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アパレル業界に特化し急成長、ベイクルーズが人材紹介事業を立ち上げた理由とは?

アパレル事業の枠を超え、飲食・家具・インテリア、フィットネス事業などライフスタイル全般をサポートする幅広い事業を展開しているベイクルーズ(東京都/杉村茂CEO)。2017年から新たに人材紹介事業へとフィールドを拡大し、新会社としてWILL WORKSを立ち上げた。アパレル業界を直撃したコロナ禍でも増収増益を続けるWILL WORKSの強さの秘密はどこにあるのか。執行役員を務める櫛谷哲史氏に話を聞いた。

業界に精通したコンサルタントの力で「アパレル業界を元気に」

コンサルタントメンバー

 ベイクルーズが手掛ける人材紹介会社として、アパレル業界を中心に転職希望者と企業とのマッチングサービスを展開するWILL WORKS。アパレル市場を主軸におき、販売やバイヤー、企画から、ECサイト運営、デジタルマーケティングなど幅広い職種への転職を支援することで、順調に売上を拡大している。前年比はそれぞれ2期(2018-2019256.7%3期(2019-2020181.5%4期(2020-2021104.5%5期(2021-2022)も、110.6%で着地予定だという。当初はわずか2名でのスタートだったが、現在は約25名のコンサルタントを抱えるまでに成長し、継続的に採用も続けているという。

 創業のきっかけは、「アパレル業界を元気にしたい」という執行役員 櫛谷哲史氏の強い想いだ。ベイクルーズの人事部にいた櫛谷氏は、以前から「これほどまでに『好き』を仕事にして輝いて働いている業界はない」と強く感じていたという。事実、ファッション業界で働く人はファッションが好きで、「好き」を仕事にしたくて入ってきているのだ。

 一方で、退職希望者に話を聞いてみると「ファッションに関わる仕事は好きだが、キャリアアップの道が描けない」「ファッション関連の仕事を続けていきたい想いはあるが、環境が厳しいから転職したい」という声が多数あった。

 WILL WORKSの役割は、このような業界特有の現状を踏まえ、アパレル業界で働く人がもっと元気に、生き生きと働けるよう全力でサポートすることだ。大手人材紹介会社のようなブランド力や集客力はないが、最大の強みはアパレル業界に精通したコンサルタントの知見、各ブランドに対する理解の深さなどエッジの効いた「質」の部分にある。

 実際、スタッフ全員がアパレル経験者である。それだけでなく、「個と組織の可能性をひろげる」というWILL WORKSの理念に共感した人材であることを重視している。スタッフの「質」で他社と大きく差別化を行い、求職者、人材を採用したい企業側双方から大きな信頼を得ている。

事業立ち上げの発端は「稼げるコーポレート部門を創出する」こと

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 WILL WORKS立ち上げの発端は、ベイクルーズ創業者の商売に対する強いこだわりにある。

 多くの企業では、売上を稼ぎ出す部署とそれを支える管理部門とに分かれているのが一般的だが、ベイクルーズの場合「総務・経理・人事などのコーポレート部門も稼ぎましょう」というのが創業者の考え方。櫛谷氏のいた人事部も、当然そう言われ続けてきた。

 さらに、「この先もずっと生き残っていくために新しい事業をどんどん生み出していこう」というコンセプトで、10年以上前から「新規事業提案制度」というものがあった。ベイクルーズで働く社員、アルバイトから広く事業アイデアを募り、会社として事業化のサポートに積極的に取り組んできたのである。

 「アパレル業界を元気にしたい」との想いを抱いていた櫛谷氏はまさに、この「新規事業提案制度」で人材紹介事業の立ち上げを提案、事業化するに至った。「コーポレート部門も稼ぎましょう」という創業者の考えを具現化したことになる。

 事業をスタートさせた5年前は、人材業界、アパレル業界ともに活況だった時期。アパレル全体の売上も伸びていて、店舗スタッフの採用に積極的なブランドも多かった。ただ、コロナを機にそれが一変した。「ものの売れ方そのものが完全に変わった。ファッション関連の企業全般が苦しい状況に陥り、破綻する企業、撤退する企業が出てきて、業界が様変わりした」(櫛谷氏)

 アパレル業界の求人がほぼなくなったため、コロナ禍でも人材募集が活発だったIT業界と新たに取引をスタートした。エンジニア、データサイエンティスト、Webディレクター、Webマーケティングなど、これまで得意分野とはいえなかった職種に対象を拡大し、ITという新たな領域で売上を稼ぎ出すことに成功した。

 「提案の幅を拡げていったのは、アパレルの販売スタッフに対しても同様。休業を余儀なくされた店舗で働くスタッフから数多くの相談を受けたが、残念ながら販売の仕事の紹介先はない。そこで、販売の付帯業務としてSNSで集客する、ブログを書くといったスキルを細かくヒアリングして、販売スタッフに提案する領域を拡げていった」(同)

「働きやすい環境整備」「情報発信」がアパレル全体の課題

 2022年に入ってからは、アパレル業界の人材紹介事業も従来の状態に戻ってきているという。WILL WORKSの直近の紹介先の内訳も、アパレル業界が8割、IT業界が2割程度と、アパレル業界を中心に事業を行うWILL WORKSの強みを発揮できるようになった。

 だが、アパレル業界が求める人材のハードルは総じて上がっている。その一方で、業界全体として働きやすい環境が整備されているとは正直言い難い。「平均勤務年数は5年程度」と櫛谷氏が指摘する通り、とくに販売職の定着率が低めであるのが実態だ。

 となると、働きやすい環境やキャリアアップ制度が整っている会社に人が集まりやすく、優秀なスタッフを採用しやすくなる。逆に、環境整備ができていない会社はさらに採用がしづらくなるという慢性的な課題が生じてくる。

 業界特有のもう一つの課題は、情報が見えにくいところだ。「アパレル業界全体として情報の発信が非常に少ない。人材を募集する際もリクナビ、マイナビなどの大手求人メディアに出す程度で、採用PRに積極的な会社はほとんどない。活躍している先輩の声を発信していくなど、中の情報が見えるようにどんどん発信していく必要があると感じている」(櫛谷氏)

キャリア支援の理想は「想像もしていなかった新発見」を与えること

執行役員の櫛谷哲史氏

 一般的な人材紹介会社と同様に、WILL WORKSでも最初に1時間程度かけて面談を行い、これまでどのような仕事をしてきたか、どのような強みがあるのか、今後どのようなキャリアを考えているのかをじっくりと聞き、一人ひとりにあった仕事を紹介していく。 

 大きな特徴は、良い募集があればすぐに紹介するケースもあれば、「一旦様子見しましょうか」と提案するケースもある点だ。長期的に支援していくことも視野に入れ、何か月かかってもベストな会社に転職が決まるまで、とことん伴走し寄り添い続ける。書類選考の際に重要となるレジュメの書き方をアドバイスする、模擬面接を行うなど、細かいところにまでとにかくサポートが手厚い。

 一人ひとりと時間をかけて丁寧に関わるので、求職者にとって「なんでこんな仕事?」というようなミスマッチが起こらない。「私たちにとっての理想は『全く考えてもいなかったが、面白そうなので詳しく話を聞きたい』と言ってもらえるような、新たな気づき、発見を与えられる紹介をすること」(櫛谷氏)

 理想への道筋として、櫛谷氏は「転職支援だけでなく、今後は転職希望者に新たな発見や気づきを与えられるような企画を検討していく。具体的には、会社を超えて横のつながりをもてるような勉強会、セミナーなどを考えている」と意気込む。

 転職支援の領域を超え、広くキャリア支援を行っていくことで、WILL WORKSは今後も「アパレル業界を元気にしたい」の実現を目指してサポートを続ける。