注文・配達サイトの運営や配達管理システムの提供、配達代行などクイックデリバリー全般の物流ソリューションサービスを提供するエニキャリ(東京都/小嵜秀信代表)。2019年に設立されたばかりの同社だが、2022年4月に名古屋、同9月には大阪に進出を果たすなど、急速な成長を見せている。その急成長は“3つの強み”があるからだという。
自転車から大型トラックまで
多彩な配送手段を用意する理由は
エニキャリは、クイックコマースを中心としたデリバリーサービスの注文サイトの構築支援、配達管理システムの開発・提供、ドライバーインフラを提供するほか、デリバリー事業を構成するサービスをSaaS形式で提供する「ラストワンマイルプラットフォーム」企業を標榜する。
国内では、「Uber Eats」「Wolt」などのフードデリバリーサービス事業者が存在しているが、それらとは一線を画すビジネスモデルを築いている。
ちなみにエニキャリでは、ほかに提携飲食店のメニューを届ける同名のフードデリバリーサービス「エニキャリ」も展開しているが、本業はラストワンマイルプラットフォームの方である。
「エニキャリはほかのフードデリバリー会社とは違う3つの特徴がある」。
同社のビジネスのモデルについて、エニキャリで取締役理行統括執行役員を務める大石平氏はそのように話す。大石氏の言う3つの特徴とは、「配達手段の幅広さ」「システム開発と配達の2本柱で事業を運営していること」「配達員の直接雇用」だ。
まず「配達手段の幅広さ」について、「エニキャリでは、自転車のほか、協業する会社からクルマや大型トラックを調達できるなど、さまざまな配達網を持つ。それら複数の配達手段を組み合わせることで、顧客の希望に合わせた柔軟な提案ができる」と大石氏は話す。
たとえば、取引先から「予算が限られるが、自転車で運ぶには荷量が多い」と相談された場合、まずクルマに荷物を載せ、搭載できなかった荷物を自転車で配達し、配達コストをできるだけ削減することを提案する。
「設立から間もないにも関わらず取引先から支持を得ているのは、顧客の要望や予算に合わせて配達手段を柔軟に提案できているためだ」(大石氏)。
システムを自社開発するという特徴
2つ目の特徴として挙げられるのが、システムを自社開発している点だ。
エニキャリでは、デリバリー機能を最大限効率化することを目的に、注文・配達サイトや配達管理システムを自社で開発している。
開発を自社で行うことで、配達管理システムを迅速に刷新することが可能となる。
たとえば、システムに関するトラブルの報告が現場から上がってきたときに、すぐに開発部にフィードバックを送ることで問題を迅速に回収できる。
大石氏は「現場からのフィードバックを受けて、問題を回収する、ということを繰り返すことによって、システムは常に成長を遂げる。これが当社の競争優位性の1つだ」と説明する。
配達員を直接雇用し、品質の高い配達をめざす
3つ目の特徴として挙げられるのは、配達員をほぼすべて直接雇用する点だ。
エニキャリの配達員は基本的には正社員およびアルバイトで、配達員が希望した場合のみ業務委託として雇用している。
直接雇用をすることで、配達員の教育に力を入れることが可能になる。
これは「施設内では決まった動線で配達場所まで来てほしい」「カバンを下ろして歩いてほしい」など、顧客企業の要望に沿った配達を提供するためだ。「配達を遂行することを最終目標とするのではなく、その企業の要望に細やかに応える配達をすることで顧客満足度を高めていきたい」(大石氏)。
こうした3つの特徴により、エニキャリが提供できるサービスは幅広い。
ECサイトの開設のみを希望している顧客に対しては、ECサイトの構築支援のみを提供。デリバリーを開始したいが、配達員を持たない顧客には、自社の配達員を手配する。また、配達員は自社で雇用しているが、配達の品質を高めたいと求める顧客に対しては、配達員の教育を担うなど、要望に柔軟に対応することが可能だ。
「幅広い配達手段、高い品質の配達員、システム開発力を持つことにより、取引先の抱える悩みを解決に導けることがわれわれの強みだ」(大石氏)。
また、この3本柱に加え、自社だけでなくクイックコマースにかかわるすべての配達員に向けたサポートにも力を入れていることも、エニキャリの大きな特徴といえるだろう。
配達員のための専用アプリも開始、その狙いは?
エニキャリでは、22年2月に「配達のスキマ時間に副業をしたり勉強をしたりしたい」「配達の合間に休憩をしたい」といった配達員の声にこたえ、配達員のための専用アプリ「デリバリーCITY」を配信した。アプリに会員登録をすることでコワーキングスペースを自由に利用できるなどのサービスを受けられるシステムだ。
また、22年5月には「配達の合間や配達後など、バッグを持ったまま客として飲食店に入りづらい」という声から、配達員を歓迎する飲食店を加盟店として登録し、割引サービスなどが受けられるアプリ会員向けサービスを開始した。加えて、今後、自転車やバッグ、雨具などのレンタルサービスもリリース予定だ。
これらのサービスは、エニキャリだけでなく、他社を含むすべての配達員が利用可能となっている。配達員にとって快適なデリバリーインフラを築きたいと始めた試みだが、これをきっかけにエニキャリに入社したいと他社の配達員が希望した例もあるという。
福岡、仙台への進出も予定
今後の展開について大石氏は「22年は名古屋、大阪への進出を果たしたが、今後は福岡や仙台などに進出していくことを予定している」と述べた。それにあたっては、人員の採用スピードが課題だ。配達員や、コンサルタントやシステム開発、営業人員の採用を急務とする。
また、ロボットを活用した配達やCO2削減のための取り組みも予定している。「われわれのテーマは“地域に愛されるラストワンマイルインフラ”になること。それに沿った事業展開をしていきたい」と抱負を語った。