以前にもこのBLOGに記したように、わが社の立地する東京神田神保町には、テイクアウトのいれたてコーヒー店がそこかしこにあり、“朝や仕事の合間の一息”を入れるには、まったく不便を感じない素晴らしい環境にある。
http://diamond-rm.net/articles/-/3558
現在、よく買いに行く店を順に記すと、「ベローチェ」「スターバックスコーヒー」「ターリーズコーヒー」「マクドナルド」「カフェ アンドナンド」…。その日の気分で店を使い分けているのであるが、店で注文する商品はテイクアウトのブラックコーヒーだ。
最近は、コンビニエンスストアの「セブン‐イレブン」が1杯100円のいれたてコーヒーを取り扱うようになり、選択肢は広がるばかりだ。
こうしたオフィス需要のいれたてコーヒーに目を付け、面白い取り組みを実践しているのはネスレ日本(兵庫県/高岡浩三社長)。
同社は「ネスカフェアンバサダー」という仕掛けでこの市場に殴り込みをかけている。
「ネスカフェアンバサダー」は、家庭用インスタントコーヒーマシン「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」をオフィスにて無料で貸し出すシステムだ。
インターネットを通じて、「ネスカフェアンバサダー」に個人登録をすると、ネスレ日本から、「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」と料金回収に利用する「貯金箱」がオフィスに送られてくる。
「ネスカフェアンバサダー」の登録者は、ネスレの通販を通じて専用カートリッジを継続購入(クレジット支払い)してオフィスで5種類のコーヒーを提供。自分だけでなく、同僚にも、コーヒーマシーンを使って飲んでもらう。
「ネスカフェ ゴールドブレンド」のブラックコーヒーなら、1杯当たりの原価はわずか約14円。値入は自由なので20円~50円程度の金額でオフィスに勤務する全員が、いれたてのおいしいインスタントコーヒーを楽しめてかつ、「ネスカフェアンバサダー」の登録者にも多少なりとも利益が取れるというシステムだ。
年間最低でも1000杯は売れるのだという。
まず北海道で試験的に「ネスカフェアンバサダー」を実施したところ好評を博したので、2012年11月中旬から全国展開したところ、すでに応募数は6万人を突破。さらに応募を促すことで2013年度の目標は登録累計10万人以上、売上を10億円に設定した。
日本全国には約600万か所の事業所があり、5400万人が勤務する。同社が狙いを付けたのは、この市場だ。
「無料のコーヒーを総務部の予算で提供する会社は減ってきているので、途方もない大きなオポチュニティ(商機)がある」と高岡社長は目を輝かせる。
しかも、「ネスカフェアンバサダー」には雇用や請負などの契約は一切生じないため、人件費などのコストはゼロ。強いて言うなら、ネスレ日本側の持ち出しは、「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」の貸出コストと送付料、「ネスカフェアンバサダー」のシステム管理コストくらいだ。
ネスレ日本は、「ネスカフェアンバサダー」をビジネスモデルのイノベーションと位置付け、新しい需要の喚起を図るとともに、多様化するいれたてコーヒー市場でのシェア獲得を着々と進めている。