かなり前から疑問に思っていたのは、文系と理系の分類についてだ。
日本の高校では、たいてい2年生になるタイミングでどちらかを選択させられる。
数学を苦手とする者は文系に、得意とする者は理系に、行くことが多かった気がする。
学生を文系と理系に振り分ける歴史は古く、すでに大正7年の勅令第389号「第2次・高等学校令」の第8条に「高等学校高等科ヲ分チテ文科及理科トス」という規定があった。
しかし、そんな若い時期に、文系と理系に分類すること自体に意味があるものかと思い続けてきた。何しろ、振り分けることは、若者のそこはかとない可能性の芽を潰すことになりかねないからだ。
実際に昔は、陸軍軍医総監にして官僚。また、小説家、評論家、翻訳家、劇作家として“文豪”と称された森鴎外のような傑物もいた。
はたまた、世界に視野を広げれば、“万能人”と呼ばれ、絵画、彫刻、建築、音楽などの芸術。科学、数学、工学、発明、解剖学、地学、植物学などさまざまな分野で才能を発揮したレオナルド・ダビンチのような天才もいる。
もっとも、本当に力のある者は、文系と理系に分けられようとも才能を発揮し、頭角を表すのだろう。
ただ、そうは思いながらも、17歳で岐路に立たされる制度を見直せば、“怪物”輩出の裾野は大きく広がるのでは、とも考える。
しかも、いまやボーダーレスの時代。文系だ、理系だ、と主張したところで実社会でちゃんと通用するとは限らない。
もちろん、われわれ小売業界も同じだ。
いま注目の的であるアマゾン・ドットコムの創業者ジェフ・ベゾスは、IT(情報テクノロジー)の専門家であり、経営者であり、商売人であり、戦略家であり、心理学者であり、発明家でもある。