メニュー

アングル:米国は好況か不況か、支持政党で景況感に大きな差

米国経済のイメージ
10月24日、米国はこれまで大統領選の結果を占う上で景気動向が確固たる手掛かりになってきた。しかし来年の大統領選ではそうはいかないかもしれない。写真はニューヨークのフォックス・ニュースのオフィス前で11日撮影(2019年 ロイター/Andrew Kelly)

[ワシントン 24日 ロイター] – 米国はこれまで大統領選の結果を占う上で景気動向が確固たる手掛かりになってきた。しかし来年の大統領選ではそうはいかないかもしれない。新たに行われた消費者景況感に関する大規模調査で、トランプ氏を支持するかどうかなど政治的性向が違うと景気に対する見方が大きく異なっていることが明らかになったためだ。

調査を行ったのはデータ分析会社モーニング・コンサルト。消費者景況感に関する著名な統計「ミシガン大消費者信頼感指数」と同じ5項目についてオンライン経由で2年近く調べたが、対象者は月約21万人とミシガン大指数の同500人程度を大幅に上回り、政治的性向に関する質問も含まれている。

23日公表された初の調査結果では政治的性向によって回答に非常に大きな食い違いがあり、景気動向が2020年の大統領選にどう影響するかを読み解くのが難しくなりそうだ。

有権者は経済について低失業率や貿易紛争など同じ事実を目の当たりにしている。調査では全体の信頼感指数は108で楽観と悲観の分岐点となる100をわずかに超えたが、トランプ氏支持層が136とはるかに楽観的だったのに対して、非支持層では88と大きな差が生じた。

景気認識についてはどのメディアを視聴・購読するかでも差がみられた。景気の現状に関する指数は、保守派寄りのフォックス・ニュースの視聴者では139で、トランプ氏に批判的なMSNBCの視聴者では89だった。ニューヨーク・タイムズの読者は107、フェイスブックとツイッターでニュースを読む層はそれぞれ110、112だった。

調査結果は年齢、人種、性別などで比重を設定され、全国レベルの代表性を持つように調整される。調査は継続中だ。

モーニング・コンサルトのアナリスト、ジョン・リア氏は、失業率の記録的低下や低インフレ、ほどほどに鈍い賃金伸び率などの要因は従来は大統領選の結果を予想する上で役立ってきたが、「基調的な経済情勢と政治的傾向を峻別することが重要だ」と指摘。消費者信頼感とニュースの受け止め方には隠れた関係性がありそうだとした。

強まる政治的性向

このような調査は各項目の間に因果関係を打ち立てるものではなく、例えば情報を手に入れているメディアが景気認識を左右するのか、政治的なスタンスが視聴するメディアを決めるのかは不明だ。しかしこうした各要因の関係の解きほぐしに着手する基礎となる。

とりわけトランプ氏は経済を巡る政治的に影響された見方によって政局を大きく変えてしまったとみられているだけに、こうした因果関係の分析は重要だろう。

ミシガン指数も1980年にレーガン氏、2008年にオバマ氏、16年にトランプ氏がそれぞれ勝利した3回の大統領選の投開票前後に所属政党に関する調査を実施した。いずれの調査でも所属政党により景気認識に大きな差があり、選挙で勝った政党に所属していると景況感が良く、負けた政党に所属していると景況感が低かった。

ミシガン大調査のディレクターのリチャード・カーティン氏によると、レーガン氏とオバマ氏の場合はこの差が統計的に取るに足りない範囲にとどまったが、トランプ氏では民主党所属と共和党所属の間で極めて大きな74.6ポイントの開きが出た。

カーティン氏は10月初旬のリポートで、トランプ氏が大統領に就任した後も共和党員は成長に楽観的で民主党員は景気後退を見込んでいる状況が続いていると指摘。従来は消費者景況感が良好だったり改善したりすれば現職に有利に働き、景況感の低迷は挑戦者に追い風となっていたが、「最近は政治的性向が強まり、関連性が失われるかもしれない」という。

FRBも苦境に

政治的性向と景況感の関連性の変化や政治的性向の実体経済への影響を心配しなければならないのは政治アナリストだけではない。

消費者の景況感や景気見通しに関する調査は経済予測に使われ、特に米連邦準備理事会(FRB)は消費行動やインフレ動向、消費者景況感の将来の動きなどを見極める際に消費者景況感調査に頼っている。

景気に関する見解が実際の経済の動きではなく政治的な信条で決まるのであれば、こうした項目について分析する上で問題になる。

モーニング・コンサルタントのリア氏は、景況感が良好であれば消費者は将来の見通しが明るいかのように消費を続けることがあり得るとみている。消費者は理由如何に因らず「楽観的に感じれば景気を支え続ける」という。

一方、消費者景況感と実際の消費の関係は乏しいとの調査結果もある。プリンストン大のアティフ・ミアン氏とシカゴ大のアミール・サフィ氏は2017年の研究で、2016年11月の大統領選ではトランプ氏支持層で景気認識が大幅に改善したが、選挙後にこの層で実際に支出が大きく増える状況は確認できなかったと分析した。