iPad(アップル)やキンドル(アマゾン)の登場で紙媒体は劣勢に立たされている。
「活版印刷」は、「羅針盤」、「火薬」とともに「ルネサンス」の三大発明のひとつ。
15世紀にグーテンベルクが発明して以降、書物を急速に普及させる原動力となり、情報伝播のスピードを急激にアップさせたことは教科書で習った通りだ。
以後、約600年にわたって根付いてきた活版印刷と紙媒体が電子メディアにとって代わると言われて久しくなってきた。
だが、出版業界に籍を置く、私の周辺には、どうにも疑問符をつけている人たちが多い。
その根拠はいくつかある。
たとえば、「本棚が好き」という人間がいる。時折、背表紙をみることで、内容を思い出すことこそ読書の醍醐味だという。
本棚は物理的なスペースを食うので、電子メディアが普及すれば、自宅にはなくなり、生活スペースが広がるという意見もあるけれども、私は前の意見を信じたい。
積読(ツンドク)ができなくなるという人間もいる。購入した本を積んでおき、読んだ気になることが楽しいという。
電子メディアでも同じことは可能かもしれないが、これも「読まなければ…」と常に紙媒体に脅迫され続ける積読の不思議な快楽を信じたい。
また、印刷された本なら、マーカーを付けたり、書き込みをすることができるけれどもいまの電子メディアにはできないだろう。
まあ、そんな機能を電子メディアに付加することは、技術的には簡単なのだろうが、私は紙媒体の簡易性を信じたい。
と考えてみると実は、紙媒体の衰退と電子メディアの興隆を否定する根拠はほとんどないのだが、私は守旧派を貫きたい。