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ペルノ・リカール・ジャパン代表取締役社長 ノジェム・フアド
プレミアム志向のトレンドを追い風により高付加価値の商品に注力していく

「シーバスリーガル」を筆頭に、世界的に名高いワイン・スピリッツブランドを多数展開し、プレミアム&プレステージスピリッツ部門で世界No.1の地位を誇るペルノ・リカール グループ。その日本法人であるペルノ・リカール・ジャパンの代表取締役社長に2019年1月、新たに就任したノジェム・フアド氏に同社の成長戦略について聞いた。

聞き手=阿部幸治 構成=室作幸江

業務用と家庭用の相乗効果で好調に推移

──まずは、日本の酒類マーケットをどのようにとらえているかを聞かせてください。

ノジェム・フアド●1978年生まれ。カナダのコンコルディア大学政治学学士。カナダのマギル大学マネジメント&マーケティング学士。卒業後、大手広告代理店TBWAに入社。2008年ザ・アブソルート カンパニー入社。リージョナル副社長(アメリカ合衆国)などを経て、16年ペルノ・リカール グローバル・トラベル・リテール アジアのマーケティングディレクター就任。17年4月、ペルノ・リカール グローバル・トラベル・リテール マーケティング副社長(ワールドワイド免税市場 マーケティングの最高責任者)に就任。19年1月、ペルノ・リカール・ジャパン株式会社 代表取締役社長(President&CEO)就任

フアド そもそも日本市場は、ペルノ・リカール グループにとってきわめて重要な市場と位置づけています。確かに酒類マーケット全体は縮小傾向にありますが、当社の主力商品群であるウイスキーやシャンパンは、拡大傾向にあります。加えて、より付加価値の高い商品を求めるプレミアム志向も顕著です。こうした市場動向は、まさに当社のポートフォリオ(保有ブランドの組み合わせ)に合致するものであり、おかげさまで業績は好調に推移しています。

 日本のお客さまは「より質の高いものを求める」志向性をもち、そうした商品に対する理解度も高いと感じています。スピリッツやシャンパンが伸長している要因は、そういったところにもあると思いますね。

──御社は業務用と家庭用の両方でビジネスを展開していらっしゃいますが、その相乗効果はいかがでしょうか。

フアド おっしゃるとおり、両者の間にはシナジーがあり、それはブランドの構築という点において重要な意味をもつと考えています。

 私どもが保有するスピリッツやワインのラグジュアリーブランドというのは、お客さまが店頭で見つけたからといって、すぐに購入するというようなものではありません。レストランやバーなどで体験してみて、気に入れば家庭用として購入するというパターンが一般的でしょう。それゆえ、業務用と家庭用の両方にお客さまとの接点をもっていることは、ブランドの認知拡大を進めるうえで非常に優位に働くと考えています。

 昨今、日本では家飲み需要が増加していると聞いております。そういう意味では日本の家庭用市場はまだまだポテンシャルが高いと思っています。レストランやバーで私どもの商品をご経験いただき、さらに家飲みでも楽しんでいただく。業務用と家庭用の双方に複数のタッチポイントを持っている当社としては、十分に強みを発揮できるのではないかと思っています。

日本の文化に寄り添ったプロモーションを実施

──御社の家庭用酒類市場における商品戦略について教えてください。

フアド 商品戦略を語るうえで重要なキーワードとなるのが「プレミアム化」です。当社が手がけるポートフォリオの中で横展開や縦展開しながら、高付加価値商品へのシフトに力を入れていきたいと考えています。

 たとえば「シーバスリーガル」の場合、「シーバスリーガル12年」をベースに、「シーバスリーガル ミズナラ12年」のようなユニークな商品をご紹介する一方、よりプレミアム志向の「シーバスリーガル18年」もご案内するといった具合に、高付加価値商品のすばらしさをご理解いただくプロモーションを行っていきたいと思っています。

──具体的にはどのようなやり方でしょうか。

フアド 試飲会やグラス付き限定品の販売、お試し用の小容量ボトルの展開などが挙げられます。日本に着任する前は、グローバル・トラベル・リテール部門、すなわち小売(免税店)の世界におりましたので、試飲販売や推奨販売が有効であることは身をもって経験済みです。とはいえ、もっとお客さまに寄り添った文化的なプロモーションも必要だと考えています。

 というのも、日本のお客さまは自らの文化や習慣に関連したモノやコトにはとくに目を向ける傾向があります。「シーバスリーガルミズナラ12年」が成功した要因も、まさにそうしたところにあるといえるでしょう。伝説のマスターブレンダー、コリン・スコットが日本のためだけに手がけた特別なブレンドであり、日本原産ミズナラ樽から生まれたブレンデッドスコッチウイスキー。そんなストーリーが日本のお客さまの心に響き、成功につながったのだと思います。

──なるほど。日本の文化に寄り添った提案であり、日本の消費者に響きそうですね。

フアド 「寄り添う」と申しましたが、私どもは日本の文化に対して敬意をもって接しており、「シーバスリーガル ミズナラ12年」はその敬意の表れでもあります。

 実は、当社のウイスキー主要商品「ジェムソン」においても、同様の商品を手がけました。日本人アーティストYU SUDA氏とのコラボによる日本限定商品「ジェムソン ジャパン リミテッド2018」を発売したのです。ブランド史上初となる、一カ国限定の数量限定商品だったのですが、予想を上回る反響で大成功を収めることができました。

 こうした取り組みこそ、当社の家庭用市場における商品戦略の柱となります。単に、高価格帯商品をアピールするのではなく、日本の文化に焦点を当て、日本のお客さまの心に響くプロモーションを行う。そうすることで、私どものブランドを体験し、その価値を感じ取り、ファンになっていただく。それが私どものめざすところです。

 現在、「シーバスリーガル」では、同ブランドの要である「ブレンド」を訴求するために、「SUCCESS IS A BLEND ─ブレンドは成功のもと」というグローバルキャンペーンを展開中です。キャンペーン広告には各国を代表する多彩な才能の持ち主を起用していますが、日本では宮藤官九郎氏を起用させていただきました。脚本家、監督、俳優、ミュージシャンなど多方面で活躍し、さまざまな才能をブレンドさせて人々を魅了する宮藤氏と、「シーバスリーガル」ブランドの魅力をシンクロさせて表現した広告は高評価をいただいており、大変うれしく思っています。

4つの強みを生かし他社との差別化を図る

──御社のような世界的企業の場合、グローバルとローカルのバランスが重要だと思いますが、どのように取り組んでいますか。

フアド グローバル化が急速に進む昨今ですが、ペルノ・リカール グループではあえて分権化という方針を採用し、それぞれの現地法人が独自のやり方で取り組む非中央集権型のビジネスを貫いています。できるだけ消費者に近い存在であり続けることで、お客さまのニーズに迅速に対応するためです。それがブランドを永続させるうえでも大きなカギになると考えています。ですから、当社のビジネスは消費者中心主義といえるでしょう。

──日本市場での競争環境については、どのようにとらえていますか。

フアド 競合他社が多く、競争は厳しいと感じています。しかしながら、昨今のプレミアム志向のトレンドを追い風に、当社ならではの強みを生かし、めざましい発展を遂げていると自負しています。

 当社の強みは大きく4つ挙げられます。まず、お客さまのニーズに対応したラグジュアリーブランドを保有していること、2つめはより魅力的な商品を開発できるイノベーション力、3つめは消費者中心主義というビジネスモデル。そして4つめは高い意識をもった社員です。なかでも営業担当者は知識とスキルを兼ね備えたプロフェッショナル集団といえるでしょう。組織としては業務用と家庭用に分かれていますが、「丹念につくりあげたスピリッツとワインブランドのポートフォリオを提供し、日本の皆様の特別なひと時を創出する」というミッションのもと、それぞれの情報を共有しながら、シナジー効果を発揮させています。

──今後の展望をお聞かせください。

フアド しばらくはプレミアム化の流れが継続すると見ています。当社においても、引き続き、より付加価値の高い商品を開発し、パートナーである小売様と連携しながら、お客さまとのつながりをさらに深めていきたいと考えています。そうすることで、今後も十分に成長できると確信しています。

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