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10万本の情報

 11月8日のBLOGでは、世界最大のホームセンター企業ホームデポが自社サイト内に検索エンジンを設け、自社に関するキーワードを訪問者から収集。ヤフーやグーグルなどの《サーチエンジン・オプティマイゼーション》を活用して、ホームデポが収集・指定したキーワードが打ち込まれると、第一頁の上位に登場させていることを紹介した。

 

 この話を書きながら、思い出したのは、『三国志演義』の中に登場する諸葛亮孔明(以下、孔明)にまつわる有名なエピソードである。

 

 当時、三国の中で優勢を誇った曹操の率いる魏に対抗すべく、劉備の蜀は、孫権の呉との合従連衡を模索する。

 その交渉のために呉を訪れることになった蜀の軍師、孔明に対して、呉の軍師周瑜は無理難題を吹っかけ、踏み絵をさせる。

 周瑜は、同盟を組むことを決めながらも、孔明の並外れた知力を恐れ、ことあるごとに暗殺を試みることになる。

 

 その最たるが「10日後までに10万本の矢を用意してくれ」という命令に近い要望だ。

 

 国民の安定した生活さえままならない貧国、蜀にとって、それらを用意する資金はなく、まして調達するまでにはそれなりの時間がかかる。

 

 ところが孔明は、「3日以内に集めましょう」とこれを受諾してしまう。

 

 さて、孔明は何をしたのか?

 夜の深い霧に乗じて藁人形を乗せた軍船20隻を対峙する曹操軍に向け動かし、陰に隠れた兵士たちを騒がせ、大軍襲来を装った。

 これに慌てた曹操軍は、ただ闇雲に軍船目がけて矢を打ち放つ。

 

 孔明は曹操軍の矢が1隻当たり相当数当たった辺りを見計らって撤退を命じた。帰還後、藁人形に突き刺さった矢の数を数えると、その数は10万本超。なんと、孔明は、一夜にして10万本の矢を用意してしまったのである。

 

 相手(=お客)から武器(=情報)を奪い、自軍の武器(=情報)にするという孔明の策略――。

 そんな故事を知らずとも、同じことをいとも簡単にやってのけているホームデポ――。

 

 恐るべし、恐るべしである。