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「BEYOND TOFU」の相模屋食料代表が語る、ヒット商品への道を開く2つの視点

 群馬県に本拠を置く豆腐メーカーの相模屋食料は、2010年に業界初の売上高100億円を達成。04年から18年間で売上を11倍にまで伸ばしている。なかでも昨今は、代替食やプラントベースフードが注目されるなか、植物性100%で開発する「BEYOND TOFU」シリーズを大ヒットさせた。代表取締役社長であり商品開発も手がける鳥越淳司氏に、機能性食品開発の傾向や、商品開発における重要な着眼点について聞いた――。※この記事は「FoodClip」からの転載記事です。

相模屋食料代表取締役社長の鳥越 淳司 氏

プラントベース食品は
日本に古くからあった

--相模屋食料の商品は、代替食品の一線を越える商品づくりに日本らしさがあり、可能性を感じます。
鳥越 今、植物性肉はさまざまなところから発売されていますね。インポッシブルバーガーやビヨンドミートなど、日本は欧米が大好きなので、横文字で表現されると輝いて見えることもあります。納得する部分もありますし、海外からやってきたものが素晴らしいと感じる一方で、日本のものはカッコ悪いと感じてしまう人もいて、そこには異論を唱えていきたいとも考えています。決して批判めいたことを語るのではなく、「自分たちができるものってなんだろう?」とチャレンジすることが重要です。

 当社には、「肉肉しいがんも」という商品があります。日本に住む人々は昔から大豆で育っていて、そこに着想を得て作りました。がんもどきは、雁の肉に似せた日本の昔ながらの代替肉。この商品は豆腐屋の意地をかけています。食べ応えのある肉瘤感は職人による手ごねで作られ、この技術は他で真似することはできません。多くの代替肉は味付けや後からかけるソースで肉の満足感を補う中、がんもどきをそのまま焼いておいしく、素材の味で勝負できるように試行錯誤しました。今後のJAS規格の植物性肉のカテゴリーに分類されるれっきとした植物性肉です。

 私はこれを「日本の伝統技術で勝つんだ。これが国産フードテックだ」という気持ちを込めて、“メイドインジャパンの逆襲”と呼んでいます。

21年9月に発売された「肉肉しいがんも」は、がんもどきの製法をベースに作られた植物性のハンバーグだ

--相模屋食料のこうした取り組みは、日本の食品業界を元気づけるパワーがありますね。海外への進出も検討されているのですか?
鳥越:現在、品質を保ったまま輸送できるよう冷凍のテストを繰り返していて、時勢が落ち着いたら進出する構想があります。コロナ禍もあり、まだ詳しくはお伝えできませんが、楽しみにしていてください。海外にも「うまいじゃないか」と言ってくれる方が、必ずいらっしゃると思っています。

機能性だけではさみしい
使命は「食をより楽しく」

22年3月に発売された「BEYOND TOFU PIZZA 2.0」。小麦と乳製品不使用で、自由にトッピングが楽しめる

--国内での今後の事業展開についてもお聞かせください。
鳥越 2022年3月には「BEYOND TOFU PIZZA 2.0」という商品を発売しました。ピザ生地はもっちりした油揚げで、上にトッピングしているBEYOND TOFUは、通常販売しているシュレッドタイプよりもチーズ感の増したものを使用しています。このとろけるBEYOND TOFUに粘性を持たせて、さらに伸びるようなものができないかという研究も進めています。

 現在、「うにのようなビヨンドとうふ」は、生産が間に合わないほどのヒット商品となっています。和の世界のBEYOND TOFUが表現でき、好評いただいているので、こちらの方向性も進めていきたいと考えています。例えば白子のような豆腐などいかがでしょう。クセになるような味わいのシリーズも、BEYOND TOFUのひとつの柱にしていきたいです。

--プリン体を気にせず楽しめるのがいいですね。
鳥越 もう思い立ったら吉日。私たちはコンセプトや戦略をまとめて……、というのが全くないからこそ、幅広く新しい商品を開発できるのです。商品は「おいしいこと」「お客さまが求めていること」の2点をしっかり考えながらやっていけば、道は開けると思っています。
--最後に鳥越社長がこれから食の未来でめざすものは、どんなことでしょう。

鳥越 豆腐業界として、やっぱりお豆腐の魅力をどんどん広げていきたいと思っています。いまは自社での動きになっているので、これが業界を巻き込んだ動きになればいいなと思いますね。

 食品業界としては、大企業が完全食を開発するなどさまざまな動きがあり、機能性に重きが置かれ、食がややさみしい食べ方へ向かいがちだと感じています。
 そうした中で、「思いきって食を楽しくすること」は、中小企業の私たちができることですから、日本の伝統を大事にしながら、栄養を摂ることに終始しない、豊かな食の未来を作っていきたいと思っています。

【媒体紹介】

食のビジネスメディア「FoodClip(フードクリップ)」
クックパッドが2020年に開始したWeb専門の食ビジネスメディア。
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