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医療と薬局の間に商機見出す調剤薬局最大手アインHDが描く医薬分業の理想のカタチ

アインホールディングスは12月、2022年4月期第2四半期決算を発表した。売上高は1529億7200万円(対前年同期比5.2%増)、営業利益は57億7600万円(同47.1%増)、経常利益は61億2700万円(同35.6%増)、当期純利益は33億3800万円(同26.9%増)だった。主力のファーマシー事業が伸長し、前期比、計画比ともに上回る数字となった。

かかりつけ薬剤師・薬局の推進で突き抜ける

 コロナ禍でも堅調に前進を続ける調剤薬局最大手の同社は目下、そのポジションを確固たるものにすべく着々と体質強化を図っている。同社がめざすのは、2025年までに21年10月末時点で全国に1091店展開するすべての薬局店舗を健康相談に幅広く応じる「地域連携薬局」もしくは、特定の病気の治療を医療機関と連携して取り組む「専門医療機関連携薬局」とすることだ。同社グループが取り組むべき6つの重要課題(マテリアリティ)の1番目に挙げている。

 「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」。どちらも認定にはクリアすべき条件があるが、同社には調剤薬局最大手として積み上げてきた店舗網とノウハウがある。この優位性を最大限に活かすことで、地域医療への貢献を行うとともに、近年調剤併設を加速させているドラッグストアと差をつける。

 そうした中で国が後押しするのが薬剤師・薬局の「かかりつけ化」だ。病院におけるかかりつけ医と併せ、薬を処方する薬剤師・薬局が健康相談や薬の処方後の丁寧なアドバイス等を行うことで医療の手前で疾病ケアを実施。それにより、医療機関の負担が軽減され、医療費削減も期待できるという算段だ。

 調剤薬局にとっても、この潮流に乗ることでこれまで以上に利用者へ踏み込んだ貢献ができ、密接な関係性の構築によって経営の安定にもつなげられる。積極的なM&A(合併・買収)などで全国に店舗展開する同社にとって、地域の医療サポートのためのネットワークはすでに十分に確保されており、あとは慢性的に不足感のある薬剤師を確保・育成することが、混沌が続く薬局業界から一歩突き抜けるための最終関門となる。

人材確保・店舗拡大も抜かりなく「新たな薬局」へ着々

 ここ2年の同社の新卒薬剤師採用ペースは年間600人前後(20年560人、21年613人)で、22年4月も600人を計画している。19年までの採用人数は300名に満たず、従来の倍近いペースで採用を行っていることになる。

 カギとなる人材育成も、高度薬学管理機能に関わる勉強会を開催するほか、がん患者への緩和ケア、外来がん化学療法、HIV治療薬とAIDSをテーマにシリーズとして各店舗にWEB接続した勉強会を実施するなど、「認定薬局」として地域の医療のサポートを担う人材育成の体制を整える。なお同社は25年までに全薬局店舗にかかりつけ薬剤師を配置したい考えだ。

 さらに調剤店舗のマネジメント専属社員も100人配置するなど、より専門性ときめ細かい接客が求められることを見越し、厚みのある人員構成で単調な接客からの脱皮を図る。

 店舗拡大の手も緩めない。2022年4月期はM&Aも交えながら調剤薬局を80店舗増やす計画だ。併せてドラッグストアも15店舗増やし、薬局に求められるニーズを手堅くすくいあげる。

 スケールメリットを得るための拡大戦略はしたたかに継続しつつ、質の強化を図ることで独自のポジションを確保。消耗戦と化したここ数年の“陣取り合戦”にピリオドを打つとともに、医療と薬局の中間の位置にすっぽり収まることで、同社は薬局の新たな役割を担うリーディングカンパニーへと進化を遂げる。

編集部注:調剤薬局および薬剤師は2007年の改正医療法により、公式に「医療提供施設」そして「医療提供者」と位置付けられたものの、一般的な認知は進んでおらず、あるいは狭義の意味でもその枠に入っていない点が業界の大きな課題となっている。