物流の「2024年問題」で消費者に商品が届かない事態を避けようと、小売りや食品メーカーがさまざまな対策を進めている。ローソンは長期保存できるよう、おにぎりを冷凍。アサヒグループホールディングス(HD)は次世代コンピューターを活用して荷さばきの最適化を目指すなど各社は打てる手を総動員している。
ローソンは昨年12月、店舗へ弁当や総菜などを運ぶチルド配送の深夜便と午前便を集約し、1日3回から2回に減らす試みを始めた。今年一部で販売を予定するのが冷凍おにぎりだ。賞味期限が約4カ月と長く、計画的な製造や配送ができる。担当者は「配送を1日1回以下にできる可能性がある」と見込む。かつサンドなど他商品の冷凍も検討中だ。
ローソンは減便で空いたトラックを活用し、残業規制に抵触しない範囲でワタミの食事宅配サービスの配送代行を一部で始める。ファミリーマートもコカ・コーラボトラーズジャパンのトラックを利用するなど業種の垣根を越えた連携が広がっている。
スーパーでは、ライフコーポレーションやヤオコーなど同じ地域に店舗があるライバル同士が物流業者への発注時間などで協力。日本百貨店協会は、物流業者による深夜の検品作業を廃止するなど旧弊を改める統一基準を作成した。
食品・飲料業界では、アサヒグループHD傘下のアサヒグループジャパンが、物流システムを手掛けるネクストロジスティクスジャパンと、情報処理速度などが優れる量子コンピューターを使用したシステム「NeLOSS(ネロス)」による実証実験を進めている。
効率的に荷物を積めば、輸送にかかるトラックの台数は少なくなる。ネロスでは、荷物の種類や量、トラックの大きさなど多くの情報を基に、カナダにある量子コンピューターが計算。荷物とトラックの最適な混載の組み合わせなどを提示する仕組みだ。「ベテランの配車マンでも約2時間かかる作業を、ネロスはわずか40秒でできる」(ネクスト社の梅村幸生社長)という。
伊藤ハム米久ホールディングスなども、ドライバーが商品の陳列などを「付帯業務」として行う商習慣の見直しなどを目指す。味の素やハウス食品グループ本社などが設立した物流企業F―LINEでは、関西―九州のフェリーを使用した海上輸送に取り組む。