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ヤオコー、ライフは始めている!ゴミからモノへ 資源循環を作り出す小売の一歩とは

経済活動の今後は、資源循環のサイクルを作り出すことが前提になっていくでしょう。しかし需要と供給の消費活動に任せているだけでは、循環サイクルは生まれにくいようです。そうしたなか、食品小売業はどう取り組むべきか?今回はヤオコーとライフコーポレーションの取り組みを軸に、今後のあり方を考えました。

資源循環の第一関門

 まずは資源循環を前提としたモノと支払いのサイクルを示した下図をご覧ください。

 モノが動くたびに各段階で必ず支払いが発生しますし、リサイクルされた原料でもそれは変わりません。モノの動きには必ず対価が伴い流通しますが、ただ1ヵ所、「消費」から「回収」のプロセスだけは、支払いが発生しづらいようです。消費してしまうと、商品として流通していたモノは「ゴミ」になってしまうからです。

 ゴミが動いても対価は発生しないため、家庭ゴミの多くは税金で賄う行政サービスで回収し、企業ゴミは産業廃棄物として処分ルールを規定しないことには回りません。ゴミを捨てればコストにしかなりません。しかしコストをかけて回収したゴミは、再資源化を経ることで対価の伴うモノに生まれ変わります。モノになりさえすれば、再び対価を伴う流通プロセスに乗るわけです。

 ゴミからモノ(資源)へ。この飛躍を、誰が・どのように成し遂げるか。資源循環の第一関門はここにありそうです。

資源への転換プロセスを内製化したヤオコー

ヤオコーは店頭回収した資源の選別・処理プロセスを内製化

 スーパーマーケット各社は、来店頻度の高い店舗を窓口として、ゴミからモノに飛躍するきっかけを用意します。ゴミ回収の労力を担うのは、まず利用客のボランティアです。対価が発生しづらいゴミの移動を成し遂げるには、結局のところ生活者の自発的な行動が欠かせません。次いでスーパーマーケット側が人手やコストをかけて処理することで、リサイクル工程に回っていきます。

 スーパーマーケットの立場からすれば、コストばかり発生する資源循環のプロセスです。これに経費を回収するループを加えることができたら、このプロセスはより負担の少ないサイクルになります。ではどうするか。その一例が、ヤオコー(埼玉県)が21年10月に稼働させた「ヤオコーエコセンター」(埼玉県熊谷市)です。コストを支払い外部に委託していたプロセスを内製化しました。

 埼玉・東京の90店余りから回収したトレーやペットボトル、発泡スチロール、缶などを同センターで処理し、資源として次のリサイクル工程に販売します。ゴミからモノへの飛躍を自社で行うことにより、コストしかなかった資源循環のプロセスに、経費回収のループを付け加えました。

 もっとも、エコセンターの設置にも運用にもコストは発生します。しかし「店頭資源回収10倍」を目標に掲げるヤオコーは、それだけの業務規模を支え、継続していくための仕組みが必要と判断しました。 

ライフは食品残さを熱源にバイオガス発電

プロセスセンターで発生する食品残さを熱源化するライフ天保山バイオガス発電設備

 プラスチック類の資源回収は、顧客の協力のもとにあえて集めているわけですが、スーパーの業務によって強制的に発生するのが食品残さです。生鮮や総菜の加工過程で発生する廃棄物は、取り扱いがとりわけ困難な生ゴミです。

 各社は食品残さをただ捨てるのではなく、従来から堆肥や化粧品の原料としてリサイクルに回してきました。先述のヤオコーの場合、廃棄食品のリサイクル率は21年度に5割を超えたといいます。廃棄から資源化への流れをさらに広げていくことは業界全体の課題です。

 例えばイオン(千葉県)は、店舗の食品残さを堆肥化し、グループ直営農場でそれを使用、栽培した野菜を近隣店舗で販売する循環システムを2016年の時点で兵庫県三木市に構築しています。

 堆肥にする以外の方法として、食品残さを使ったバイオガス発電も始まっています。ライフコーポレーション(大阪府)は、大阪市内の天保山プロセスセンターと南港プロセスセンターで発生する食品廃棄物を燃料とする天保山バイオガス発電設備を3月から稼働させています。

 プロセスセンターで発生する年間4380トン分の廃棄コストを削減するうえに、一般家庭160世帯の年間使用量に相当する電力を売電もしくはプロセスセンターに供給できるようになりました。プロセスセンターでは大量に発生する米のとぎ汁の濾過処理にもコストをかけていましたが、それも発電設備の大型タンクで発酵処理することにより、熱源に転換できるようになりました。

 食品残さも、ゴミから堆肥に、または熱源にと飛躍させることで再利用のループが回り始めます。この飛躍をいかに実現させるかは、企業の戦略と投資判断です。

 プラスチック回収にもいえることですが、産業廃棄物を有効かつ経済的に循環ループに乗せるには、輸送コストなどを考えると地域ごとに仕組みを整えなければなりません。大手企業の方が投資はしやすいでしょうが、展開エリアが広域化するほどに、各地で仕組みを整える必要も出てきます。けっきょく規模の大小に関わらず、1社でやる限り合理性は高まらないかもしれません。であれば、企業間で協業するサステナビリティ戦略も必要になってくるでしょう。