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“自戒自罰”では――

 阪急・阪神ホテルズ(大阪府)に始まった食材の偽装が大きな社会問題になっている。

 同社が10月28日発表したプレスリリースによれば、運営する8ホテル、1事業部の23店舗、47商品で、メニュー表示と異なった食材を使用していた。

 最初は、「偽装ではなく、誤表示」と強弁したが、実際の中身を見る限り、苦しい言い訳であり、その後、出崎弘社長が辞任したことを考えると、誤表示というような言葉の言い換えで済むような事態ではなかったと反省しているのだろう。

 

 今回の偽装問題については、役員の減給や利用者への返金など、自ら相当厳しい罰則を課すとともに、最終的には出崎社長が辞任した。

「役員の減俸程度で済まされる問題なのか?」という批判の声もなくはない。

 しかし、たとえば公務員の懲戒処分は、免職、降任、停職、減給、譴責、訓告、厳重注意、口頭注意と8つあり、減給とは上から4つ目と非常に重いものである。

 また、一部報道によれば、返金も22日~29日までに1万1527人、2420万円に上っている。

 その意味では、同社は相当な“自戒自罰”を課したと言っていいのではないだろうか?

 

 これで一応の幕引きは図れるのであろう。

 

 しかし、考えたいのは、厳しい罰則は何のためのものなのか、ということである。

 

 社長辞任も減給も返金も、たぶん同社の利用客の大半を占めるサイレントマジョリティにとっては全く関係ない。別に健康被害がないから、数年前のことだから、ファンだからと不問にふす人、面倒くさいから返金を求めない人――ほとんどの利用者はこんな感じではないだろうか?

 

“自戒自罰”では幕引きはできても、きっと何も解決はしない。ペナルティを課すことと企業体質が大きく変わることは別の話だからだ。

 

”自戒自罰”はもちろん大事なのだが、今後、同社が本当に問われているのは、物言わぬサイレントマジョリティに対しての誠意だ。

 

 そう考えて、思い出したのは、イオン(千葉県/岡田元也社長)専務執行役内山一美SM事業最高経営責任者の「既存店舗をハード面で改装することは大事だけれども、同時に従業員の心を装い直す“心装”もしなければ意味がない」という言葉だ。

 

 果たして、同社は心を装い直し、消費者に誠意を込め、根底から企業を変革できるのか?

 

 具体策はいまのところ伝わってきていないが、もしできなければ、数年後に、再び同じような事件となって現れるのだろう。

 

 ※食材偽装が発覚した他の企業にもまったく同じことが言える。