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[プロユース]カジュアル志向に対応すると同時にワーク専門店としての品揃えで差別化

REPORT

Pro use

プロユース


カジュアル志向に対応すると同時に
ワーク専門店としての品揃えで差別化

ドイト株式会社では、2015年4月にドイトプロ小金井公園店(東京都西東京市)、17年2月にドイトプロ岩槻店(さいたま市岩槻区)に続くプロユーザーに特化した業態店として、ドイトプロ川越店(埼玉県川越市)を18年4月にオープンした。出店地域ごとに異なる顧客ニーズに対し、素早く的確に対応することを方針とし、店舗単位での商品施策(MD)を展開し大きな成果につなげている。(本誌:上明戸聡)

 

 

 Case Study ●ドイトプロ川越店

 

店舗独自の取り組みで地域に密着したMDを実現

 


2018年4月オープンのドイトプロ川越店(埼玉県川越市)

 ドイトプロは、建築業、建設従事者などのプロユーザーに特化した業態で、ドイトプロ川越店で3店舗目。埼玉県川越市内の国道254号線沿いで、建築現場への行き帰りにプロユーザー層が立ち寄りやすい立地にある。売場面積は2538㎡で、約10万アイテムを取り扱う。来店客のほとんどをプロユーザーが占める専門業態店だ。

 ドイトプロの運営の特徴は、本部商品部とは別に、基本的な品揃えや仕入れの戦略を各店が独自に判断し、実行する権限を持つこと。最も顧客接点に近い各部門の担当者が、顧客の声を聞き取り、ニーズに素早く対応することをめざしている。

 同店店長の奈良尚彦氏は、「小金井公園店でも店長を務めましたが、プロ業態においても地域ごとに需要が大きく異なることを実感しています。品揃えの充実度や要望への対応の早さなどは口コミでお客さまの間に伝わりますので、店舗で判断し、素早く対応することが重要になります」という。


ドイトプロ川越店 店長 奈良尚彦氏

 オープンから間もないため、来店客の声には積極的に耳を傾けて地域ニーズの把握に努め、要望を受けた商品の導入状況を掲示版に貼り出すなど、レスポンスの早さをアピールしている。

 このほかプロユーザーが利用しやすいようにさまざまなサービスを導入している。プロ専用のポイントカード制度である「majicaドイトプロ会員」の場合、プロ会員に対して、プロ会員価格で商品を提供するサービスなどの特典付与も行う。

 またドイトは2007年にドン・キホーテグループの一員となっており、グループのノウハウを生かした陳列手法も一部に取り入れている。「驚安の壁」など、ドン・キホーテの店舗で使用されるキーワード入りボードを大きく掲げるなど、値ごろ感の訴求にも力を入れている。

 このほかプロ業態としての強みを差別化につなげるため、「価格見積もりや電話注文、取り寄せにフレキシブルに対応するなど、プロのお客さまにとっての便利さを徹底的に追求していきます」(奈良店長)と強調している。

 

 

● 安全保護具 ●

 

デザインへのこだわりと安全志向の高まりに対応

安全靴はカジュアル性とブランド重視がトレンド

 

 安全靴や作業用手袋、安全帯などの安全保護具の重要性は増しており、商品は進化を続けている。

 安全靴についてはワークウエア全般と同様、カジュアル志向が強まっている。奈良店長は、「街歩きなどでもまったく違和感のないデザインの安全靴が増えており、人気があります。個性を重視する層はデザインへのこだわりが強く、スボーツブランドなども売れ筋になっていますが、JISなどの規格に沿った商品であることが前提になっています」と言う。

 同店では外国人労働者や女性の職人が増えていることに対応し、22~32㎝程度まで、サイズのバリエーションを幅広く取り揃えている。またドイトプロ川越店の場合、周辺に農家が多いため長靴の需要が高いという特徴がある。そのため品揃えの充実を図っており、売上の基盤づくりに寄与しているという。

 また作業用手袋について奈良店長は、「お客さまの要望に応じて品揃えを強化している最中です。作業内容や好みに応じてさまざまな商品が売れている状況ですので、アイテム数を増やしつつ、在庫を絞るなど、管理を徹底していく必要があります」と言う。

 手袋の場合、気に入ったブランドを長く使用する傾向が強いため、店頭に着実に品物が揃っている状況をつくることが重要、というのが奈良店長の考え。同時に着用サンプルなどを幅広く揃え、リアル店舗の魅力を打ち出すことで通販チャネルとの差別化を図っている。


スポーツブランドなど、カジュアル志向に対応した商品が売れ筋の中心となっている(ドイトプロ川越店)

デザインや質感を見せる陳列を行うことで、商品選びをサポートする安全靴

作業用手袋は多様なニーズに対応するため、品揃えの幅広さを重視

安全意識への高まりで、市場が活性化するハーネス安全帯。色などにこだわる購買行動も見られる

 

ハーネス安全帯は法改正に対応したセット商品が好調


マネキンを使った高さのある演出でフルハーネスの着用シーンを見せる演出

 法改正により2019年から墜落・転落防止器具についての規制が強化され、作業条件に応じてフルハーネス型の安全帯の着用が義務化されることになっている。現行規格品は段階的に着用や販売が禁止されていくことになる。

 「もともと安全保護への意識は高まる傾向にありましたが、安全帯についても実際の法施行に先駆けて新しいルールに沿った保護具を選ぶ傾向が強まっています。フルハーネスのセット商品なども売れ筋になっています」(奈良店長)

 同店オープン後の4月頃は、新入社員が入社するシーズンでもあり、先輩や上司と来店して商品を検討し、フルセットで購入していくケースも多かったという。売場では、マネキンを使った高さのある陳列を行うなど、着用シーンをイメージさせる見せる演出にも力を入れている。

日本安全靴工業会
日本プロテクティブスニーカー協会

「災害時に着用する活動靴(防災靴)」について二次災害を防ぐためのガイドラインを制定

 

靴底の耐踏抜き性能など必要な性能項目を表示

 

 日本安全靴工業会と日本プロテクティブスニーカー協会は共同で今年3月21日、「災害時に着用する活動靴(防災靴)についてのガイドライン」を発行、および「防災用踏抜き防止中敷規格:2018」を制定した。

 ここ数年、大規模な自然災害が頻発している。今回制定されたガイドラインは、災害が発生した後実施される被災地での救助、がれきなどの撤去、現場調査、被害家屋の清掃・後片付け、災害発生後の帰宅、被災地などを通って行う活動に使用する靴(防災靴)について、必要性能、着用方法および取り扱い上の注意事項をガイドラインとして明確にし、誤った使用を防止し、足部を二次災害から守ることを目的とする。

 このガイドラインでは、防災靴に必要とされる性能や性能規格、構造などを定義している。たとえば必要な性能項目として、

①重量物の落下・圧迫に対するつま先部の防護性能
②靴底の耐踏抜き性能
③靴底の耐滑性能

を掲げている。

 以上3つを必須性能としているが、そのほか耐水性能、甲被の耐切創性能、防寒性能(低温熱伝導性能)の3つをオプション性能として挙げている。

 

同時に防災用踏抜き防止中敷の団体規格を制定

 

 一方、防災用踏抜き防止中敷についても、災害用途として供出の要請があり協会が中心となって随時対応してきたが、市場に存在する多くの踏抜き防止中敷は、性能規格がないため、災害発生後の使用用途に対して十分な性能を有していない製品も散見される状態だった。また使用サイズが限定されることや形状的に合わない場合があること、厚すぎるものはつま先部の耐衝撃性、耐圧迫性に影響を与える場合があるなど、必ずしも防災用途に向かない場合もあった。

 こうした状況を受けて今回、日本安全靴工業会と日本プロテクティブスニーカー協会は、防災用途に適合する踏抜き防止中敷の仕様を整理するため、共同で技術委員会を設け、検討を重ねてきた。

 制定された防災用踏抜き防止中敷規格では、定義、種類、性能、形状および構造、サイズ、踏抜き防止板の材質・寸法・性能などが定義されている。

 現在、一部HC店頭でも、災害時に着用するのに適した靴を店頭展開している例も見られるが、今回のガイドライン制定によって、よりわかりやすい基準が明確になったことになる。

 

 

コーコス信岡

カーゴパンツやトップスのヒットで「グラディエーター」ブランドが大きく飛躍

 

「G-カーゴ2」で多様な着用シーンを提案

 

 コーコス信岡(広島県/信岡映子社長)は、カジュアル志向が強まるトレンドの中で、ヒットブランドの秋冬向け新商品をさらにブラッシュアップ。デザインや着心地などで新コンセプトを導入するだけでなく、機能性の面でもさまざまな提案を行っている。

 同社の人気ブランドとして大きく成長した「グラディエーター」シリーズについては、従来の「G-カーゴ」をさらに進化させた「G-カーゴ2」というコンセプトで新商品を多数投入している。

 「G-カーゴ」は、カーゴパンツのブランドとして、ワークとカジュアルの垣根を越えた自由度の高いトップスとの組み合わせや着こなしが可能であることから、大きなヒットシリーズとなった。

 新シリーズでは、着用シーンや好みに合わせて選べる「スタイリッシュ」「ミリタリー」「クロスオーバー」「ワイルド」など、異なるタイプのデザインを揃えたほか、よりオールラウンドな「G-ボトム」を発売。いずれもウエスト部分にナチュラルストレッチを組み込むことで、はき心地をさらに進化させるなど、シルエットやデザインだけでなく、機能面にもこだわった商品だ。

 コンセプトの核を維持しながら、スペックアップを図り、カラーバリエーションの定番色についても、トレンドに合わせて微妙な変化を取り入れるなど、細部にまでこだわった仕様となっている。

 

「G-スポルト」でも新タイプをラインアップ

 

 同じく「グラディエーター」ブランドのトップスである「G-スポルト」は、値ごろ感のある価格設定に加え、ワークウエアとしての機能性と、カジュアルテイストのデザインが人気を集め、近年の商品では最も早く販売数10万点を突破する大ヒットに。

 これを受けて、秋冬商品としては「防風ストレッチフーディー」を発売。既存のワーク用防風素材にはない、ソフトな風合いと薄さを実現。加えて、ストレッチ性、機能的な袖ポケット、夜間の視認を高める反射テープ等、機能性にも優れ、ワークからスポーツ、カジュアルまで幅広い着こなしが可能。この冬のマストアイテムになること間違いなしの逸品だ。

 以上のほか、アメリカのワークブランド「ディッキーズ」については、昨年大きなリニューアルを実施して商品ラインアップを強化。中でも素材や製法の進化によって着心地を向上させたストレッチデニムなどが好調な売上を維持している。このほか、ファン付ジャケットやソックスについても、パフォーマンスにこだわった高品質な商品を展開。

 同社独自の商品開発力を背景に、ユーザーに対して仕事向けだけではなく、幅広い用途にも使用出来る可能性と多様な選択肢を提供することで、変化する市場への対応をいっそう強化していく方針だ。

 

■自由度の高いブランドを展開
ワークとしてのこだわりは維持

 


専務取締役 平川隆氏

 おかげさまで「G-カーゴ」「G-スポルト」がヒットし、「グラディエーター」ブランドの認知度が上がっています。市場のトレンドとしてカジュアル志向が継続しており、ワークウエアはタウンウエアとの垣根がなくなりつつあります。その中で、店舗から「カーゴではなく、スラックスタイプを」との強い要望を受けて開発したのが新発売する「G-ボトム」です。

 また、トップスシリーズの「G-スポルト」も好調で、いまや年間商品に成長しています。ワーク仕様なので機能性に優れ、丈夫である上に、仕事以外のシーンでも着用できるカジュルア要素も盛り込まれています。

 こうしたブランドを店頭で差別化していくための売場提案にも力を入れていきます。シリーズ商品のラインアップをわかりやすく展開するマネキン陳列や、「グラディエーター」のロゴ入りLEDサインの支給など、ブランドを確立させ、ブランドの“空気”が持つよさや、着用シーンなどの“コト”訴求を提案しています。

 成長中の「グラディエーター」と、従来の人気ブランドである「ディッキーズ」は当社の2本の柱であり、ワークウエアとしての品質にこだわり続けてきました。これらをより強固に確立していきたいと考えています。

 

 

● ワークウエア ●

 

トレンドのデザインやファン付ジャケットなど売れ筋の動向に対応した品揃えが重要

 

ニッカズボンやつなぎに高いニーズ

 


トータルコーディネート例をマネキンで見せるエンド展開(ドイトプロ川越店)

 プロユースの中でも、ワークウエア市場は成長トレンドにあり、今後も成長が期待されることから強化するホームセンターが多い。中でもカジュアル志向やファッション志向がますます高まる傾向が強い。

 ドイトプロ川越店の場合は、そうした一般的に共通するトレンドがある一方で、地域的な特徴も明確にあるという。「たとえば、ニッカズボンは他店ではシュリンク傾向にありますが、当店では、一般的にニッカズボンをはかれない内装業のお客さまの購入も多く、かなりよく売れています。また、近隣に立地する工場向けに、つなぎも売れ筋カテゴリーとなっています」(奈良店長)

 こうした細かい需要の違いは、オープン当初から想定していたわけではなく、接客の中から徐々につかみ取っていったのだという。

 このほか同店では、稀少性のある人気ブランドを揃えるなど、品揃えの幅広さ、サイズのバリエーション、接客など、さまざまな要素で“買物の楽しさ”を提供することで差別化を図っている。

 また全般的にカジュアル志向が強いのは、市場全体の傾向と同様。シーズンごとに登場する新商品への注目度も高い。同店では、店頭に季節品の特設コーナーを広く設けて特売品を展開。さらにワークウエア売場のトップでは、マネキンを使用した着こなしを提案する演出を行っている。ここでは帽子やベルト、シューズなど、トータルなコーディネートをイメージすることができる。

 近年はメーカー各社もユーザーの志向に敏感に対応しており、ストレッチ性や防寒性など、ワークウエアならではの機能性や丈夫さを持つ一方、着こなしの自由度につながるカラーバリエーションやシルエットの充実に取り組んでいる。

 こうしたトレンドに対応した品揃え強化は、ワークウエア部門に共通したテーマとなっている。

 「ストレッチデニムやミリタリー調など、ワークウエアにも常に流行がありますので、そうしたトレンドに対応した品揃えについては常に意識しています」(奈良店長)

 またこの春夏シーズンで特徴的だったのは、猛暑の影響でファン付ジャケットの売上が大きく伸びたことだという。ファン付ジャケットや機能性インナーは近年の売れ筋商品となっているが、気候条件がそれを大きく後押しした。ウエアとのセット商品が好調だったほか、これにプラスして着替え用のファン付ジャケットを購入する例も多かった。

 ファン付ジャケットは近年バッテリーの持続性や軽さなどの面で技術が進化しており、今後も成長が期待できそうだ。


シーズンごとの新商品やトレンドを意識した品揃え強化する

川越店特有の傾向としてニッカズボンが売れるため、品揃えを強化

独自ブランドの展開や多彩なサービスで来店動機につなげる

 


この夏売上が好調なファン付ジャケット。専用コーナーを展開してセット商品なども用意

 またドイトプロではオリジナルブランド「職人気質」を訴求している。「己の技能に信念と誇りを持ち、安易な妥協は許さず、納得がいくまで仕事に取り組む人たちを応援する」のがブランドコンセプト。ドイトプロ川越店でも、オープンを記念して専用コーナーを展開しており、一定額以上の購入で「職人気質」グッズのプレゼントキャンペーンを実施。Tシャツやタオル、キャップ、コンベックスや水平器などを景品として揃えている。

 奈良店長は「オリジナル商品が浸透して、ブランドとして現場で認知されていくことをめざしています」と語る。

 カプセルトイ方式のプレゼントのほか、グッズを揃えたクレーンゲームを設置するなど、ドン・キホーテグループらしい遊び心を加味した訴求にも力を入れている。

 このほか奈良店長は「プロユーザーが用品のどこに着目し、どの点を重視して選ぶかは千差万別です。ニーズに的確に対応し、“あの店に行けばいろいろ揃っている”という評判を得ることが重要で、そのために地道にお客さまと対話を重ねていく必要があります」と言う。

 常時13人程度のスタッフを配置し、マンツーマンの接客に力を入れて信頼度を高めるほか、買上商品をスタッフが素早く積み込む「即行積み込みサービス」の実施、ゆったりした休憩スペースや喫煙スペースを設けるなど、店舗全体として来店動機につながる取り組みを強化している。


近隣に工場が立地するため、つなぎの需要も高い。サイズやカラーのバリエーションも充実

オリジナルブランド「職人気質」のコーナー。カプセルトイ方式のプレゼントキャンペーンのノベルティにもなっている

 

●注目メーカー 秋冬の新製品と戦略

自重堂

人気の「Z-DRAGON」イメージキャラクターに俳優・市原隼人を起用
着実に浸透した“スタイリッシュ&カジュアル”

 

「Jawin」の秋冬モデルは素材感を生かしたカジュアルワークウエア

 自重堂では、2018年秋冬シーズンに向けて、多様な新商品を投入している。

 定番の人気シリーズ「Jawin」(ジャウィン)では、綿55%、ボリエステル45%でムラ糸の素材感を生かした「52600」シリーズを投入するほか、カモフラ柄と光沢感を融合させることでデザイン性を追求した防寒「58700」シリーズなども注目商品。

 一方、15年以来、同社の新たな基幹ブランドへと成長した人気の「Z‐DRAG ON」(ジィードラゴン)では、伸縮性に優れたストレッチデニム素材にカモフラプリントを施し、他社との差別化を図る「71600」シリーズを発売。デザイン性を追求したハイブリッドモデルだ。

 同じく新商品で、バイオウォッシュ加工を施したストレッチ素材の新シリーズ「7 1700」では、ストレッチジャンパーとストレッチカーゴパンツをラインアップ。

 フルハーネス着用時に胸ポケットやカーゴパンツがベルトに隠れないように設計されるなどデザイン性だけでなく機能性も兼ね揃えている。

 

セーフティシューズは3シリーズを投入

 

 「Z-DRAGON」ブランドのセーフティシューズについては、秋冬向けに着脱しやすい履き口でクッション性の高いミッドソールを採用した「S6183」をはじめ、耐滑ソールを採用した「S718 3」「S8182」の合計3シリーズを投入している。

 いずれもカジュアルでデザイン性に優れ、カラーバリエーションも充実。値ごろ感のある価格帯を実現することで、さらなる成長をめざす。

 さらに今シーズン見逃せないのは、「Z-DRAGON」のイメージキャラクターに俳優の市原隼人氏を起用したことだ。若年層を中心としたターゲット層への発信力やコミュニケーションを強化することでインパクトをもたらすと同時に、ブランド価値のいっそうの向上をめざす。