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1台3役の複合型に、倉庫用のサブスクも 小売の裏方業務を担うサービスロボットが続々登場

人手不足の解決策として、ロボットを導入するケースが増えてきた。清掃やピッキング作業などを中心に、人と協働するロボットの活用が各社で模索されている。本稿では、昨年12月に開催された『2019国際ロボット展(iREX2019)』で出展していたサービスロボットを取り上げる。 

24時間365日稼働する複合型サービスロボット

オムロンの複合型サービスロボット

「労働力不足をカバーするためにロボットを導入しても、最初だけは使ったものの、それ以降は眠っているという話をよく聞く」

 そう話すのは、オムロンソーシアルソリューションズ(東京都/細井俊夫社長)の担当者だ。

 同社は、1964年の「世界初の電子式自動感応信号機を開発納入」から今日に至るまで、社会の変化をいちはやく感じ取り、人々が安心・安全・快適に生活できるソリューションを提供してきた。人手不足が顕著な流通業界からの問合せも多く、冒頭のケースはその一例だ。

 たとえば掃除ロボットは単機能のものが中心で、1日の稼働時間が限られる。眠っている(稼働していない)時間が長くなると、少しずつ使用者の関心も薄れていき、やがて使われなくなってしまうのだという。もちろんこれは個人向けの話ではなく、法人向けの話だ。

 そこで開発が進められたのが、「清掃」「警備」「案内」の3つの機能をもち、36524時間稼働可能な複合型サービスロボットである。

「専門的な知識のない人でも操作できるようにした」(同)

 ロボットの走行ルートは、手押しでルートを覚えさせるだけで設定完了。あとは、作動開始時刻を設定するだけだ。重量は85㎏あるが、女性や高齢の人でも扱いやすいようにパワーアシスト機能を備えている。走路上に障害物があれば、センサが検知して迂回走行する。急な飛び出しがあったときには緊急停止。人間だと、うっかりぶつかってしまうような透明なトビラやガラス面があったとしても、超音波で障害物を判別するから、安心だ。

 自動充電機能を搭載しており、ロボット自身がバッテリー残量を判断、バッテリーが残り少なくなると自動的に充電ステーションに戻り、充電を開始する。

 ロボットの上部には、360度撮影可能なカメラが搭載されており、稼働中は撮影可能。清掃にしても、警備にしても、ネットワーク環境があれば、スマートフォンやタブレットから稼働状況を随時、確認することができ、万一、不審者を見かけたときには、遠隔操作により、声をかけることもできる。

 本体前面に取り付けられた21.5型ディスプレイ(横32.8㎝×縦43.7㎝)では、施設内の案内図やイベント情報、動画コンテンツの再生などができ、清掃、警備以外の時間には、案内役としても活躍が期待できる。

 この複合型サービスロボットは、20205月より提供が開始される予定だ。

 

実用化に向けロボット活用現場のニーズを取り込む

NEDOのプロジェクトでTHKがロボットシステムを提供

 

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクトとして、「人と協働して軽作業をするロボットプラットフォームの開発」に取り組んできたTHK(東京都/寺町彰博社長)。同社では、産業用に用いられる部品群をコアとして、小型・軽量の 「SEED Driver」をはじめとするサービスロボット向けRT(ロボットテクノロジー)システムを提供している。そのなかで、トラックから商品を倉庫に搬入する際に、人に代わってその作業を担うロボットの試作に取り組んできた。

「一定レベルのものになってきたので、実用化に向けての現場のニーズを引き出すために、今回、出展した」(担当者)

 四角い形状で堅いものと、柔らかく形が安定しないもの、それぞれをつかむための2種類のハンドを備えており、前者であれば2㎏、後者なら500600gまでを、指定された棚に収めることができるという。また、段ボールや折りたたみコンテナに入った状態であれば1215㎏まで搬送できる。

「現在のところ、納品作業の初心者と同じくらいのスピードと精度だが、平均的なスキルをもった人のレベルまでは引き上げられる」(同)

 数年内のサービス提供をめざしているが、現実的な環境のもとでの実証実験を実施する場がないのが課題だという。

 

月額制のロボットサービスが登場

 物流波動や倉庫の計画に応じて、倉庫内のレイアウトを変更することなく、必要なときに、必要な分だけ利用できるロボットサービスも登場している。

 中国のSyrius Roboticsが開発し、日本国内では三菱商事ロジスティクス(東京都/藤咲達也社長)が代理店となって展開を図る、月額制倉庫ロボットサービス「Roboware」だ。

 指示を受けたロボットは、受け取りおよび配送のために指定された棚へ移動する。バーコードスキャンシステムとディスプレイを備えており、近くにいるスタッフが、指示された商品をピッキングし、カゴの中に入れる(あるいは、その逆の作業も可能)。そこでロボットは、次の目的地に向けて移動を開始する。これまでは人が棚から棚へ走り回って作業していたものだが、その移動部分をロボットが代行するというイメージだ。

 ロボットにはセンサ、カメラが搭載されており、人が近づいてきたり、障害物がある場合には、検知して、迂回したり、止まったりして、危険を回避する。19年にグッドデザイン賞を受賞しており、見た目もスタイリッシュ。右折、左折時にはウインカーを点滅させる。

「商品の種類にもよるが、6台以上、稼働できる倉庫スペースがあれば効果をあげられる」(担当者)という。