セルフサービスで発展してきた食品スーパー業界には、「2-3の法則」というものがある。
青果や魚の切り身、ステーキなどをパックするに際して2個入りパックと3個入りパックをつくって置いておけばどんな人員構成の世帯にも対応できるという法則だ。
なるほど。2人家族の場合は2個入りパック、3人家族の場合は3個入りパック、4人家族の場合は2個入りパック×2個、5人家族の場合は2個入りパック+3個入りパックと、2種類のパックを用意しておけば、ほぼ全世帯をカバーできる。
だから「2-3の法則」は長く、食品スーパーの鉄則のひとつとして定着してきた。
ところが単身世帯が30%を超えつつある現在は、「2-3の法則」は通用しなくなっている。単身世帯では、最小の2個入りパックでも分量が多過ぎて余らせてしまうため、買うのを控えてしまうからだ。
2005年の国勢調査によると、最新の1世帯当たりの平均人数は2.56人。10年後には2.36人、20年後には2.27人になると予測しており、「2-3の法則」はますます過去の遺物になっていきそうだ。
そこで食品スーパーは、少人数世帯に向けたマーチャンダイジング(商品政策)に注力し始めている(その模様については『チェーンストアエイジ』誌2010年7月1日号で特集を組んでいるのでそちらもお読みください)。
最近訪れたある地方の食品スーパーでは、りんごやグレープフルーツ、たまねぎ、じゃがいも、にんじん…など、少人数世帯の増加に対応するために青果物のばら売りを徹底させた。
「もう数個パックにしても売れない。量的に多すぎるというのがひとつ。もうひとつの理由は他にも食べるモノがあるからだ。たとえば、老夫婦2人の家庭ならりんごは1個、1人半分ずつで量的には足りる。もう少し何か食べたい場合も、お茶菓子やアイスクリームなど家庭内在庫として抱えているモノを消費している」(地方の食品スーパー経営者)。
そんな考え方から、ばら売りを強化したところ、売上は対前年度比40%増。消費者が自分で吟味して商品を選択するので返品はほとんどなく、パックする分の人件費を削減するという効果も得られたという。
「どんどん、ばら売りに力を入れていきたい」とその経営者は意気込みを語っている。
変化対応は、小売業の宿命だが、大きな変化にうまく対応することができれば、そこには大きなチャンスがあることを示唆しているといえよう。