地球温暖化の不都合な真実(日本評論社)
渡辺 正 訳
著者のマーク・モラノは人為的に排出されるCO2による地球温暖化論(本書では脅威派と位置付けられる)に、データをもとに真っ向から反論するジャーナリストである。脅威派はあらゆる事象を「人為的な地球温暖化」論に結び付け、恐怖を不必要に煽っているという。
たしかに、メディアを通じて伝わる、割れた氷にしがみつくホッキョクグマや、巨大台風の度重なる襲来。これらは「温暖化」が原因では?と思わせるには十分すぎる画である。
しかしながら、人為的に排出されたCO2が、地球の温暖化に影響を与えると証明した人は「誰もいない」。著者はそのように語る。そして、ホッキョクグマは増えているし、アメリカにおいては巨大台風の襲来は減っていると、著者はデータをもとに反論する。
本書を読了した感想としては、アメリカにおける保守派とリベラル派による、よくある主張のぶつかり合いといった面も感じずにはいられない。筆者はデータを直接見たわけではないため、本書を読んで「よし、CO2をどんどん排出しよう!」という考えには至らない。もちろん、個人が排出するCO2の量なんてたかがしれているが。
ただ一方で、このコロナ禍において「インフォデミック」なる言葉が一般的になるくらい、不確かな情報が闊歩する昨今。メディアリテラシーを高めるため、「こういう考え方もあるのか」というヒントや考え方を得られる書であることは間違いない。トランプ大統領がパリ協定から離脱を決めたのも、果たして一時の気の迷い、もしくは支持者へのパフォーマンスなのか?本書を読むことで、違った側面が見えてくるのもまた事実である。
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