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2021年度日本版顧客満足度指数調査、ドラッグストア業種ではコスモスが11年連続トップ

公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会は、2021年度もドラッグストア(DgS)業種の正規調査対象7社、参考調査対象2社の全9企業・ブランドを対象に日本版顧客満足度指数(以下、JCSI)調査を行った。弊団体は、その結果を2月22日に発表した。「ディスカウントドラッグコスモス」が11年連続の第1位となった。

※サービス産業生産性協議会は、サービス産業の生産性向上とイノベーションの推進を目的とする団体である。JCSIは、国家プロジェクトにおいて、わが国のサービス産業の競争力を強化することを目的に、産官学の連携のもとで開発された。弊団体は、1年間に約30業種、300企業・ブランドを対象にJCSI調査を行い、結果の一部を公表している。

ドラッグストア(DgS)業種の2021年度日本版顧客満足度指数調査で、11年連続の第1位となった

JCSIとは何か?

 JCSIは、満足の原因と結果を想定する因果モデルに従う点で、一般的な満足度調査とは異なる。「顧客がなぜ満足するのか?」に関しては、顧客期待(サービスに対する期待品質)、知覚品質(実際のサービス品質)、知覚価値(コスト・パフォーマンス)の3つの概念で説明する。一方で、「顧客はサービスに満足したあと、どのような行動をとるのか?」に関しては、推奨意向(口コミ)とロイヤルティ(再購買の意図)の2つの概念で説明する。JCSI6指標は、サービスに対する満足の高低だけでなく、顧客がなぜ満足し、その後の行動意図までを想定した心理モデルである。

DgS業種の顧客満足スコアの推移

 JCSI調査では、インターネットモニターを使用し、1企業・ブランドにつき300人以上の利用者を調査している。図表❶に、2011~21年度までのDgS業種の顧客満足スコアで4位以上の上位企業・ブランドを表示した。11~21年度まで、「ディスカウントドラッグコスモス」(以下、コスモス)は、11年連続で1位になった。また、「サンドラッグ」も常に上位に入っており、近年は2位を維持している。なお、11~20年度までの上位に入っていた「CREATE」は、21年度は参考調査扱いになった。

JCSIモデルに基づく顧客満足の原因と結果

 21年度におけるJCSI調査DgS業種(7企業・ブランド)の主要な結果を図表❷に示した。図表❷は、21年度の正規調査対象7社の6指標上位4社の順位表である。

 「コスモス」は、19年度から3年連続6指標で1位となった。顧客満足2位には「サンドラッグ」が入った。「サンドラッグ」は、顧客期待、知覚価値、顧客満足、推奨意向で2位を獲得した。顧客満足3位には「ウエルシア」が入った。「ウエルシア」は18年度に4位を獲得し、その順位を更新することができた。また、同点3位で「ツルハドラッグ」が入った。

 図表❸は、21年度における上位企業の6指標スコアを可視化したものである。このグラフによると、「コスモス」と「サンドラッグ」のグラフは、知覚価値が顧客期待や知覚品質よりも大きくなっている。このグラフの形状は、顧客が「コスモス」や「サンドラッグ」のサービスについて、コスト・パフォーマンスのよさを高く評価したことを示している。実際に、「コスモス」は商品をいつでも低価格で販売しており、コスト・パフォーマンスを重視した戦略である。また「サンドラッグ」は、業界最大級の物流システムを活用し、大量の出庫・検品作業を効率よく行っていることや、「1店舗2ライン制」で、販売ライン(接客・販売業務を担当)と運営ライン(商品・売場を管理)の職種を配置し、役割分担を行い店舗運営の効率化を図るなどのローコストオペレーションを実践しており、その点を顧客から評価された可能性がある。

 一方で、「ウエルシア」と「ツルハドラッグ」のグラフは、知覚品質が顧客期待や知覚価値よりも大きく、グラフの見た目がM字に近い。このグラフの形状は、顧客が「ウエルシア」と「ツルハドラッグ」のサービスについて、実際のサービスの品質を高く評価したことを示している。ウエルシアホールディングス(東京都)の22年2月期第2期決算説明会資料によると、売上高のうち調剤が約20%を占めていた。この割合は他社よりも多いようであり、「ウエルシア」の顧客は、調剤を含めた同社の総合的なサービスの質を評価した可能性がある。また、「ツルハドラッグ」は、コロナ禍における消費行動の変化に対応するために、ECで注文した商品を店舗で受け取れるようにしたり、スマートフォンアプリを活用したワン・トゥ・ワンマーケティングを試行したりしている。このような利便性向上が知覚品質に影響した可能性がある。

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サービス品質設問に基づく分析

 本稿では、上位4社の顧客満足に関係の深い要因は何かについて解説してみたい。JCSI調査では、企業のサービス改善に役立つために、サービスの品質をより詳細に評価するためのサービス品質設問(以下、SQIとする)が46問用意されている。図表❹は、上述の4社のSQIの調査結果のうち、顧客満足スコアとSQIの平均値の相関係数を高いものから10問選択したものである。あるSQIの相関係数が高いということは、満足度の高い(低い)顧客は、あるSQIの評価も高い(低い)と解釈する。なお、相関係数の高さだけで、原因と結果の関係を主張することはできない点に注意が必要である。

 「コスモス」のSQIの結果(図表❹-1)を見ると、「ここで購入した商品を実際に使って、満足している」や「【企業名】は、顧客である私の利益を第一に考えている」の相関係数が高く、順位も高い。これらの結果は、「コスモス」が、コスト・パフォーマンスのよいサービスを顧客に提供し、それが顧客からも高く評価されていると解釈できる。

 「サンドラッグ」のSQIの結果(図表❹-2)を見ると、「商品・サービスの価格表示は適切である」や「商品・サービスの陳列・表示は適切である」の相関係数が高く、順位も高い。「サンドラッグ」は、電子棚札の導入などのオペレーションの効率化に取り組んでおり、その取り組みが顧客にも影響した可能性がある。

 「ウエルシア」のSQIの結果(図表❹-3)を見ると、「ポイントプログラムが魅力的である」や「セールやイベント、キャンペーンが魅力的である」の相関係数が高く、順位も高い。これらの結果は、「ウエルシア」の顧客がTポイントをお得に増やしたり、使えたりするポイントプログラムを高く評価していると解釈できる。

 「ツルハドラッグ」のSQIの結果(図表❹-4)を見ると、「ウェブサイト(携帯サイトを含む)には、有益な情報が掲載されている」の相関係数が高く、順位も高い。これは、「ツルハドラッグ」がスマートフォンアプリの会員拡大と配信コンテンツの充実を図ったことが影響した可能性がある。

 JCSI6指標やSQIの結果には、各企業・ブランドのサービスの特徴や企業戦略が関係していると考えられる。

 あるサービスに対する顧客の期待は、顧客とそのサービスとの相互作用だけでなく、ほかの企業・業種のサービスからの影響も受ける。そのため、DgS業種の各社は、他社に遅れをとらぬようサービスのデジタル化や顧客データを活用したマーケティングに取り組んでいる。今後も、このような共通の施策だけでなく、他社と差別化するための取り組みにも注視していきたい。

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