サイト構築から配送までサポートするCafe24 Japanが教える
海外に比べてEC市場の成長が緩やかだった日本においても、コロナ禍で一気にEC市場の規模が拡大。新たに海外をターゲットに販路を拡大しようとする動きも広がりつつある。越境ECの立ち上げを全面的にサポートすることで注目されるCafe24 Japan(東京都)の正代誠社長は、「今こそ越境ECにチャレンジするチャンスだ」と語る。越境ECの可能性やメリット、デメリット、今チャレンジすべき理由とは。
海外をターゲットに売りに行くなら、コロナ禍の今がチャンス
コロナによって、これまでECで買い物をすることに抵抗があった人もECでものを買うようになり、EC市場は急速に拡大している。既存のEC事業者に加えて、大手企業もこぞってEC事業を強化。新たに参入する中小企業やショップも増え、市場の拡大とともに競争はますます激化している。
そもそも、いざ参入しても、認知してもらうためには経費と時間がかかり、なかなか利益を上げにくい構造にあるのがEC市場である。コロナの収束がなかなか見えないことも相まって、「それでは、海外向けにビジネスを行うのはどうか?」と、越境ECを検討し始める事業者が増えている。
ECサイトの構築、広告、決済、物流などのサービスをワンストップで提供するCafe24 Japanの正代社長は、「越境ECのチャンスは、間違いなくコロナ禍の今だ」と強調する。
「コロナ前の2019年に日本を訪れた外国人は、過去最高の3188万人だった。訪日者の中には、日本の商品が好きで購入していた人が大勢いる。コロナ禍で日本に来たくても来ることができずにいる海外の人たちをターゲットと考えるなら、今こそ積極的に売りに行くべき。国内の競争に比べれば越境ECは参入者も少ないので、大きなチャンスがある」(同)
参入障壁が高い越境ECにどう立ち向かうか
越境ECならではのメリットとして、「日本製品の技術力、安全性、信頼性は抜群。海外には、私たちが思っている以上に日本製品のファンが大勢いる」と話す正代氏。
実際、粉ミルク、おむつなど、特に健康面で安心感が求められる場合、日本製への信頼は大きいという。日本の伝統工芸品も広く人気があり、その技術力の高さは世界から一目置かれる存在である。競合がまだ多くないことから、海外という新たな利益を確保できる販路を得られる点もメリットだ。
ただし、デメリットもいくつかあり、翻訳、国際物流、決済などの越境ECならではの多くの課題が、越境ECを考える企業を悩ます参入障壁となっている。「たとえば、購入いただいた後の問い合わせなどの面でも、しっかりとしたサポート体制を備えておくことが求められる。返品商品をどうするかもクリアすべき大きな課題。商品を日本にまで戻すと大きなコスト負担となるので、現地で再販可能なルートを探すなどの対応も検討する必要がある」(同)
いざ海外向けサイトを構築しても、認知されるまでにはかなりの時間を要する。販売前のプロモーションから販売後のフォローに至るまで、あらゆる面で細かな対応が必要なことも越境ECへの参入を難しくしている。
8カ国語対応、使用料無料の越境ECプラットフォーム
世界の越境EC市場規模は95兆円に達し、対前年比で20~30%の成長を遂げる中、日本でもコロナ禍の2021年あたりから越境ECが注目されるようになった。「越境ECを始めたいのですが」「今始めるならどこの国がよいでしょうか?」といった問い合わせが、Cafe24 Japanに急増しているという。
1999年に韓国で生まれたグローバル企業Cafe24は、2018年10月から日本で事業をスタート。現在の取引数は、全世界で200万ショップに達している。
Cafe24のプラットフォームの最大の特徴は、初期費用、月額費用、販売手数料無料で国内、海外へのECビジネスの展開が可能な点(提供テンプレートはデザインによって無料と有料を用意する)。サイト自体は30分ほどで完成するという。すでに韓国で20年近い実績を誇り、取引先からの要望を反映し機能を拡充してきたことから、アパレル、ジュエリーショップを中心に、薬品、民芸品、伝統工芸品など、幅広い業種で利用されている。
国別ではなく言語別になっているのも特徴で、英語、中国語をはじめ8言語に対応。「実際、あるジュエリーショップさんでは、ターゲットを特定の国に絞らずまずは英語でスタートしてみたところ、思いがけず台湾で売れ始めたというような例もある」(正代氏)
越境ECの参入障壁を減らすためにサポート体制も万全
越境ECに関わるどんな局面においても、一貫して手厚いサポートを提供しているのがCafe24 Japanの強み。「越境ECで多くの事業者を悩ます物流や代行決済の面でも、多様なパートナーと協力体制を構築している。コスト削減とともに、サイトを開設すると同時に機能が使用できるよう利便性を高める努力を続けている」(正代氏)
2021年12月には、越境ECに関わるあらゆる問い合わせに対応する大規模な「ビジネスサポートセンター」を福岡に開設。受注後のCS対応や返品問題などに対しても、きめ細かくアドバイスできる体制を整えた。また今年3月2日からは、オンライン決済サービス「Amazon Pay」とのシステム連携も開始している。
越境ECに関わるすべてをワンストップで、ほぼ無料で提供するCafe24 Japanの利益の源泉はどこにあるのか。「越境ECへの参入障壁となっている部分をすべて当社でサポートさせていただき、お客さまにはビジネスに集中してもらいたい、というのが私たちの考え。結果、お客さまが成長すれば、当社の業績も伸びる仕組みになっている」(同)
配送や決済を行うパートナー企業と連携し、パートナー企業のサービスをEC事業者が導入する。導入社数や売上が上がれば、ともにパートナー企業の売上も上がり、Cafe24 Japanはその収益の一部を受け取るという仕組みだ。
「他社ECサービスの場合、商品が売れれば売れるほど販売手数料や利用手数料が上がっていくことになり、お客さまの負担が大きくなると感じている。より多くのパートナーとECのエコシステムを作り、業界活性化を目指すビジネスモデルにしている」(同)
越境ECが軌道に乗って成長すればするだけ、後続部分で収入を得るという理想的なビジネスモデルが形成されているのだ。
コロナ後を視野に今動くべき。まずは「テストマーケティングから」
越境ECでの販売先となる国は、中国、韓国、台湾、香港をはじめアジア諸国が中心で、いずれも、コロナ前には日本を訪れ日本の商品を大量に消費していた国々。正代氏は、越境ECの可能性を次のように語る。
「日本を訪れ、日本製品が好きで買ってくれていた外国人に、今こそどんどんアプローチをして、アフターコロナのインバウンドに備えるべき。越境ECのサイトを通じて商品を購入してくれたお客さまには、日本に来たときに使えるクーポンを発行しておき、訪日の際には実店舗に来てもらえるよう備える。実店舗でまたクーポンを渡し、帰国後にはECで購入してもらう、という風に、継続した売上につながる仕組みを作ることができる」(正代氏)
正代氏が勧めるのは、最小限のパワーで行うテストマーケティングだ。「まずは少しずつスタートしてみませんか?と提案したい。越境ECのサイトを作るのは簡単だが、すぐには認知されない。2、3年の期間を設定し、何がヒットするかのテストマーケティングから始めてみる。その後、本業としてやっていくと決まったら、プロモーションをどうするかを考えていく。数年は確実にかかることを認識して展開していくべき」(同)
PC普及率が低くとも、消費者のほとんどがスマホで購入するため、人口が増加している東南アジアも有力な販売先となり得る。今後は、現地での広報・宣伝活動をはじめ、販売力のあるECモールとの連携などにも注力していく意向だ。