メニュー

SASの需要予測ソリューションによるアナリティクス経営の実現=ダイヤモンド・リテイルメディア・カンファレンス

Sas井上氏メインイメージ

需要予測の活用で本部や店舗の業務を最適化

 小売業では、物流や店舗、商品部、経営など、それぞれの業務において需要予測を活用することで、業務課題解決、業務効率化、売上向上、コスト削減が可能だ。

 たとえば物流では、欠品回避のための過剰在庫や横持ちによる無駄な倉庫間移動など、一定のリソース確保で繁忙期と閑散期の作業量格差などが余計なコストの原因となっている。

 対して、需要予測を活用することで、必要在庫量の確保、納品予測に基づいた拠点ごとの在庫配置、物流量予測に基づいた配車やリソースの計画、作業量予測に基づいたレイバースケジューリングが可能になってくる。

需要予測の活用場面

 商品部では、売上実績をベースに判断するため品揃え変更や商品入替えが後手後手になり、一律の売場レイアウト/棚割から抜け出せない、販促の効果が計画時点で予測できない、シーズン間際や廃棄回避のための値引きが行われているといった課題がある。需要予測により、需要変化を早めに検知することで、商品入替え、売上最大化のための棚割り作成、販促効果シミュレーションの実現、廃棄ロスと収益確保を考慮した値引きの実施が可能になってくる。

 店舗では、発注が担当者のスキルに依存していたり、顧客対応が必要なのに品出しに掛かり切りになっていたり、必要なインストア加工数とシフトが合わず客数に応じたレジの開放/閉鎖がタイムリーに行われないという問題がある。こちらも発注推奨数の自動算出や発注の自動化が可能になり、品出し作業の計画化や削減、インストア加工計画作成や来客予測によるレジ稼働計画が作成できるようになってくる。

 経営面では、営業計画の精度の低さや部門から上がって来る数字の妥当性が評価できずに着地予測が直近までわからない、現場のムリ・ムダに気づけないという問題がある。これらも需要予測をベースにした経営計画立案や販売予測と部門予算のギャップを一元管理、着地シミュレーションの実現や予実管理の高速化で問題の早期発見が可能となってくる。

次ページは
需要予測を高精度化するポイントは

高精度な需要予測を実現

 需要予測を高精度化するポイントは、新商品への対応や売価・値引き・カニバリの影響、欠品の影響、周辺イベントの影響、季節/天候の影響など予測を困難にする要因を、どう見極めどう扱うかを判断しなければならないことである。

需要予測を活用するためのポイント

 たとえば新商品のケースでは、発売前の第1フェーズで商品の特徴などから類似商品を見つけ、過去の新商品との類似度を判定。これにより類似商品の販売動向を参考に予測値が算出でき、第2フェーズの発売直後では、予測対象の実績波形を用いて過去商品から類似波形を探索。類似波形から合成波形を生成することで予測値を算出する※。第3フェーズである既存品への移行期では、季節要因やイベントなどを織り込んで年間のアップダウンを加味して既存品予測へのスムーズな移行を行う。
(※ 販売期間の経過に応じて、よりフィットする波形を探すことから“ヤドカリ方式”と呼んでいる)

 売価/値引きの影響はなかなか実態として把握するのは難しく、そのため予測精度を悪化させる原因にもなる。そこで、価格弾力性を考慮するなど複数の手法を組み合わせたハイブリッドモデルをつくることで精度を高め、カニバリの影響は無風状態での実績との乖離をカニバリ効果と判断し、そのパターンを抽出し影響度を予測に反映させている。

 季節や天候による変動についても過去の実績を変数として投入することで予測精度が高まる。

 また、周辺イベントの影響を正確に組み込むことが難しく、そのため予測モデルの学習に悪影響を与える原因となる。そこで、イレギュラーな実績を除外することで、その後の予測値が正常となるようにしている。
欠品は販売実績がイコール需要数とはならない。欠品が起こる直前、最終販売時刻の分布から正常と判断できる範囲を割り出す。

世界の大手流通業者がSAS分析ソリューションを活用

 SASの需要予測ソリューションは世界の大手企業でも採用されており、食品大手のネスレでは販売計画の高度化に向けて導入した。取引先の需要予測モデル構築や販促効果シミュレーションの実現、商品ライフサイクルの多様化に対応した仕組みを取り入れることで、高度化を実現した。また、販促効果のシミュレーションも実施し、売価の変更など、シナリオ対応した販促計画作成にも活用している。

 リーバイスはエリアごと、業務プロセスごとの多階層の需要予測を行い、グローバル全体でのサプライチェーンの最適化を図った。これまで35地域に分けて各地域別に運営していた商品管理プロセスを統一し意思決定を標準化、拠点も北米、欧州、アジアの3拠点に集約した。これにより従来の「ヒトに依存」した計画から「統計的根拠に基づいた」計画策定に変更、在庫の可視化と連携を可能にした。

 アディダスは欧州のファクトリーアウトレットを対象にSASソリューションを導入し、収益の最大化に向けた値引きの最適化を実現している。4万アイテムにのぼる商品が対象となり、27カ国に渡る8通貨に対応する必要がある。在庫推移の予測に基づき、値引きタイミングと値引き額を最適化することで、シーズン終了間際の売れ残りを防ぎながら不要な値引きを防止している。

 国内の大手小売業においては、自動補充発注の次のステップとして、欠品を防止しながら納品頻度や品出し頻度を削減することで店舗作業削減に向けた実験をスタートしている。

需要予測クイック診断サービスからスタート

 SASでは小売業の業務改革に向けて、アナリティクスソリューションとコンサルティングサービスの両面から支援することが可能だ。

 そこで、さまざまな課題に対応できる次世代分析プラットフォームや長年にわたる国内外の流通業の課題解決を支援してきたノウハウとナレッジ、短期間・低費用で実施できる予算算出&精度検証サービス「需要予測クイック診断サービス」を提供している。

 SASオープンプラットフォームは、拡張性や信頼性、さまざまな技術に対応できる多様性を備えており、それをベースに探索から予測モデリング、ディープラーニング、フォアキャスティングをはじめとした多彩な分析機能を活用できる。流通業向けの分析ソリューションでは、生産計画や生産効率化など生産管理の可視化から需要予測に基づいた物流管理や物流計画の策定、品揃えや棚割り、値引きなどの最適化、といった販売管理の高度化や自動化が実現できる。すでに国内の大手コンビニや小売、スーパーなどのほか、海外の大手小売業に導入され業務改革への効果を実証している。

 まず、お手持ちのデータから需要予測の運用可能性を短期間・低コストで診断する「需要予測クイック診断サービス」を利用してもらいたい。最短6週間程度で結果をまとめてレポートすることが可能だ。