現在、国会で審議中の消費税引上げ関連特別措置法案への注目度がにわかに高まっている。
小売業界内の最大の関心事は、2013年4月に消費税率が現在の5%から8%に引き上げられた後、「消費税還元セール」などの実施を禁止する法案だ。
「悪法も法」なので仕方ないかもしれないが、自由競争に待ったをかけるような政府の動きを看過することはできない。
そもそも、何をしたいのかが理解できない。
政府は、法案を提出した理由のひとつに小売業者による「取引業者いじめ」の可能性を挙げている。「消費税が3%増加する部分を取引業者に押し付けるのでは…」という危惧だ。
しかし、「取引業者いじめ」と還元セールの実施は、関係のない話だ。
もし、「取引業者いじめ」の問題を本気で防止したいのであれば、大規模小売業公示をさらに徹底させ、優越的地位の濫用規制ルールを強化。独占禁止法などを適用して処罰すればいい。
実際、不当な返品、不当な値引き、不当な委託販売取引、特売商品などの買いたたき、特別注文品の受領拒否、押しつけ販売、納入業者従業員の不当使用、不当な経済上の利益の収受、要求拒否の場合の不利益な取り扱いなどで、2005年の同公示発表以降、多くの企業が厳罰に処されている。
日銀総裁が交代し、インフレターゲットで2%の物価上昇を掲げているが、そのスムーズな達成も法案提出の理由のひとつなのであろう。
だが、そんなことを簡単にコントロールできるのであれば、地球上にはインフレもデフレも起らないはずだ。
そして、この法案が成立したとしたところで、どこまで有効に機能するかも疑問だ。
別のタイトルでセールを実施すれば、相関関係はわからない。またEDLP(エブリデー・ロー・プライス)の価格政策を導入している企業の場合なら、還元セール実施の有無を判断しようがなく、さぞ抜け道は多いことだろう。
いずれにしても、政府が打たなければいけない手は、こんな幼稚な弥縫策ではなく、日本経済の本質的な体質改善策と具体的な景気浮揚策にある。