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Retail AI永田洋幸CEOが”出展者目線”で分析する「NRF2024」の潮流とは?

ニューヨークで毎年1月に行われる小売業界の一大イベント「NRF Retail’s Big Show」が今年も開催されました。全米小売業協会(NRF)が主催しており、リテールトレンドの最前線ともいえる場です。数年前よりわれわれトライアルグループも出展しており、今回は出展企業の目線で見たNRFの全容をレポートします。

「実店舗回帰」のトレンド鮮明に 注目の展示は?

 今年のNRF114116日の計3日間開催されました。ブース出展は1000社以上、期間中の来場者は3万5000人にも上ったといいます。小売関係者はもちろん、消費財ブランドやリサーチャー、教育機関の関係者など多種多様なゲストが世界中から訪れました。

 全体的にはやはり、「生成AIの活用」が議論の的になっていました。ただ、過去からの変遷を踏まえて見ると、私が最も肌で強く感じ取ったのは、コロナ禍を乗り越えての「実店舗への回帰」という潮流でした。

 ここ数年間、世界の小売市場はテクノロジーの活用に加え、「新型コロナウイルス」という共通の課題に直面してきました。そのため直近のNRFでは、オンラインショッピングを前提にした新機能やメタバース空間での売買など、非接触・非対面を叶えるサービスが目立っていたように思います。そもそもNRF自体、コロナ禍の20年と21年はリアルでの開催はありませんでした。

 しかし今年、人々はパンデミックを乗り越え、コロナ前の生活様式に戻りつつあります。そこで小売業が再度見直しをかけたのが「実店舗のあり方」です。

 コロナ禍では、オンラインで大体のことが完結できるということが判明したと同時に、リアルでないとできないこと、体験を享受しきれないことも当然あると感じた人も多いのではないでしょうか。実店舗に足を運んでもらい、そこでどんな体験をお客さまに提供するか、リアルならではの課題をどう解決するか。小売側もそんな意識を強く持つようになったと思います。

 そうしたなかで印象的だったのは、ショッピングカートの展示が以前に比べ圧倒的に増えていたことです。トライアルグループも以前より決済端末付きのショッピングカート「Skip Cart®️」を開発・提供しているのでこの分野の動向は私も常にウォッチしていましたが、これほどまでにプレイヤーが増えてきているということに時代の変化を感じました。

 一口にカートといっても、その機能や特長はさまざまでした。クレジットカードや指紋での個人認証を行っているカートもあれば、店舗の天井部にある2次元コードを読み取ることで位置情報を把握し商品へのナビゲーションを行っているカート、さらにはChat GPTを活用しレシピや買物リストなどのレコメンドを実現するという先進的なカートも見られました。

商品追跡システムを備え精算ミスを抑制するソリューションを提供する、アイルランドのeverseen社の展示ブース
昨年のNRFで注目を浴び、小型店を中心に米国内でかなり普及を見せている次世代セルフPOSレジ

 一方、コロナ禍で爆発的に浸透したセルフレジは、以前より展示数が減ったように感じました。スキャンミスや会計漏れなど、非接触・非対面ならではの課題がまだ残っており、とくにアメリカでは万引きにつながるリスクが非常に高いのが懸念点となっています。企業によっては徐々に導入数を減らしていく方針をとるところもあるようです。

 無人店舗の実現・普及は長年注目されていますが、これらの不安材料払拭のソリューションとしてラストワンマイルなどの市場や防犯系のサービスがこれから伸びてくるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

サステナブルな店舗運営のために……トライアルがNRFでアピールしたこと

トライアルグループの出展ブースの様子

 さて、われわれトライアルグループは今回のNRFで「店舗運営の自動化・省人化」に関するデバイスを主に発表しました。先に述べたように、世界的な潮流として実店舗への回帰があり、それは日本でも同じことが言えます。

 実店舗の価値を向上させようとしたとき、お客さまへより良い店舗体験を届けるために何をするかを考えることは非常に大事なテーマですが、「サステナブルな店舗運営」を志向することも同じくらい重要だと私は考えます。

 国内の労働人口減少という社会問題に直面しながら、この先数年、数十年とお客さまに便利な買物体験を安定的に提供するためには、”人が介在しなくても問題ない仕組み”をつくっていかなければなりません。ただしこれは、「雇用を減らす」ということではまったくありません。あらゆる業務を効率化することで削減できる作業は削減し、それで浮いた時間を新しいアイデアを考える時間に充ててもらうなど、生身の人間しかできない分野に取り組むリソースを増やしていくという方向性の話です。

 今回は東芝テック様、日本電気(NEC)様、フクシマガリレイ様とともに共同出展をしました。3社ともリテールDXの推進をともに行うパートナー企業です。これまでトライアルが開発してきたスマートショッピングカート「Skip Cart®️」や、店内デジタルサイネージ「In Store Signage™」をはじめ、東芝テック様の不正検知セルフレジやNEC様の顔認証技術を用いたセルフレジ、フクシマガリレイ様のIoTクーラーなどを一堂に集め展示しました。

 トライアルは国内208店舗にこれらの機器を計約1万9500台導入しており、さらには月間約400万人の方々にご利用いただいていることから、「世界で最も利用されているスマートストアソリューション※」というメッセージをもってNRFに臨みました。さまざまな技術の実証実験が進む中で、これほど日常生活にリテール×ITが浸透している例は他国を見ても実はそれほど多くないのです。※自社調べ(2023年12月末時点)

 今回の展示ブースは東芝テック様、NEC様と共同で店舗全体のDXとして顧客体験である決済と売場管理の両面で構成されるスマートストアの全体の提案でした。現地の来場者からは、包括的なソリューションの取り組みの評価の声もいただきました。また日本で実際に導入されている実績について具体的な質問も多く、多くの方に関心を持っていただいたと考えています。

 冒頭で述べたとおり、NRFは世界のリテールトレンドの最前線です。あらゆるところに未来の小売業をつくる上でのヒントが隠れているので、まだ訪れたことがないという方はぜひ来年、足を運んでみてください。