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「富澤商店」が食品スーパーに 製菓・製パン材料の供給を広げる理由

新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大によって自宅で過ごす時間が増えたことで、人々の家庭内調理シーンは増加した。自宅で菓子やパンを手作りする人も増えているはずだ。そうしたなか、製菓・製パンの材料・器具を販売する富澤商店(東京都/富澤淳社長)は今後、食品スーパーなどへの独自商品の供給を広げていきたい方針を打ち出している。同社のねらいをレポートする。

全国に88店を展開
EC事業も拡大中

 富澤商店は1919年に東京都町田市で乾物店として創業。その後、86年から百貨店や商業施設内に 製菓・製パン材料・器具の 専門店「富澤商店」の出店を開始し、現在では北海道から四国・九州まで計88店を展開している。

 2003年にはオンラインショップを開設し、15年頃から本格的にEC事業を推進。17年には同じく製菓材料・器具のEC、専門店を運営していた旧クオカプランニング(徳島県)を買収し事業規模を拡大したほか、18年9月には業務用卸専用ECサイト「TOMIZ for business」も立ち上げている。

イズミにも商品供給
1300品目を扱う店も

「ライフセブンパーク天美店」(大阪府松原市)の「富澤商店」コーナー

 そんな富澤商店が今後、供給を広げていきたい方針を打ち出しているのが、食品スーパーや総合スーパーなどへの独自商品の供給だ。すでにライフコーポレーション(大阪府)の一部店舗に供給しているほか、中国・四国・九州でショッピングセンターや食品スーパーを運営するイズミ(広島県/山西泰明社長)には「消化仕入れ方式」(売上が計上された際に仕入金が計上される取引形態)で商品を供給する予定だ。

 また、21年12月15日にリニューアルオープンした「江別 蔦屋書店」(北海道江別市)でも、定番のナッツやゼリーの素、同店限定のオリジナル食パンミックスなど約810品目を集積した「富澤商店」コーナーを展開している。

「江別 蔦屋書店」(北海道江別市)

EC売上高の約8割!
リピート率が裏付ける質の高さ

 富澤商店の製菓・製パン材料の特徴は、創業以来、信頼関係を構築してきた全国各地の生産者から仕入れる農産物を、自社工場または指定工場で従業員の手によって選別・袋詰めをすることで実現する、確かな品質だ。

 その品質の高さを裏付けるのが、同社ECのリピート率の高さだ。EC売上高の約8割が既存会員によるもので、購入者が「また購入したい」と思える信頼、満足を得られていることが窺える。

契約農家から仕入れる農産物を、自社工場または指定工場で従業員の手によって選別・袋詰めをする

リアル店舗を
全国約20店に統合へ

 富澤商店が食品小売店チェーンへ商品の供給を進める背景には、同社がリアル店舗の改革を進めていることがある。富澤淳社長は「EC化が進むなか、店舗はこれまで以上に、リアルならではの付加価値を提供できる存在にならなければいけない」と述べ、売場面積を現在の平均約25坪から2倍ほどに拡大した新型店舗を主要都市に出店する方針を明らかにしている。まず21年度に3店を、7年後をめどに約20店体制をめざし、現在の既存店については新型店舗に統合していく考えだ。

富澤商店は2020年から店舗併設のレンタルキッチンスペースを出店。オリジナルの調理器具を使ったり、店舗で購入した原料を持ち込んでの調理を可能にしている。ここで得た運営ノウハウを発展させたかたちで新型店舗の開発を進める。写真は商業施設「イオンレイクタウンkaze」(埼玉県越谷市)内に入る店舗

 新型店舗では、「体験」の提供に重きをおく。売場面積の広さを生かして品揃えの幅を広げるとともに、商品を実際に見て、触って、試食できるようにしたり、店内で教室を開催したりして、製菓・製パンの楽しさや富澤商店の魅力を伝えられるようにするという。

 さらに新型店舗では独自のスマホアプリも導入予定だ。「アプリの導入によってお客さまの行動データを“見える化”して、個々のニーズに沿った提案・コミュニケーションを可能にし、ネットと店舗双方で体験価値を高めるOMO(Online Merges with Offline)戦略をとっていきたい」と富澤社長は語っている。

食品小売店と手を組み
顧客接点を広げる

 こうした戦略のもと富澤商店は今後、リアル店舗を約20店体制に集約させていくわけだが、それでは店舗で商品を購入したい顧客の中には、店が遠くなり、不便になる人もいるだろう。
そこで同社はとくに新型店舗が近くにないようなエリアで、食品小売チェーンへの商品共有を進めていきたい考えだ。
 「富澤商店の商品の付加価値を理解していただけるような企業さまと手を組んで供給先を増やし、お客さまとの接点を隈なく広げていきたい」(富澤社長)。

 店舗間競争が激化するなか今後、食品小売チェーン各社は価値ある商品を提供し差別化を図っていくことがますます重要になる。富澤商店の製菓・製パン材料はそんなに食品小売側のニーズにも合致しており、今後、導入するチェーンが着実に広がっていきそうだ。