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教えて本多利範さん!「ECの浸透で流通の垣根がなくなる時代が来る」

EC市場が拡大している。グローバルな観点では、日本でのECの浸透度はまだ低いが、伸長傾向は顕著だ。これを受け、食品スーパー(SM)やコンビニエンスストア(コンビニ)など小売各社もECを強化。本多コンサルティング(東京都)の本多利範氏は「とくに食品をめぐっては、ネットスーパー、EC通販、デリバリーの垣根がなくなり、生活者は必要な商品をその時々の都合に合わせて買う時代が日本にもやってくる」と予想する。
本稿は新連載「教えて本多利範さん!」の第3回です。

ArtistGNDphotography/iStock

日本のEC化率は世界4位

 2022年度の世界のEC市場規模は対前年度比7.5%増の713兆円に上る。国別市場規模のトップ10の構成比に目を向けると、1位は359.35兆円の中国が50.4%、2位は131.19兆円のアメリカで18.2%。上位2国で全体の7割のシェアを占める。3位は32.8兆円のイギリスだ。

 日本は22.74兆円で4位である。グローバルの基準からすればまだ低いが、ECは利便性が高いため、今後も伸びるであろう。

 日本のECを分類すると、モノを販売する「物販系分野」、旅行の予約やチケット販売などの「サービス系分野」、電子書籍やオンラインゲームといった「デジタル系分野」の3種類がある。デジタル系分野の一部では前年実績を下回っている分野はあるが、総じてECは今後も伸びるのは間違いない。

 このうち物販系(B to C)をみてみると、コロナ禍を通じて大きくEC化率が上昇した。最新データの22年度の実績は、対19年度比で9.13ポイント増と大きく上がっている。

 次に物販系分野について、商品分類別のEC化率に着目してみる。トップは46.20%で「書籍、映像・音楽ソフト」、次いで「生活家電、AV機器、PC・周辺機 器等」が38.13%、「生活雑貨、家具、インテリア」が28.25%、「衣類・服装雑貨等」が21.15%と続く。食品については市場規模自体が大きいものの、EC化率となると3.77%と極端に低いのが現状だ。依然として実店舗で食品を買っている人が多いと言える。

 なぜ食品のEC化率は低いのか。たとえば「りんご」が欲しい場合を考えると、多くの人は自分の目で見ておいしそうなものを選びたい気持ちがある。逆に言えば、ECでは品質を確認する作業を他人に委ねるため、不安な心理が働いているのではないか。

流通各社は食品ECを強化

 生活者にとってECを使うメリットとは何だろうか。自宅で買物ができるため「時間が節約できる」、重量物、かさ張る商品が自宅まで届くので「荷運びが楽」という声が多い。ほかにも多くの商品の中から欲しいものを選べて価格比較も容易という「利便性」、また近くの店では手に入らない商品を買えるという点にも魅力を感じているようだ。

 次はデメリットについてだ。前述の通り、自分の目で「鮮度を確認できない」のほか、「注文から届くまで時間がかかる」のように、手に入るまで時間がかかるところに不便さを感じる人もいる。一方、ECを運営する側からすれば、最も大きいのは単価が低く、物流拠点への投資など「利益とコスト」のバランスが悪いことだ。

 メリット、デメリットはあるが、ECは拡大市場であり、ネットスーパーに力を入れる流通企業が目立つ。大手ではセブン&アイ・ホールディングスの「イトーヨーカドーネットスーパー」、イオンの「おうちでイオン イオンネットスーパー」、西友の「Rakuten Seiyu ネットスーパー」、イオングループの「Green Beans」などだ。ほかにも地方チェーン企業の参入も相次ぐ。

 さらに大手を中心に、積極的な投資が見られ、各地で大型の物流配送拠点が増えている。

 センター拠点型のほか、店舗拠点型でサービスを提供する企業も多い。たとえばイオンリテールは24年1月現在、関東、北陸信越、東海、近畿、中四国の280店舗で展開している。ライフコーポレーションについては、受注可能件数を拡大させるべく、店舗併設型ストアの設置にも乗り出している。

 小商圏型のビジネスで支持を得るコンビニエンスストア(コンビニ)にも動きがある。「セブン-イレブン」は、地域限定で店舗近隣に 30分で届ける「7NOW」を稼働。「セブン-イレブン」の商品を最短30分で届けるというものだ。現在、北海道、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、広島県の一部で対応するが、今後もエリアを拡大する方針という。

 現状、食品のEC化率が低い日本だが、今後、ネットスーパーやネット通販、CVSの配達サービスが浸透する流れは強まる。他方、食品を強化するリアル店舗のドラッグストア、また「Ùber Eats」「出前館」といったデリバリーサービスも生活者の主な選択肢になっていく。

 日本ではそれらEC、リアル店舗、各種サービスの垣根がなくなりつつある。生活者はその中から、生活に必要な商品をその時々の都合に合わせて選ぶ時代が来るだろう。

本多利範さんの書籍「お客さまの喜びと働く喜びを両立する商売の基本」

本多 利範 著
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行年月:2022年03月
ページ数:276
ISBN:9784478090787

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