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メチャカリ、エアークローゼットに続き大丸松坂屋も!ファッションサブスクはアパレルを救うか

市場縮小でアパレル業界が苦境に陥る中、毎月定額で洋服をレンタルするサブスクリプション型ファンションレンタル業態が勢いを増している。専門企業の他、アパレルメーカーや百貨店も参入するなど、「売り切り」から「所有せず着まわしてもらう」へのシフトが加速する。消費動向の変化を絡め、その可能性や今後の展望について検証する。

SEE D JAN/iStock

「売り切り」から「所有せず着まわしてもらう」へのシフトが加速

 エアークローゼット(東京都/天沼聰社長)がけん引するファッションのサブスクモデルがいよいよ定着フェーズに入った。現在までに大小の専門企業の他、アパレルメーカーや百貨店も参入するなど、「売らないアパレル」をめぐる攻防が熾烈になりつつある。

 好みの洋服は、渋谷や原宿など流行最先端エリアのブランド店舗で購入するーー。 それが、おしゃれを追求する者にとっての喜びであり、価値だった。ところが、ユニクロの普及で、安くて高品質な洋服をどこでも買えるようになると、その役割は徐々に変質する。つまり、清潔感があって、見栄えさえ良ければ、過度にデザインやブランドにはこだわらないという考え方へのシフトだ。

 加えてZOZOTOWNによってお気に入りの洋服をネットで買うことが当たり前になると、「ブランド」の価値はさらに落ちる。お客はネット上で似寄りの商品を探し、比較し、いかに便利に買えるか、いかにリーズナブルかで購買を決める。景気の閉そく感も相まって、そもそもファッションにお金をかけることの意義を考え始めるようになる。

 そうしたファッション業界の流れの中で、2014年に登場したのがエアークローゼットだ。できるだけコストをかけず、一方でいろいろな洋服を試してみたい。潜在的に高まっていた消費者の洋服に対する新たな需要にマッチした同サービスは、爆発力こそなかったが徐々に浸透。いまや会員数は50万人に迫る勢いでファッションサブスクのパイオニアとして一定のポジションを確立しつつある。

 着々と社会に浸透しつつあるが、課題はある。基本、毎月回収し、クリーニングして再利用するため、気になる消費者にとってはやはり敬遠する要因になるということ。事前に好みを聞いた上でコーディネイトするが、相性がよくない可能性があることなどだ。逆にいえば、こうしたすき間を埋めることが、後発のアパレルサブスク参入企業の狙い目にもなる。

ファッションサブスク企業の現状

メチャカリは新品のサブスクが特徴。自社で二次流通まで持つからこそできる取り組み

 人気ブランド、アースミュージック&エコロジーなど多くのアパレルブランド、雑貨、飲食店、ホテルを展開するストライプインターナショナル(岡山県/立花隆央社長)。同社が15年から展開するメチャカリは、中古品ではなく、新品を貸し出すのが特徴だ。返却された衣服は検品の上、古着として直営サイトやZOZO USEDで販売される。自社商品のムダのない流通エコシステムを確立しているのだ。

 すでに会員数は2万人を超え、損益分岐点を超えるといい、さらなるサービスの拡充で業界トップのエアークローゼットを追う。メーカー単独でのサービスのためブランドが限定されることがネックだが、同社ブランドのファンにとってはメリットの大きいサービスといえるだろう

 大丸松坂屋百貨店(東京都/澤田太郎社長)は2021年3月にファッションサブスクに参入した。これまでに築いた出店ブランドとの信頼関係を生かした魅力的な商品ラインナップが強みという。リアルではないものの顧客コミュニケーションにおけるきめこまかさやも他社にはない。月額1万1,800円で3着までレンタルでき、そのまま購入もできる。5年後には20万着で会員数3万人、売上高55億~60億円をめざすという。

 エアークローゼットがまだ手を付けていない男性用のファッションサブスクサービスではleeapが奮闘している。小売からシフトし、16年からメンズに絞ったアパレルサブスクを展開。会員数は非公開だが、男性のファッション特性を考え抜いての定額制とあって、一定の支持を集めている。

 業界トップのエアークローゼットは、メンズへの展開について「ニーズはある。体制が整えば」としっかりと視野に入れており、同社が参入となれば今後メンズのサブスク市場もさらに活性化しそうだ。

ファッションサブスクはどこまで広がるのか

 海外に目を向ければ、会員数が1000万人を超える規模のアパレルサブスクもあり、この領域の伸びしろはまだまだある。

 内閣府の「令和元年度国民生活に関する世論調査」(2019年8月)によると、「できるだけモノを持たない暮らしに憧れる」について51.9%が「当てはまる」としている。ファッションはトレンドや季節が購買を後押しする。逆にいえば、年間に何度も購入を迫られているともいえる。

 定額ならそもそも選ぶ必要がなく、コーディネイトもしてもらえ、居住空間をモノが占有することもない。アパレルサブスクは、その意味で「手間」と「時間」と「空間」を買うことでもあり、情報過多で持たないことに価値観を感じる消費傾向の時代にフィットしたサービスといっていいだろう。

 

サブスク型ビジネスの生命線とは

 アパレルサブスクに限らず、サブスク型のビジネスモデルは顧客との関係をいかに構築するかが生命線となる。言い換えれば、毎月のやりとりをデータ収集し、それを解析し、顧客へしっかりとフィードバックする。その質の高低が、継続してもらえるか否かの分岐点となるということだ。

 安定した収益が確保できる一方で、設定した金額が顧客の期待値を上回らなければ、固定の収益は一転ゼロになるシビアなモデル。その意味では例えば百貨店業態からの参入は、接客面の強みをうまく転用できれば勝算はあるし、その他の業態からの参入でも固有の強みを顧客との関係性構築にうまく転用できれば十分に勝ち目はあるだろう。

 持続可能なビジネスモデルが求められる時代にマッチするサブスク型サービス。今後は、アパレル以外の企業の参入が増加し、市場のさらなる拡大とともに、服の品質以外の部分でいかに強みを発揮できるか問われる、群雄割拠の時代へと突入していきそうだ。