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三浦 弘社長が明かす、ビッグ・エーが小型家電や雑貨も品揃えしていく理由

イオン傘下で小型ディスカウントストアを展開するビッグ・エー(東京都)は、欧米で急伸している「ハードディスカウントストア」を長年ベンチマークしながら店舗開発を進めてきた。そして2019年10月の消費税増税を機に、日本でもハードディスカウントストアの存在感を高めたい考えだ。その戦略を三浦弘社長に聞いた。

ハードディスカウントストアが浸透しないのは認知度が低いから

──ハードディスカウントストア企業のアルディ(Aldi)やリドル(Lidl)を長年研究されています。

三浦 弘(みうら・ひろし)●1969年12月兵庫県生まれ。92年流通科学大学卒業後、ダイエーに入社。2008年グループ事業本部本部長。13年DS事業本部本部長 兼 ビッグ・エー代表取締役会長兼 ビッグ・エー関西代表取締役会長。14年3月よりダイエー執行役員DS事業本部本部長、ビッグ・エー代表取締役社長(現任)、ビッグ・エー関西代表取締役社長を兼務。18年4月から、同じくイオングループのアコレの代表取締役社長も兼任する。

三浦 徹底したローコスト運営の手法を学ぶべく毎年、店舗を視察しています。とくに2社は近年、英国でのシェアを大きく伸ばしています。しかし英国でもかつては「アルディやリドルで購入した食材でつくった弁当を子供が持っていくと学校で恥ずかしい思いをする」と揶揄されていたこともあるほど、ハードディスカウントストア業態は軽視されていました。しかし2008年のリーマン・ショックや、11年の付加価値税の増税を好機に、消費者の支持を獲得していったのです。

 日本では、ハードディスカウントストア業態と言える店で店舗数が100を超えているのは、「ビッグ・エー」と、同じくイオングループの「アコレ」(社名もアコレ、三浦弘社長が兼務)、関西圏を中心に店舗展開する「サンディ」の3つしかありません。10月の消費税増税をチャンスに「安かろう悪かろう」というイメージを払拭してハードディスカウントストア業態を浸透させたいと考えています。

──日本でハードディスカウントストア業態が浸透していない要因は何でしょうか。

三浦 認知度の低さではないでしょうか。一般的に食品スーパーの新店の売上高は、初年度に高い数値を出し、翌年以降は伸びても前年の102~103%で推移します。一方、「ビッグ・エー」の場合は、出店後5年くらいは売上高が前年の105~108%のペースで伸び続けます。認知度が徐々に高まりさえすれば、お客さまは繰り返し来店してくださるようになるのです。

 現在、「ビッグ・エー」は首都圏に231店舗(19年6月現在)を展開しています。この規模では認知度を高めるのには不十分で、今後出店スピードを加速していきます。

競合7社の価格を調査「安さに根拠をつける」

──現在の消費環境をどう捉えますか。

三浦 すでにお客さまが業態で店を選ぶ時代ではなくなっています。SMやDSはもちろん、ドラッグストア(DgS)やコンビニエンスストア(CVS)などのすべての業態が競合となるなか、成長しているのは買い上げ点数を伸ばしている企業です。これを伸長させるために、当社では、HDSの最大の武器である「低価格」で競合他社と差をつけるべく「安さに根拠をつける」ということに力を注いでいます。

──具体的にどのようなことを実践されているのですか。

三浦 当社の商勢圏内で競合とするSM、DS、DgSの計7社の、プライベートブランドを含む共通の500品目の価格を、専任の担当者が毎週調査しています。そして、この500品目の合計金額が7社よりも20%以上安くなるように価格を設定しています。

 ただ、500品目すべてを競合より20%安くしているわけではありません。当社では価格を設定する際に「安さ観」を意識しています。お客さまは、この金額以下なら安いと感じる「安さ観」を商品ごとにお持ちです。500品目の中でも、より訴求力の高い商品を、「安さ観」を圧倒的に下回る価格で提供することで低価格を訴求しています。

──「ビッグ・エー」の現在の基本的なフォーマットを教えてください。

三浦 売場面積は平均100坪です。ただ、今後都市部で出店攻勢をかけるためにより小型の店舗開発も進めており、70坪ほどのフォーマットも確立しつつあります。

 ただ、売場面積は異なっても、設定する基本商圏は店舗から半径800mです。なぜなら、「ビッグ・エー」のお客さまの過半を占める50歳以上の方が、ふだんの買物のために移動される距離は片道800mほどだと考えているからです。この商圏内で「最も安い」と認知され、週に何度も利用してもらえる店になることをめざしています。

──取り扱うSKU(絶対単品)数についてはどのようにお考えですか。

三浦 全体で2400SKUほどが適正だと考えています。理由を説明すると、一般的な食品スーパーは売場面積600㎡ほどで約1万2000SKUを扱っています。マーケティングにおける「2:8の法則」のもと、売上上位2割の商品が全体の8割の売上をつくると想定し、食品スーパーの2割に当たる2400SKUを揃えれば、お客さまに必要最小限のコモディティ商品を提供できると考えています。

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わずか2400SKUに絞り込むのに、小型家電や雑貨を品揃えしていくねらい

小型家電や雑貨も品揃えし、楽しい買物体験を提供!

出入口すぐの場所に設置する国産野菜のコーナー。売上高全体の約15%を占める

──「ビッグ・エー」が50歳以上の方から支持されている理由は何でしょうか。

三浦 理由の1つに、国産野菜の販売に力を入れてきたことが挙げられます。外国産の輸入青果を多くの小売店が取り扱うようになっているなか差別化策として、契約農家さんとの関係構築を進め、国産野菜を豊富な品揃えで、かつ安定した価格で提供しています。通常、ハードディスカウントストアは酒類の売上高構成比がもっとも高くなるのですが、当社は青果の売上高構成比が全体の約15%と、酒類と同じくらい高いのが特徴です。

──今後の強化カテゴリーはありますか。

今後強化していくカテゴリーの1つインストアベーカリー。冷凍生地を使用して店頭作業の削減を図っている

三浦 アルディやリドルは近年、出入口に催事コーナーを設置したり、オーガニック野菜をコーナー化したりと、従来のハードディスカウントストアのイメージを覆すような取り組みを進めています。そうしたなか、「ビッグ・エー」でも始めているのが、インストアベーカリーと非食品の販売強化です。

 インストアベーカリーは食品スーパーと遜色ない品質の商品を、税抜89円均一で提供します。16年から販売をスタートし、すでに27店舗に導入済みです。1日200~300個を売り上げるコーナーに育成できれば3年ほどで投資回収ができる見込みです。

 非食品では、2000円以下という低価格でありながら便利で品質の高い、小型家電製品を提案します。すでに1人用のホットプレートや、小型扇風機などを実験的に販売しています。これら商品を加えることで、まるで宝探しをするような楽しい買物体験をお客さまに提供したいと考えています。

ローコスト施策を集結した店舗を開店

──ハードディスカウントストアの低価格の実現には、ローコスト・オペレーションが必要不可欠です。

三浦 当社は10年以上前からアルディやリドルを参考にローコスト・オペレーションを推進してきました。その結果、現在では基本的に1店舗当たり48人時/1日で営業できる体制を構築しています。

 ローコスト・オペレーションの代表的な施策としては、5年ほど前から始めたシェルフレディパッケージ(※1)の導入が挙げられます。現在の対応商品は多いときで300品目ほどあり、さらに増やしていく方針です。

 将来的には、自社の物流網を持つ強みを生かし、店舗での作業が少なくて済むような商品の納品形態を確立してフロア・レディ・マーチャンダイジング(※2)を実現するべく準備を進めています。

※1:ハサミやカッターなどを使わず簡単に開封でき、そのまま売場に陳列できるパッケージ
※2:商品を売場にケースのまま陳列できるようにして、品出しの人件費や労力を低減させる方式

導入を進めているシェルフレディパッケージ。「将来的にはカテゴリーごとに段ボールの色を統一し、お客さまに分かりやすく、かつ洗練された雰囲気の売場を構築したい」(三浦社長)

 今年7月には、これまで積み上げてきたローコスト・オペレーションの施策の集大成として、東京都足立区の「足立扇店」を全面改装します。さらに、同店で試行錯誤した成果を反映させた新店も11月頃までに出店する計画です。

 アルディやリドルが先進的に実践する人時を低減させる解決策は、人手不足が社会問題となっている日本も取り入れていくべきだと考えます。今後、日本では高齢化が進み、単身者も増え、買物が困難になる人が増えるでしょう。小商圏でも成り立つモデルのハードディスカウントストアは消費者に貢献できる業態であり、「ビッグ・エー」がその第一人者になりたいと考えています。

──今後の出店計画を教えてください。

三浦 20年2月期の新規出店計画は15店にとどめていますが、今後は毎年、店舗数全体の約1割に当たる20店ほどを出店したいと考えています。

 出店地については、東京都南部や神奈川県周辺のドミナント深耕を早期に進めるとともに、ここ最近SMの退店が続いている東京都の八王子市、東大和市、多摩市エリアに出店のチャンスがあるとみています。

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