労働集約産業である小売業は、昨今の人手不足の影響を真っ向から受けることになる。慢性的な人手不足は解決のメドはなく、小売業は人員に頼らない方法で、店舗の運営を図ることが求められている。そこでキーとなるのがIT投資を通じた省力化。その動きと急所について解説したい。
コンビニエンスストア3社動き出す
厚生労働省によれば、2019年6月の有効求人倍率は1.61倍、失業率は2.3%の低水準。一方、就業者数は6747万人と78ヶ月間連続で増加し、小売業の慢性的な人手不足は危機的な状況を迎えている。
令和10年、つまり10年後の日本の総人口は1億1912万人(対1年比4.9%減)と予測されている。生産年齢人口(15~64歳)は、もっと深刻で6875万人と実に同7.2%減だ。70歳・75歳定年制導入で労働力不足を何とか凌【しの】げたとしても、その期間は令和20年くらいまでしか延びない。
労働集約産業である小売業にとって、少子高齢化、人口減少そこから派生する人手不足は死活問題なのである。
コンビニエンスストア業界では、24時間営業を見直す機運も生まれてきた。
完全な売り手市場となった労働市場において人を確保したいのであれば、最終的には賃金アップしか方法はない。しかし、小売業の生産性は他の業界に比べ、決して高いとはいえない――。さて、どうすべきか?
その解決に向けて、コンビニエンスストア大手3社が動き始めた。
これまでにはない各社各様のアプローチで、省人化省力化に乗り出し、先んじて生産性を高めることに努めている。
では、大手3社は、どんな取組みをしているのだろうか?
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投資は新規出店からIT武装へ
投資は出店からIT武装へ
もうひとつ。人手不足の解決に向けて、小売業の投資の方向性は、「出店」から「IT(情報テクノロジー)武装」にシフトしてきている。
ところが、「IT武装」は、投資額が大きい。「人手不足を補填するためにITに投資したが莫大なコストを投じてしまった。賃金アップで対応すればよかった」という声もあがるほどだ。
実際、小売業の問題解決に向けてリリースされているIT、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)は玉石混交。何に投資すればよいのかは、なかなか判断しづらいところだ。
だからこそ、ROI(回収率)は重要で、まずは採算を考えたい。
投資とは新しい環境下で次の手を打つことであり、投資をしない企業はきっと生き残れない。しかも10年を待たずに小売業を取り巻く環境は間違いなく大きく変わり、従来の手法の多くは通じなくなる。
こうした時代には経営者の迅速な判断も必要なのである。