大家族をテーマにした番組を継続的に見ている。春と秋の番組改編期や新年特番など、1年間に3度も4度も画面を通じて顔を合わせていると、すっかり知己ような感覚になってくる。
そうなると、もうこの大家族を否定的に見ることができなくなるものだ。
先に家族への好意や応援があり、後からついてくる事実はどうでもいいように思えてしまうようになるからだ。
しかし、湯船に浸かりながら、冷静になって様々なシーンを思い起こし、よく考えてみると、私が見ている番組に出てくる大家族の父親の非常識さは、目に余るものがある。
決して悪人というわけではないのだが、結婚・離婚・再婚を繰り返し、転居を繰り返し、子供優先と言いながらも自分の欲望を貫くわがままさばかりが目立つ。次の放送では、また離婚と転居をしようとしているのだという。
これが、自分の家族だったら、相当腹が立つはずだ。
ところが、画面の向こうにテーマ曲に乗って現れる本人は、変人というよりもとてつもないヒーローに見えてくるから不思議だ。
本当の等身大の父親がどんな人物であり人柄であるのかを知る術はないし、作家による台本が存在するかもしれないのだが、こうした私事を踏まえて、留意しておきたいことが2つある。
ひとつは、どんな変人も編集すれば、それなりの善人に見えるかもしれないということ。
もうひとつは、テレビを通して出てきた人物の本当の姿は全くわからないということ。
だから、テレビのマジックに気をつけろ、ということだ。