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アングル:コロナ感染経路、スマホ使った「接触追跡」の最前線

新型コロナウイルスのイメージ
4月14日、新型コロナウイルスの感染経路を把握し、感染拡大抑制に役立つスマートフォン・アプリの世界的な開発競争が展開されつつある。画像は、新型コロナウイルスのイメージ。ダブリンで作成、2月18日提供(2020年 ロイター/NEXU Science Communication)

[オークランド(米カリフォルニア州) 14日 ロイター] – 新型コロナウイルスの感染経路を把握し、感染拡大抑制に役立つスマートフォン・アプリの世界的な開発競争が展開されつつある。

スマホアプリの2大メーカーであるアップルと、アルファベット子会社グーグルは前週、感染者の近くにいた人を見つけ出して本人に通知することができるアプリを共同開発すると発表。「コンタクト・トレーシング(接触追跡)」と呼ばれる技術への注目が高まるきっかけになった。

携帯端末を新型コロナ対策に使う方法

スマホや一部の携帯端末は、基地局やWiFi、GPS(全地球測位システム)などを介して、位置情報を送り続けている。スマホの場合、近距離無線通信技術のブルートゥースで近くの端末と接続もできる。

こうした位置情報は、個人もしくは集団が外出禁止命令を守っているかどうか、監視する手段となり得る。また、ウイルスを保持する人と接触したかどうかを見極め、検査や隔離の必要性を判断することにも使える。

スマホのメッセージ機能を利用すれば、体調の聞き取りをしたり、位置情報や身体データを通じた健康状態の「点数化」をしたりすることも可能だ。

スマホを接触追跡に役立てるには

ブルートゥースを用いると、スマホは近くにある他のスマホを識別する。感染者が出た場合、その感染者に近づいたスマホからの識別情報が記録されリスト化されているために、そうしたリストにあるスマホが、持ち主に検査を受けるよう、あるいは自主隔離するよう通知する。

基本的には、スマホを使った接触追跡は、多くの人手を使って患者の渡航記録を聞き取り、さらに接触者に電話したり戸別訪問したりする従来の手法よりも効率的だ。

しかし、ブルートゥースは到底、完璧な対策とは言えない。この技術は、咳をされても特に問題ないような15フィート(約4.5メートル)の距離があったり、近距離でもあっても壁を挟んでいたりする場合でも、スマホに記録が残ってしまう。それでも開発者らは、スマホ同士がいわゆる握手できる距離に近づいたことを正確に判定することが可能になる方法を目指し、鋭意努力しているという。

ブルートゥースは、都会の雑踏のほぼ全員を接触者とみなしてしまいかねないGPSや基地局のデータに比べれば、精度は高い。

これらの方法は今使えるか

シンガポールが世界に先駆け、ブルートゥースを利用した接触追跡アプリ「トレース・トゥギャザー」を開発した。強力な政府の監視システムを感染追跡に転用すると表明して話題になったイスラエルも、「ザ・シールド」と呼ばれるアプリを持つ。また、インドも接触追跡アプリを保有している。

韓国は位置情報データを駆使して接触追跡をしており、台湾は位置情報を隔離の強制に使っている。中国はアプリに基づくさまざまな追跡システムを導入しつつある。

こうした取り組みは、政府系調査機関や公衆衛生当局が主導して世界中で進んでおり、欧州連合(EU)はドイツが音頭を取って加盟国が接触追跡のプラットフォーム開発で足並みをそろえることを目指している。いくつかの欧州諸国は、これと別に独自のアプリ開発も手掛けており、英国も開発作業中だ。

米政府はまだ、アプリ開発を進めていないものの、少なくとも2つの大学の研究グループと、ある特任ソフト開発チームが州や自治体から公認を得ようとしている。

アップルとグーグルは、どのように融合するのか

両社は、このアプリ開発で競争するより協力すべきだという点で意見が一致し、5月に第1弾を公表する予定。バッテリーの消耗など従来のアプリで利用拡大の妨げになってきた課題にも対応する。

さらに両社は年内に、近づいたスマホのアプリ同士が識別情報を交換し、相互のアプリに直接に記録する仕組みをほぼ世界中で統一化する。

プライバシーとセキュリティーに懸念はないのか

もちろんある。最も扱いが難しいのは、接近したスマホの識別記録のリストを見ることができるのは、誰かという問題だ。約1カ月で識別記録を消去すべきだという考えには、ほぼ、だれもが同意する。

アップルとグーグルのアプリでは、接近識別記録は匿名性を維持しており、関係するだれにもリストは漏れないようにする。ただ、「政府」だけは、検査で陽性だったと知らせてきた人が本当にそうだったかを確認する必要があるため、接触識別記録リストにアクセスせずに、感染者を特定できるようになっている。

一部の政府当局者や技術者は、接近識別記録のある全てのスマホを一元的にデータベース化するのが好ましいとしている。システムの設計や管理が楽だからだ。

一方、プライバシー保護団体からは、そうしたデータベースがハッキングの温床になったり、「政府」に恣意的に乱用されたりする危険性があるとの声が出ている。

アプリを通じた接触追跡への協力、義務化されるか

国・地域単位でアプリ導入を義務づける動きは、まだ見当たらない。だが、いくつかの職場や工場などはいずれ、そこで働く人にアプリを強制する可能性がある。

アップルとグーグルは、アプリはあくまで利用者に自発的に受け入れてもらう必要があると説明する。しかし、広く普及しなければ効果は発揮できない。接触追跡で相応の成果を出すためには、1つの国で少なくとも利用率が6割に達することが、不可欠だとの専門家の見方も出ている。