メニュー

食品卸売上トップから「断トツの食品総合卸企業」へ! 日本アクセスの新中計が始動

日本アクセス(東京都/佐々木淳一社長)は5月23日、2022年3月期の連結業績を発表した。原料費高騰や商品価格の値上げ圧力が高まる中、「変革2021」をテーマとし「稼ぐ」「削る」「防ぐ」を実践してきた同社の決算概要と、発表された新・中期経営計画についてレポートする。

日本アクセスの佐々木淳一社長

売上・利益ともに食品卸No.1に!

 日本アクセスの22年3月期(21年度)の連結決算は、売上高が2兆1203億円、営業利益は対前期比34.1%増の234億円、経常利益は同33.7%増の239億円、当期純利益は同67.8%増の163億円だった。同社は22年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、売上高の実数は前期実績を下回っているものの、旧基準では同4.9%増の増収となっている。

 増収の要因は、巣ごもり需要を背景としたスーパーマーケット、ドラッグストア、ディスカウントストアが好調だ。コンビニエンスストア、外食チェーンでは収益改善やコスト削減に取組み、過去最高益を達成。会見に臨んだ佐々木淳一社長は売上・利益ともに食品卸メーカーナンバーワンとなったことを評価した。

 温度帯・カテゴリー別売上高では、ドライが対19年度比4.3%増の8285億円、チルドが同4.1%増の7376億円、フローズンが同9.2%増の4786億円、業務用商品・生鮮商品は同0.3%減の5524億円であった。巣ごもり・内食需要の拡大、保存性、簡便性、SDGsへの貢献といったニーズの高まりに対応し、市販用冷凍食品は同23.8%増となり、カテゴリー内で最も売上が拡大した。

構造改革と事業変革によって持続的な成長を実現

 先行き不透明な経済情勢、インバウンドの減少、内食・中食へのシフト、冷凍食品市場の伸長など、食品市場を取り巻く環境は激変している。また、燃料費や人件費、物流費の高騰も避けて通れない。

 そうした状況下、日本アクセスは決算発表と同時に、第8次中期経営計画「構造改革2024~新たなサービス・価値の創造」を発表した。今年度からの3カ年で「成長・競争優位の確立」「収益構造改革」「経営基盤改革」の3つの基本方針をもとに、“断トツの食品総合卸企業”をめざすとしている。

 中期経営計画の実行施策を力強く推し進めていくため、日本アクセスでは22年4月に組織改編を行っている。

 具体的には全社横断型でストアブランドやEC商品を開発する「商品開発部」、食のシームレス化に対応し、業務用市場全体で新規顧客および市場を開拓する「業務用管掌下組織」、全社横断DX案件の推進及び人材育成を行う「DX推進室」、全社最適の物流拠点・拠点網構築を目的とした「物流拠点整備推進室」、本社ロジスティクス組織と営業組織の連携を強化し、物流業務改善のスピードアップを図る「CVSロジスティクス統括組織」を新設。これらのうち、今後のポストコロナを想定した場合、「業務用管掌下組織」の利益貢献が最も期待できるとしている。

中計で推進する9つの重点施策とは

 中期経営計画では、具体的に9つの重点施策を掲げている。②フルライン卸戦略の実行、③チルドプラットフォームの構築、④海外事業のビジネスモデル構築、⑤Eコマースビジネスの取組拡大、⑥フローズンマザーセンター構築への取組強化、⑦物流拠点整備計画の実行、⑧DX推進、⑨SDGsへの貢献・取組強化、

 順に見ていくと、1つ目の商品開発強化への取組みでは、マーケットインの発想で取引先、お得意さま、同社の3者がオールアクセスとなり、オリジナル商品や留型商品の開発を強化していく。

 2つ目のフルライン卸戦略の実行では、グループ会社との連携による菓子流通戦略の実施、酒類卸との協業も視野に入れた酒類の全国供給体制構築、機能包材や環境対応製品の販売による差別化戦略などを実施する。

 3つ目のチルドプラットフォームの構築では、チルド専用サイト「チルプラ」の活用や既存の全国チルド幹線便機能を進化させ川上物流を含むチルド物流インフラ整備をするなど商物融合の包括的な付加価値・サービスの提供をめざす。

 4つ目は海外事業のビジネスモデル構築。中国の外食市場に向け、現地パートナーとの協業や日系外食企業の中国進出における店舗展開支援などを行い、外食向けサプライチェーンモデル構築をめざす。

360億円をITインフラに投資!

 5つ目はEコマースビジネスの取組拡大で、フローズンの倉出し機能を活用した冷凍宅配事業構築に向け、首都圏を中心にFS(フィージビリティスタディ:事業可能性の検証)を開始する予定である。また、バラ出荷やアソート品の配送体制と専用システムを構築し、卸センターと在庫共有を行うドロップシップ機能を確立。今後拡大をしていく。

 6つ目はフローズンマザーセンター構築への取組強化。業界全体で一貫したパレチゼーション導入をめざし、パレットの標準化やレンタルパレットの共有を推進していく。今年度は近畿、23年度は中部・東北、24年度は九州にフローズンマザーセンターを順次稼働させる。

 7つ目の物流拠点整備計画の実行については、全体最適の効率的な拠点構築をするため3か年で20カ所の物流拠点を集約、360億円のITインフラ投資を実施する。

 8つ目のDX推進では、デジタルマーケティングなどの「攻め」とAI自動発注やITセキュリティリスクの対応強化など「守り」のDXによって経営基盤改革と業務プロセス改革を両軸で推進する。

 9つ目のSDGsへの貢献・取組強化については、フードロスの削減、食品事故発生の撲滅、フードバンクや食育活動の支援など、本業を通じた社会的課題解決を行っていく。

 これら事業戦略を実行することで、24年3月期の業績予想では売上高2兆2000億円、経常利益249億円、当期純利益167億円を計画している。また、中計最終年度である26年3月期(24年度)には売上高2兆4203億円、経常利益278億円、当期純利益189億円を見込む。