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セブン&アイ・ホールディングス 村田紀敏社長2014年度を振り返る(1)

 セブン&アイ・ホールディングス(東京都/村田紀敏社長)は、2015年2月期決算を発表した。連結の業績は以下の通り。

 

 ●営業収益 6兆389億4800万円(対前期比7.2%増)

 ●営業利益 3433億3100万円(同1.1%増)

 ●経常利益 3414億8400万円(同0.7%増)

 ●当期純利益 1729億7900万円(同1.5%減)

 

 セブン&アイ・ホールディングスは、国内小売業としては初めて売上10兆円(セブン‐イレブンのチェーン全店売上高をカウント)を達成した。中核事業であるコンビニエンスストア事業のセブン-イレブン・ジャパン(東京都/井阪隆一社長:以下、セブンイレブン)と米国の7-Eleven,Inc.が過去最高益を達成。また金融関連事業が全体をまたぎ業績を牽引。さらにプライベートブランド(PB)の「セブンプレミアム」の売上高を対前期比21.6%増の8150億円に増加したことなどが奏功した。なお2016年2月期は「セブンプレミアム」の売上高1兆円突破が確実視される。

 

 その結果、営業利益は、14期連続で過去最高を更新した。

 

 以下では、記者会見での村田社長の発言をまとめた。今日明日の2日間にわたって掲載する(談:文責・千田直哉)

 

「2014年度を振り返ると、円安の影響で輸入価格が上昇した。またエネルギーコストも上昇。さらには消費税増税よって実質的な物価上昇率は2%となり、国民の実質収入は減少した。マイナスの商環境がある一方で株価高騰効果と輸出関連企業の高業績効果によって、潜在的な消費の掘り起しが行われた。またインバウンド需要もあった。結果的にはマイナスとプラスとが入り組んだ消費動向を見せるようになっており、それが明確に表れたのが二極化消費だった。ただいずれの場合も、消費者ニーズの内容は、価格より価値にシフトしている」

 

「2014年度の商環境を前回の1997年の消費税増税時と比較し、消費の回復についてみてみると、前半においては97年時と比べ遅れていた。しかし後半の消費の状況をみると、97年は世界金融危機が起こり、景気や消費は下がった。それに対して今回は、株高や輸出関連企業の高業績などのプラス効果により消費は緩やかに回復し始めている」

 

 

 主力のコンビニエンスストア事業の営業収益は、2兆7277億8000万円(対前期比7.8%増)、営業利益は7.5%増の2767億4500万円と堅調だった。

 セブン-イレブン・ジャパン(東京都/井阪隆一社長:以下、セブンイレブン)のチェーン全店売上高は対前期比6%増の4兆82億6100万円で初めて4兆円を突破。既存店伸長率は同2.4%増、全店平均日版は65万5000円と同9000円減だった。14年3月に愛媛県での出店をスタートさせ、過去最高となる1602店舗を出店した結果、期末店舗数は1万7491店舗になった。

 

「セブンイレブンでは、新しい商品や既存商品でもリニューアルに努めた。とくにPBのセブンプレミアムは、約2000アイテム中8割以上をリニューアルした。その結果、セブンプレミアムの2014年度の売上高は8150億円と対前期比で21.6%も増加した。価値と新しさを具現化することによって、売上増加が図られた」

 

「国内市場成熟化の中で、重視してきたのは地域ニーズの掘り起しだ。従来のチェーンストアの経営は、本部が商品をつくり、各店舗に商品を送り込んで、お店でその商品を売り込んでいくという仕組みで大量生産・大量販売をより効率的に運営した。だが、成熟化の中では、地域に即した商品を開発し売上を効果的に上げていかないと、成長することは難しい。そこでセブンイレブンは、全国で90か所に展開する製造工場を中心に地域の消費者に合わせた商品開発を組織的に行ってきた。厳しい環境にあってもマーケットを創造していくことによって、成長は十分可能である」

 

 

 米国の7-Eleven,Inc.のチェーン全店売上は2兆8344億6400万円(対前期比7.3%増)と好調。既存店伸長率(ガソリン販売含まず、ドルベース)では同3.1%増。総店舗数を8297店舗とした。なお、営業総収入は1兆9352億7400万円(同7.5%増)、営業利益は596億5100万円(同16.5%増)だった。

 

「7-Eleven,Inc.も過去2~3年で改革が進んでおり、2014年度は成長への第一ステップと位置付けている。とくに買収した店舗のセブンイレブン化への改造効果が現れている。同時に都市部への出店が進み、それに合わせたファーストフードの開発がいっそう進展している。今後の成長を支える地盤構築ができてきたと考えている。今年度の利益も2桁の成長を計画している」

 

「セブンイレブンの課題とは商品開発力が弱体化した時だ。一番大事なのは新しい商品を次々と打ち出して、マーケットを刺激して消費を喚起することだ。日本のマーケットの消費の力は決して弱くはないが、売り手側の刺激策は不可欠だ。2014年度の状況から感じているのは、値段を安くしたら売れるという時代ではないということ。より価値のあるものや味のいいものなどの新しい商品をマーケットの中にどれだけ打ち出せるのか? 商品価格が上がる中で、ちょっとでもいいもの、長く使えるもの…などの開発が重要だ」

 

 

 イトーヨーカ堂(東京都/戸井和久社長)などスーパーストア事業の営業収益は2兆121億7600万円(対前期比0.1%増)、193億4000万円(同34.8%減)に落ち込んだ。そごう・西武(東京都/松本隆社長)などの百貨店事業の業績は、営業収益は8750億2700万円(同0.4%増)、営業利益は70億5900万円(同7.1%増)だった。

 

「イトーヨーカ堂やそごう・西武は厳しい状況だ。時代変化のパラダイムシフトに対応し切れていなかったという反省がある」

 

「総じて総合スーパー(GMS)は厳しい。そこには共通項がある。総合スーパーの成長の後ろ盾になっていたのはチェーンストア理論だったということだ。時代によってチェーンストアの仕組みを変えていかなければいけない。そこでイトーヨーカ堂は、個店主義を徹底して、実行していく。店舗の収益の責任は店舗。それをサポートするのが本部という形にしている。だから店舗から要望を徹底して出してもらい、それに対応するのが本部の商品部としている。対応できなない場合は、変えるしかない。そのくらいの信念で臨まないと、難しい。個店力の増強ということではとくに食品が重要だ。生活意識を持ったパートナー社員方々の活用登用によって力を発揮してもらう」

 

「イトーヨーカ堂の活力になるのは新店だと考えている。したがって大型タイプ店舗を年間1~2店舗のペースで出店する。2015年度計画では約600億円。都内で大変いい物件が手に入ったため大きな金額になっているが、通常は約300億円の投資をコンスタントにしていきたい。2015年度は、既存店舗の改装にも注力する」