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お客様の喜びと働く喜びを両立する「商売の基本」の徹底で小売業は大きく変わる!

お客様の喜びと働く喜びを両立する「商売の基本」の徹底で小売業は大きく変わる!

株式会社本多コンサルティング
代表取締役社長
本多 利範 氏

 

 

小売業の真意は価値を提供すること

 日本の小売業もコロナ禍を経て、ニューノーマルへの対応が進んでいる。様々な小売の形態があるが、例えば百貨店、総合スーパー(GMS)、食品スーパー、コンビニエンスストアの4つの業態を考えると、変化のサイクルが短いコンビニは、見えない部分でインフラを拡充してきた。小売には変わらない部分がある。私の信念と言ってもいいが、小売に不可欠な人材は“素直な心”を持った人である。変化に対応できる素直さが必要ということだ。それに加えて、小商圏化が進む中で非日常と没日常を整理することも重要だ。

 小売は利益を乗せて、つまり価値をつけて販売する。価値を提供しなければ泥棒と一緒だ。業態によりやり方は違うが、価値を提供していくのが小売業である。コンビニは半世紀で10兆円規模に成長した。その要因は商品とサービス、利便性の提供だ。コロナとともにECの台頭でリアルはどうなるとも騒がれたが、今はECプラスリアルが重視されている。

これまで構築したインフラの見直し必要

 ニューノーマルの時代になって、生活者の意識も大きく変化している。社会貢献や環境、ゴミを出さない、共創意識、食の教育への関心が高まっている。Haveニーズつまりモノへの欲求ニーズ、Doニーズは行動ニーズ、根源的ニーズであるBeニーズへと生活者はストーリーで描いている。これまで小売はHaveニーズで利益を得てきたが、今はこのストーリーに寄り添い生活をつかむことが重要だ。ECととともにリアル店舗のレベルを高めていく必要がある。

 いま小売市場では小商圏化が進んでいる。コンビニなら半径500m、人口3000人がターゲットとなる。生活者の価値観は変化している。都心のマンションより静かな郊外に住みたいとか、コロナ禍で起きた変化が続いている。流通・小売ビジネスの新たな方向性は、差別化も必要であるし新しい価値観、マクロ環境が変わったことによるニーズの変化への対応、いままで築いてきたインフラも見直さなければ一人十色の生活者が望む商品を提供できない。

 新しい環境に対応する新しい地図はまだ存在しない。間違いないのは、生活者の心理や行動の変化に対応していくということだ。

 続いて「アフターコロナの新業態におけるチェーンストア躍進のヒント」というタイトルで、本多利範氏と元株式会社セブン&アイ・ホールディングス常勤監査役の関久氏とのディスカッションが行われた。その要約を掲載する。

コロナ禍、デジタル化など変化の中でも“商売の基本”は変わらない

消費者から生活者への意識改革を

関 「お客さまの喜びと働く喜びを両立する商売の基本」を出版された。執筆の背景にはどんな思いがあったのか。

本多 コロナ禍で新常態となる中で小売も変化しているが、商売の基本に変わるべきものと変わってはいけないものがあることを伝えたいと考えていた。DX推進というと往々にしてそちらにばかり目が向く。しかし、基本を守りつつ、価値観の変化や消費行動の変化に対応し大胆に変わっていくことが求められている。それに加えて従来の商品を購入する消費者から、生活者を相手にするという視点に変わることも大事だ。

関 世の中が変化すればビジネスも変わらなければならない。気になる変化は?

本多 生活者の望みは、生活をよりよくしたいということ。小売には便利さを求めている。しばしばモノ・コト・トキと言われるが、そこに便利さの追求や心を加えたいところだ。それぞれの価値観が変われば便利さの中身もさまざま。変化に対応するのに情報は欠かせないが、分析が属人化していてはダメだ。そこには共創を実現するなど発想の転換が必要になっている。

社会に役立つ価値を生み出していく

関 小商圏化への対応も重要になっている。

本多 かつては同じような品揃えでも済んだ。しかし、小商圏化に対応するには生活者の背景やニーズをとらえ、各店舗が生活者にどう向き合っていくか考えなくてはならない。今までのオペレーションでは対応できなくなっている。商売の基本をベースに、各店舗でリピート率を高め、ロイヤルカスタマー育成に力を注ぐべきだ。 コロナ禍で外食支出が減り、食品スーパーでは生鮮3品の売上が大幅に減少した。伸びたのは中食と加工食品だ。これを強化していくことで、外食はしないが家では手間をかけたくないという生活者のニーズに対応することができるだろう。

関 生活者によりよい生活を提供するという点で小売には社会的責任がある。

本多 雇用面や社会での位置づけなど、小売業の価値がやや下がってしまったように感じる。小売は生産者やメーカーから商品を仕入れ、価値を上乗せした価格で販売する。その価値をどう作っていくかだ。そのために従業員のモチベーションを高めることが必要だ。利益追求や規模拡大も大切だが、社会的使命をもっと考えるべき。コロナ禍でエッセンシャルワーカーとして小売の重要性が再認識されたが、社会に役立つために小売業全体で協力しても、小売業の価値を高めていかなければならない。

 

書籍「お客さまの喜びと働く喜びを両立する商売の基本」

本多 利範 著
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行年月:2022年03月
ページ数:276
ISBN:9784478090787

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