【北京時事】新型コロナウイルスの感染拡大に伴う中国経済の悪化が、16日に公表された主要経済統計から一段と鮮明になった。中国当局は厳格な「ゼロコロナ」政策を続けることで早期に感染を収束させ、経済をV字回復させるシナリオを描くが、先行きには不透明感が漂っている。
国家統計局が公表した4月の小売売上高と鉱工業生産は、いずれも前年を下回った。両指標がともに前年割れとなるのはコロナ流行初期の2020年3月以来2年1カ月ぶり。自動車生産台数が落ち込み、日用品や宝飾品の販売が減るなど、影響が経済全体に及んだ。
中国では3月に入り感染が急拡大し、上海市など主要都市で相次いでロックダウン(都市封鎖)が導入された。4月下旬以降は首都の北京市でも外出規制が強まっており、5月以降に景気がさらに悪化するとの見方も出ている。
ただ、中国は流行初期に、感染が拡大した湖北省武漢市の人流を徹底的に抑制し、経済を回復させた「成功体験」がある。
第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは、政策変更に伴う政治的な負担なども踏まえると「中国当局が(ゼロコロナの)戦略転換に動く可能性は極めて低い」と予想。当局は当面、感染抑制に向けて人流抑制策をさらに強化するとともに、インフラ整備といった経済政策などをフル活用し、さらなる景気の悪化を食い止める「二正面作戦」を展開していくものとみられる。