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神戸物産21年10月期大幅増益!来期、原料高騰でも増収増益するための戦略とは

神戸物産(兵庫県/沼田博和社長)は12月14日、2021年10月期決算説明会を行った。主力業態の「業務スーパー」が順調だった内食需要を取り込み、事業をけん引。同期は増収・増益で、通期では売上・営業利益ともに過去最高を記録した。

「次世代型業務スーパー」の業務スーパー天下茶屋駅前店

内食需要を取り込み増収・増益 

  神戸物産の202110月期決算は、売上高36206400万円(対前期比6.2%増)、営業利益2731100万円(同14.5%増)、当期純利益1959200万円(同30.2%増)だった。増収増益の要因を沼田社長は「『業務スーパー』において、コロナ禍で内食需要が旺盛だったことと、テレビを中心としたメディア、SNS上で同社の商品が話題を呼ぶなど、知名度が向上したこと」にあると説明する。また、冷凍の野菜やフルーツ、デザートが好調で、特に冷凍野菜は家庭での消費量も増加しており今後も期待できる、とした。

  主力業態の業務スーパーは、20212月に宮崎県に進出し、これで全国47都道府県への出店を果たした。計77店舗の新規出店を行い、全国に950店舗展開する。第2四半期決算の上方修正後の出店目標だった939店舗を大きく上回った。特に沖縄県と鹿児島県を除く九州直轄エリアへの出店が好調で21年10月期は22店舗、新規出店した。

  既存店の出荷実績も対前期比2.4%増と、終わってみればコロナ特需に沸いた20年10月期を上回る数値となった。

原料高騰「今まで経験したことがないレベル」

  業務スーパーは増収・増益ではあったが、サプライチェーンの分断、天候不順などによる原材料価格の高騰には悩まされた。沼田社長は「20年10月期に引き続き、21年10月期も(原材料価格の高騰が)仕入れ価格の押し上げ要因になった。第34四半期で思ったように利益を上げられなかったのも事実。正直、我々も経験したことのないレベルで価格が上がっていて、中には上昇が止まらない商品もある。商品の値上げは適宜実行せざるを得ない」と話した。

  特に値上がりが目立つのが油や牛肉、コーヒー豆だとし、仕入れ先の変更も選択肢の一つだと話した。

  その上で進めるのが、物流にかかるコスト削減だ。これまでは、西日本にある店舗への商品の配送は、神戸にある物流センターが担っていたが、21年10月期中に神戸と大阪に新設した。さらに、九州エリアにおいても、博多に物流センターを構え、物流費にかかる年間コストを削減する。

  また、商品供給能力を増強し、チャンスロスを減らしていくことにも言及した。具体的には「自社の工場の生産能力の増強を上げるための増産投資を行っている最中だ」(同)とした。現在は、売れ筋商品に製造を絞ることで商品を供給している工場もあり、増産投資を行うことで、過去に売っていた商品も製造できるようになる構えだ。

  期中に宮城県、岡山県で自社の食品製造工場を稼働させ、グループの工場数は25工場になった。21年10月期の売上に占めるPB(プライベートブランド)比率は33.12%(対前期比1.46%増)であり、戦略的にPBを増やす取り組みを進める。

 

将来的には1500店舗出店へ 次世代型業務スーパーを8月にオープン

  21年10月期目標出店数の純増60店舗を上回る71店舗純増を記録した業務スーパーだが、沼田社長は「毎年60店舗純増というペースは難しいが、30から40店舗純増を目指す」と話す。続けて「数年前までは、(現在の950店舗から)約1200店舗まで出店可能だと考えていたが、今期の好調ぶりをみて1500店舗は将来的に可能だ」と意気込んだ。

 「現在の店舗戦略における課題は、店舗あたりの『稼ぐ力』を向上させること。そのためには、店舗あたりの販売管理費を抑えなければならない。人件費や光熱費は対策を打たなければ必ず上昇するからだ。店舗のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めるためにも、新たな取り組みを始めた」(沼田社長)

  業務スーパーでは、20218月に大阪西成区にて、AIを活用し、販管費を抑える次世代型業務スーパー「天下茶屋駅前店」をオープンさせた。ソフトバンク社と提携する同店舗ではタブレット付きカートや自動で欠品検知をするシステムを導入しており、機械が人間の仕事を担当することで、コストを削減できる。

  今後、天下茶屋店での成功事例を、全国の店舗に横展開していく考えだ。

総菜事業「馳走菜」が好調 外食事業は苦戦

  好調だった業務スーパーと対照的に、苦戦したのが外食事業の「神戸クック・ワールドビュッフェ」だ。ビュッフェ形式ということもあり、コロナ禍において消費者から敬遠され、2店舗の純減。

  健闘したのは、総菜事業の「馳走菜」だ。21年10月期は24店舗の純増で、同期末時点で計49店舗を展開する。コロナ禍で加速した中食ニーズを取り込んだ。売場・厨房あわせて約20坪ほどの広さで、業務スーパー店内に入るスタイルである。現在は利益が出るフォーマットとなっており、加盟店からも誘致の依頼が絶えないという「馳走菜」は将来的に500店舗まで拡大をめざす。

 原料高騰下で来期も増収増益を見込む

  2210月期の業績予想は対前期比で売上高は5%増、営業利益5.5%増、当期純利益は1.1%増とした。出店目標は60店舗の純増を掲げ、沼田社長は「関東直轄エリアでの順調な出店を見込んでいる。2210月期の業績は、21年10月期の実績を上回りたい」と話した。

 まとめると22年10月期は、原価高騰が経営環境に大きな影響を与えることが予想されるも、製造力の拡充に伴うチャンスロスの削減で売上の最大化を図り、PB比率向上と商品の適宜値上げや見直しを進めて粗利益を確保しつつ、2110月期に進めた物流コスト削減などで販管費を抑制、増収増益を達成したい考えだ。