今年は、心なしか身近な人たちの訃報が例年よりも多く飛び交っている気がする。
初夏に義母を亡くし、恩師を亡くし、秋に同期を亡くし、お世話になった取材先の方々も亡くし…近しい人たちに多くの「さよなら」を告げてきた。
そして、先週の土曜日、マラソン仲間だったNさんが突然死した。享年60歳。
以前に勤務していた会社で知り合ったから、もう25年来の付き合いになる。
中央大学ラグビー部で培った強靭な足腰や身体能力が武器のアスリート。トライアスロン大会やマラソン大会に良く一緒に参加したものだ。
しかし、骨折休養明けの1回を除いて勝ったことは1度もない。
いつも先にゴールして、後から入る私たちを、やさしい微笑みを浮かべながら待っていてくれた姿が印象的だった。
ところが数年前にNさんが転職してからは、休日がなかなか合わずに、このところは疎遠になっていた。
Nさんの死因は心不全。趣味のテニスのプレー中に倒れ、そのまま息を引き取ったのだという。
あれだけの身体能力を誇ったNさんがテニスで突然死する――。
同じ趣味を持つ私も、ちょっと怖くなり、「テニスを続けていいものか」と知人に話してみた。
返ってきたのは、「それって最高の死に方じゃないか! まさにPPK(ピン・ピン・コロリ)の典型。ちょっと若いかもしれないけれども、僕はぜひそうありたいね。長期間闘病して周囲に迷惑を掛けながら、死んでいくなんてまっぴらだ」とまったく予期せぬ答えだった。
「なるほど。確かに――」と納得しながら、Nさんは良い死に方をしたんだと思い直し、テニスをやめないことも誓った。合掌。