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人を残すは一流

 金を残すは三流、事業を残すは二流、人を残すは一流――と言われる。その通り、と頷きながら、現在のように短期間で極大の利益を計上しなければいけないような市場の構造は間違っているように思えてならない。

 

 さて、流通業界で最も多くの“人”を残した経営者と言えば、毀誉褒貶はあるにせよダイエーの創業者の中内功さんだろう。カスミ(茨城県)の小浜裕正会長、ファンケル(神奈川県)の宮島和美社長、富士薬品(埼玉県)の佐々木桂一ドラッグストア事業本部長と中内さんと一緒に働き、直接薫陶を受けたダイエーOBOGの方々の卒業後の活躍は言うまでもない。

 

 最近では、中内さんが1988年に設立した流通科学大学(兵庫県/中内潤理事長)の出身者も経営者として頭角を現してきた。ビッグ・エー(東京都)の三浦弘社長は、1992年卒の一期生。ダイエーに入社後、さまざまな業務を経て、今年3月1日に同社社長に就任した。

 

 「すべてを失ったけれども、大学は残るから中内さんが忘れられることはないだろう」。日本リテイリングセンターの故渥美俊一先生が評していたのを思い出す。その予想通り、大学がある限り、毎年800を数える若い“人”が社会に巣立っていく――。

 

 今日は9月19日。中内さんの10回忌である。
 

『チェーンストアエイジ』誌2014年10月1日号