ナポレオンに学んだ?画一売店チェーンの組織
個店経営の組織の本質を考えるために、歴史を遡ってみたい。
産業革命が起きたのは、1770年代。手工業は機械で動く工場に変わり、組織は加工技術を持った「職人」ではなく、1人の工場長とその命令に忠実な単純労働力の「人員」に還元された。フォード工場のベルトコンベヤにおける工員の動作改善による能率向上は、工員を機械の部品と同一視することで実現した。能率学、後の経営学の端緒である。
これを戦争に利用したのが、1800年代初頭に出現したナポレオンだ。彼が大軍を動かせたのは、国民皆兵によって“アマチュア”の兵士を多数徴兵できたからだ。そこでは、プロである将軍将校が命令し、素人すなわちアマの兵隊を動かす、という工場と同じ組織の原則が採用された。商業の工業化をめざした米国チェーンは、この組織論を採用し、日本の「画一売店チェーン理論」はそれを踏襲した。
その組織は「本部」と「売店」からなる。本部には「トップ」と「スタッフ」、そして「ライン」がいる。トップの任務は、戦略を決め、決断し、命令するといったように、人体にたとえれば「頭脳」にあたる役割を果たす。スタッフは、それを助ける財務、教育人事、不動産管理、その他の専門職である。
ラインは、マーチャンダイザーだ。その任務は、わが社の「業態」実現の品揃えを、部門別に責任を持って実行することであり、その数値責任は自らが担当する担当商品群の粗利高の合計である。たとえばナショナルブランド(NB)中心の場合は、その仕入れ原価をコストダウンすることこそ、責任を果たす要諦になる。個々の店舗の「品揃え」が、すべて品種部門ごとのマーチャンダイザーの決定に従うのは当然だ。
売店チェーンにいるのはラインの人員であり、その長はストア・マネジャーである。その任務は、マーチャンダイザーの品揃え指定を忠実に実行することであり、その数値責任は店舗の運営コストの大部分を占める人件費のコストダウンである。
画一売店チェーンの二大スペシャリストの数値責任は、いずれも「売上高」ではなく、「コストダウン高」であった。それは画一売店チェーンにおいて、組織は本質的に“必要悪”だったということである。
日本で創始された「個店経営」という組織
一方、「個店経営」の組織は、セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)が
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