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試食はコーポレートアイデンティティの礎だ!

 食品スーパーやGMS(総合スーパー)では、時折、台風で落下したリンゴを販売することがある。表面に痛みがあり、糖度が若干低いものの、味に大きな影響はなく、価格は通常の半額以下なので消費者から好評を博している。

 

 被害にあった農家にとってもありがたい話であり、廃棄を迫られたリンゴが僅かながらであっても現金に変わる。

 

 「でもね…」とこの取り組みを評価しながらも否定的なのは、ある高級スーパーのトップだ。「俺たちの商売は、“若干の糖度”の部分にこだわっているから成り立っている。そこを無視したら終わってしまうので、うちではちょっと扱えない」。

 自信を持てない商品は販売しないというプライドがある。

 

 いずれのケースも商品担当者は試食し、自社の基準に照らし合わせて、商品導入の可否を決めている。

 高級スーパーではリンゴはもちろん、牛肉、納豆、スナック菓子…缶詰までも試食しているのだという。

 

 そういえば、セブン&アイ・フードシステムズ(東京都)の大久保恒夫社長が「接客の殺し文句は、『これ私も好きなんです』だよ」と言っていたのを思い出す。

 試食は、食品小売企業のアイデンティティづくりの礎と言っていい。

 

 (『チェーンストアエイジ』誌2011年12月1日号)