化・人口減・原発事故の影響受ける福島でかく闘う!ダイユーエイト流令和の成長戦略

福島県は、日本の未来図と言ってもいい。2015年に192万人あった人口は2037年には17.7%減の158万人になり、26%だった65歳以上人口は38%と12ポイントも上昇すると予想される。高齢化と人口減少が進んでいく中で、原発事故が追い打ちをかけ一時避難者は戻らない。先細りする市場に地盤を構える小売業にとっては成長デザインが描けない――。

地域密着型の商材:イノシシ、シカ、ハクビシン、サル、タヌキ対策デバイスを集めた

設定商圏は15000人から5万人に

 そんな厳しい商環境の中で、「平成の成長戦略を見直し、令和時代の成長戦略をつくりあげたい」と前向きに語るのは、アレンザホールディングス(東京都)の浅倉俊一社長だ。浅倉社長は、同社の事業会社の1つであるホームセンター企業、ダイユーエイト(福島県)の創業者であり社長でもある。

 ダイユーエイトは現在、8県に71店舗を展開する。

 福島県にはホームセンター44店舗のほか、オフィス専門店「オフィスエイト」を3店舗、自転車専門店「ワンズサイクル」を10店舗、その他「ダイユーエイトMAX」を1店舗と全店舗数の8割強が集中する。

 では、浅倉社長の考える「令和時代の成長戦略」とはどんなものなのだろうか?

「昭和から平成にかけては、出店すれば成長することができた。だから、出店は成長戦略そのものだった。しかし令和は違う。高齢化、人口減少、競合激化の中で、既存店舗の成長性には、限界が見えてきているからだ。先行きが危ぶまれる既存店舗には、無理に投資をして、テコ入れすることはしない。むしろ、スクラップを検討する。ただ今後も出店は継続していく。しかし福島県から南下して、さらなる激戦区の北関東を目指すのは得策ではないし、そんなスキマはないので、北上していきたい。従来は、15000人ほどの小商圏でシェアアップを図ることで成長を重ねてきたが、今後は、お客様のいらっしゃる5万人商圏をベースに出店を進めていきたい」(浅倉社長)。 

 「商品的には園芸・植物、DIY、作業用品など“HCらしい”品揃えに加え、その周辺に存在する商品群をラインロビングする」(浅倉社長)。

 どんなに苦しい環境の中でも企業は100年の計を持ち、次の世代にバトンを繋がなければいけないと考えている。だからこそ、ホームセンターバロー(岐阜県/和賀登盛作社長)と経営統合して、バローホールディングス(岐阜県/田代正美社長)グループ入りを果たし、規模のメリットを享受するためにアレンザホールディングスを立ち上げた。


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原発事故を経て、8年3カ月ぶりに再開業を果たす!

原発事故を経て、8年3カ月ぶりに再開業

100円ショップ「ワッツ」売場:フランチャイズ契約を結んだ。同一レジで精算が可

 さて、621日、ダイユーエイトは、小高店(福島県南相馬市小高区大井字深町21)を開業した。売場面積約3290㎡、駐車台数238台、開業時間は9時~19時の概要。原発事故で休業していた旧小高店の立て替え出店だ。

 小高区は、2011年の原発事故後、167月には避難指示がほぼ全域で解除されていた。しかしながら、これといった商業施設は再開しておらず、それだけに住民の期待は大きく、83カ月ぶりの再開業前には300人が列をつくった。

 約3290㎡の売場には“ホームセンターらしい”商材のほか、自らが100円ショップ、ワッツ(大阪府/平岡史生社長)のフランチャイジーとして出店。同一のレジで精算でき、利便性を高めた。

食品売場:カバー付きの冷凍ケースを4台導入。バローの食品PBもいたるところに差し込まれている

 さらに目を引くのは約132㎡を割いた「食品売場」だ。カップ麺やスープ、お菓子、酒類などの加工食品にのみならず、冷凍食品や弁当、パンなど充実の品揃え。とくに弁当、おにぎり、サンドイッチは、プロ業者などから支持を受け、初日は売り切れた。

 ただ、この盛況を目の当たりにしても、浅倉社長の考えは固まっている。

「食品の導入は、最後の手段だ。当社の本業はあくまでもホームセンター。“ホームセンターらしい”主力商品でしっかり売上をつくっていきたい」と抱負を語った。