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ファーストリテイリング決算発表 2020年度に売上高5兆円、営業利益1兆円

2014年10月9日、ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)は、2014年8月期決算を発表した(@東証アローズ)。以下では、柳井社長の発言をまとめた。
注目したいのは、「リアルとバーチャルが融合した新しい画期的な産業を創出」「世界最高水準のダイレクトビジネスをつくる」といったようにEコマースを含むデジタルビジネスについて強調している点である。(談:文責・千田直哉)

 

 2014年8月期の業績は、売上高1兆3829億円(対前期比21.0%増)、営業利益1486億円(同11.8%増)、当期純利益は781億円(同13.6%減)だった。

 国内ユニクロ事業は利益率改善で増益、海外ユニクロ事業は大幅な増収増益を達成した。しかし、J Brand事業の減損損失により、当期純利益は減益となった。

 

 当面の優先課題は、国内ユニクロ事業の安定成長と海外ユニクロ事業の成長を加速させること。これに加えて、グローバルブランド事業の改革である。

 

 その前提となる我々の「ユニクロブランドの本質」を確認したい。

「ユニクロは世界で唯一のLife Wearブランドをめざす」ということだ。

 Life Wearとは、人々が自然に手に取ってしまうような服、人々の生活に密着し、日々の生活を豊かにする究極の普段着のことだ。優れた機能、品質、洗練されたデザインと革新性、ニュース性を兼ね備えた手頃な価格の服である。

 

 では、具体的に何をするかといえば、まず、海外ユニクロ事業は、各エリアにおいて本格的な事業展開に乗り出す。海外ユニクロ事業が国内ユニクロ事業の規模を凌駕するのは時間の問題だ。

 

 グレーターチャイナ(中国・台湾・香港)で年間100店舗を出店し、1000店舗体制の構築に努めたい。

 韓国では、高成長を継続することで、韓国で一番愛されるブランドになりたい。

 東南アジアは、出店エリアを拡大し、東南アジアを代表するブランドになると同時に各国でナンバーワンブランドになりたい。すでにタイへは20店舗、マレーシア21店舗、シンガポール18店舗、インドネシア4店舗、フィリピン16店舗を展開。年間50店舗以上を出店したい。

 米国は、早期の黒字化を達成し、ナンバーワンブランドになるため、年間30店舗を出店し、西海岸・東海岸を主力にチェーン網を築く。近い将来に年間100店舗を出店できるようにする。

 欧州は、主要都市に進出し、出店を早めたい。年間10店舗を出店し、できるだけ早い時期に年間20~30店舗を出店したい。

 

 新規進出国としては、2014年4月にドイツとオーストラリアに進出し、大成功を収めた。オーストラリアには2014年9月にメルボルン2号店、10月にシドニーへの出店を計画している。

 なお、インドへの進出も検討中だ。

 

 各国で競争力のある商品の開発にあたっていきたい。

 具体的には、現在、米国事業の経営者はほぼ米国人であるが、そこに日本人を派遣して我々のDNAの入った服を開発する。米国人のために米国人の服をつくるわけだが、それらはグローバルで売れる商品でなければならない。

 それぞれの国のブランドとして最高だと思われる服をグローバルでつくっていく。ローカルとグローバルを両立できるような服づくりをしたい。

 

 さて、グローバルブランド事業では、GU(ジーユー)事業が売上高1000億円を突破した。GUは《ファッションと低価格》の日本発のグローバルブランドとしてアジアナンバーワンのポジションをめざす。2014年9月に台湾1号店を出店し大成功。アジア市場での拡大の潜在性は大きい。次の目標として売上高3000億円、営業利益300億円に挑戦したい。

 

 アフォータブルラグジュアリーブランドは、各ブランドのDNAを活かしながら、ファーストリテイリングやユニクロのプラットフォームを活用し、以下の各ブランドを最短で10億ドル(約1000億円)のビジネスに育てる。

 

 セオリー事業は、日米に加え、欧州とアジアを強化し、売上高10億ドル以上の真のグローバルブランドに育成する。

 

 コントワー・デ・コトニエ事業、プリンセス タム・タム事業は、フランスを代表するブランドとして原点を磨き、ファーストリテイリングのプラットフォームを活用することでグローバルブランド化していく。

 

 J Brand事業は、デニムのリーディングカンパニーとしてグローバルブランドにしたい。

 

 ユニクロ事業は改革をさらに進めていく。

 チェーンストア経営を超え、店舗スタッフを主役とした個店経営に進化させ、売上・収益を最大化させる。

 全社員と全経営者とファーストリテイリングのビジョン、価値観、企業文化を共有し、女性が主役になり、多様な働き方を前提に全スタッフに成長の機会を提供したい。
また、サーバントリーダーとして、店長と経営者の育成に努め、販売員、店舗スタッフ、店長のスキルレベルに合わせ、仕事の責任範囲を拡大し、各個人を成長させる。

 そして地域に根ざした店長と社員制度をつくり、地域で愛されるユニクロになりたい。

 

 同時にローコストオペレーションを徹底しコスト削減に努める。

 グループで無駄な経費を極限まで圧縮し、投資は費用対効果の高いものに絞り込む。

 そのために、グループ全体にローコストオペレーションの企業文化を定着させ、集中購買や世界最適地調達を確立し、最適・最安を実現。とくに海外ユニクロやグループブランドの経費構造を革新し、グループ全体の営業利益率を早期に15%に引き上げたい。

 

 2015年8月期は、売上収益1兆6000億円(同15.7%増)、営業利益1800億円(同38.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益を1000億円(同34.1%増)を計画する。

 

 ファーストリテイリングの中期目標は、2020年度に売上高5兆円、営業利益1兆円の世界ナンバーワンブランドになることだ。その中間地点として、まず3年後に売上高2兆5000億円をめざす。

 

 3年後の到達目標としては、

 

・グローバルワン・全員経営の実践を継続

・世界最適の人と場所をつなぐグローバルヘッドクォーターによる経営

・リアルとバーチャルが融合した新しい画期的な産業を創出

・店舗スタッフが主役の個店経営へ進化

・ローコスト経営により、各ブランド事業で営業利益率15%を達成

 

 とした。

 

 今後3年間の取り組みとしては、デザインはニューヨーク、次世代ビジネス本部はサンフランシスコ、文化情報発信本部はパリ・ロンドンといった具合に世界の最適地で経営を極めたい。

 そして、世界最高水準のダイレクトビジネスをつくる。

 

 また、グローバルで最適な生産ネットワークを構築し、商品企画からマーケティング、物流、販売まで、あらゆるビジネスシステムを最適化し、グローバルで最高水準のサプライチェーンを構築していく。

 働き方の多様化により、従業員の満足度を高め、成長してもらう。世界最高の人材を獲得したい。

 

 その実現に向けては、ニューヨーク、パリ、ロンドン、東京などで本格的なR&Dセンターを立ち上げ、製品開発をさらに進化させる。また、東レ、MoMAなどのパートナー企業や団体との協業をさらに拡大、オープンイノベーションを進め、バーチャルカンパニー化を促進させる。

 そして、「ヒートテック」「ウルトラライトダウン」「エアリズム」「カシミヤセーター」「ジーンズ」「シャツ」「パンツ」「ワンピース」などのコア商品を進化させ、世界中で愛されるユニクロブランド商品をつくっていく。

 たとえば、2014年秋に発売の「ウルトラライトダウン」は裏地の特殊アルミプリントにより、服の中の暖かさが大幅にアップしている。

 

 グローバルマーケティング活動としては、グローバルブランドを象徴する旗艦店舗を出店したい。

 シドニー、ベルリン(2014年4月開業)、ボストン、フィラデルフィア、ロサンゼルス、シカゴ、大阪(2014年10月31日開業予定)など現在出店中の都市に加え、世界中の主要都市に進出する。そして世界中のお客様と双方向でつながるデジタルコミュニケーションを確立させる。

 

 現在、グローバルブランドアンバサダーとしてテニスの錦織圭選手、ノバク・ジョコビッチ選手、国枝慎吾選手、ゴルフのアダム・スコット選手の4人と契約している。

 4選手とも大活躍しており、2014年のテニスの4大トーナメントのひとつ「全米オープン」では男子シングルス準決勝で錦織選手とジョコビッチ選手が対戦するという快挙も成し遂げてくれた。

 それ以上の活躍をしているのが国枝選手で同じ大会の車いすの部でシングルスとダブルスで見事に優勝。2014年の4大トーナメントをすべて優勝するという年間グランドスラムを達成した。

 彼らの活躍は、我々のグローバルマーケティングの柱のひとつに位置づけている。

 

 すでに東アジアにおいては、ナンバーワンブランドとしての地位を確立できていると自負している。

 たとえば、「2014年小売りブランドランキング」(インターブランド社『Best Retail Brand 2014』)では、アジア太平洋地域で2位にランクイン。また、中国では3年連続で「ゴールデン・ブランド」(第一財経、2014年9月29日)に選ばれ、ベスト10に入っている。さらには、韓国のファッション・雑貨部門のブランドランキング(ブランドストック社、2014年9月)でもユニクロは第一位に選出された。

 

 そして、2014年9月には、世界で最も顕著な成果を残した小売業に与えられる「Retailer of the Year(世界最優秀小売企業賞)」(World Retail Congress〈世界小売業者会議〉)をファーストリテイリングが授与された。ファーストリテイリングの将来性と新しいコンセプトが評価されたものだ。

 

 ユニクロは、あらゆる人がよいカジュアルを着られるようにする新しい日本の企業です(1999年)。これが我々の原点だ。

 

 最後に、いつも言うように、我々のミッションは、《服を変え、常識を変え、世界を変えていく》である。