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U.S.M.H21年度決算速報!藤田元宏社長が強調した「OMO実現」のための道筋とは

マルエツ(東京都)、カスミ(茨城県)、マックスバリュ関東(東京都)の3社を束ねる、食品スーパー(SM)大手のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:U.S.M.H)が2022年2月期の通期業績を発表した。同社が言及した業績の概要と21年度の取り組み、経営戦略上の課題についてレポートする。

各社前年割れも対19年度比では伸長

U.S.M.Hが22年2月期の決算発表を行った

 U.S.M.Hの22年2月期の連結決算は、営業収益が7164億円(対前期比97.6%)、営業利益が121億円(同63.6%)、経常利益が 124億円(同64.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益が53億円(同60.8%)だった。

既存店売上高は同97.6%、客数は同99.5%、客単価は同98.1%といずれも前年実績を下回る結果となった。

 事業会社別(単体)では、マルエツの売上高が3784億円(同97.5%)、営業利益が57億円(同58.2%)、カスミは売上高2741億円(同97.8%)、営業利益が60億円(74.5%)、マックスバリュ関東は売上高が440億円(同95.4%)、営業利益が6億円(60.8%)となっている。既存店売上高はマルエツが97.0%、カスミが98.8%、マックスバリュ関東が95.8%。全体的にコロナ禍での内食需要の高まりを受けて業績を伸ばした前期からの反動を大きく受け、営業収益、利益、既存店実績ともに減少している。

 ただ、コロナ前の19年度と比較すると、マルエツの売上高は102.7%、カスミは105.4%、マックスバリュ関東が101.8%といずれも伸長。これを受けてU.S.M.Hの藤田元宏社長は、「これまで継続してきた取り組みが結実しつつある」と一定の評価を下した。

決済周りの変革進めるマルエツ カスミは渾身の新業態「ブランデ」を投入

カスミは新業態「BLANDE」を2店舗出店

 事業会社別の21年度の取り組みを振り返ると、マルエツは既存店活性化に全投資額の約3割を注ぎ込み、20店舗で改装を実施。フルセルフレジの導入による総菜や冷凍食品や売場拡大、鮮魚寿司「魚悦」や窯焼きピザなどの新規MD(商品政策)の投入を推進した。また、小型SM「マルエツプチ」など作業場を持たない店舗へ商品を供給するサテライト店舗の設置も進めた。

 さらにレジレス決済サービス「Scan&Go」は全店で、フルセルフレジは導入が可能な店舗のほぼ半数に導入を完了。ネットスーパー「オンラインデリバリー」の対応店舗は35店舗、企業内立地の無人店舗「スマートプチ」の店舗数は18店舗まで拡大している。

 カスミで大きなニュースとなったのが、新業態「BLANDE(ブランデ)」の出店だ。今年1月に「ウエルシア薬局」と売場を融合させた1号店「つくば並木店」(茨城県つくば市)をオープンしたのに続き、2月には食の領域に特化した「研究学園店」(同)を相次いで出店。地場商品を中心としたオリジナルブランド「MiiL KASUMI(ミール・カスミ)」の大量投入や、ブランデ独自の会員プログラムの展開などで注目を集めた。

 U.S.M.Hの藤田社長は「(U.S.M.Hとしての)新たなSMのかたちを模索するための取り組みの集大成。オンラインとオフラインが融合した新しいビジネスモデルとまでは至っていないが、今後もMDやマーケティングの領域を含め、進化させていきたい」と言及。このブランデ業態がカスミだけでなく、U.S.M.Hとしての新たな店の在り方を示す重要な位置づけであることを示唆した。

 マックスバリュ関東は20年10月にリニューアルオープンした、「おゆみ野店」(千葉県千葉市)を源流とする買物体験型SMの売場づくりの既存店への水平展開を推進。同時に小型のエクスプレス業態の活性化も進めた。商品面では開発と仕入れ能力の強化を行い、鮮魚寿司やインストアベーカリーの拡大などによって、生鮮・デリカの売上高構成比を40%に高めている。

「阻害因子を徹底的に排除する」 藤田社長がEC事業強化の道筋に言及

ネットスーパー「オンラインデリバリー」がOMO実現のカギに

 目下、食品小売業界で大きな懸念材料となっているのが、原材料や物流費の高騰に伴う商品価格の値上がり。これについて藤田社長は「原材料の価格が上がるのだから値上げはやむなし、とインフレを是認する風潮が(業界内で)強い。しかし、食を担うわれわれとしてはできるだけ適正な価格、買いやすい価格を実現するため、これまで以上に努力していかなければならない」と強調。そのうえで、サプライチェーンの上流に踏み込むことの重要性を訴えた。その一方で、「コロナ禍で嗜好の多様化がより進んでいる。食卓を”デザイン”するという、これまで異なるMDの領域にSMは進んでいかなければならない」とした。

 他方、U.S.M.Hとして重点課題の1つに挙げるのがEC・ネットスーパーの「オンラインデリバリー」事業の拡大。藤田社長はこれを実現するために大きく3つの考え方・取り組みがカギになると指摘した。発言を整理すると次のようなものだ。

①店舗機能にアドオン(付加)される機能としてのECを考えてもしょうがない。事業ポートフォリオのなかでしっかりと1つの核になる事業――まずめざすべきは年商12~13億円の規模感で、さらにこれを早期に5倍、6倍の水準にしなければならない

②”身内”のいろんな事情でEC事業に力を入れ切れていない阻害因子がいくつかあり、これを徹底的に排除する

③上記の取り組みを推進しながらOMO(オンラインとオフラインの融合)を実現するまでの道筋を明確に描いていく

 ②で言う”身内”というのがU.S.M.Hを指すのか、イオングループ全体を意味しているのかが気になるところだ。どちらにしても、阻害因子とまで言い切るほど明確な足かせが顕在化しているということになる。その壁を崩して、真の意味でのOMOを実現できるか。U.S.M.Hにとっては、目先の業績と同程度、あるいはそれ以上に重要なミッションとなっているようだ。