コロナ禍での健康志向の高まりなどから拡大しつつある代替肉市場。こうした代替肉の開発企業としてよく取り上げられるのは海外のスタートアップ企業だ。しかし、日本には約60年前から大豆を使用した代替肉の開発に取り組んでいる企業がある。本稿では、大豆ミートの“老舗”企業である不二製油(大阪府/大森達司社長)の戦略をレポートする。
拡大が続く代替肉市場
近年、食品スーパーなどで大豆ミートを取り扱う店舗が増えている。レストランなどでも代替肉を使用したメニューを提供する店舗を以前よりも見かけるようになった。矢野経済研究所によると、2020年の世界の代替肉(植物由来肉・培養肉)市場規模は2572億円と推計され、25年には6732億円、30年には1兆8723億円にまで拡大すると予想されている。
こうした代替肉の開発は、インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)やビヨンド・ミート(Beyond Meat)など欧米のスタートアップ企業を中心に盛り上がりを見せている。日本でも大手加工肉メーカーを中心に大豆ミートの販売が始まっている。しかし、不二製油は半世紀以上前から大豆を使用した代替肉の開発に取り組んできた。
不二製油が設立されたのは1950年。事業の中心となる「植物性油脂」「業務用チョコレート」をはじめ、「乳化・発酵素材」、そして大豆ミートを含む「大豆加工素材」の4つの事業を展開している。
「大豆加工素材」事業に参入したのは60年代。69年1月には肉状組織たん白製品「フジニック」を発売している。創業者の西村政太郎氏が「将来的に動物性たんぱくは枯渇するだろう」という危機感を抱き、大豆から植物性たんぱくを抽出してつくった素材の提供を開始した。事業を開始した当初は、大豆たんぱくをそのまま食べるという用途もなく、市場も未成熟だったため、単なる動物性たんぱくの代替商品としてしか展開できず、会社の柱にはならなかった。長らく赤字が続いていたという。
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