メニュー

カタログギフトでメタバース!?EC、リアル店舗と繋ぐシャディの戦略とは

ラオックス(東京都/飯田健作社長)傘下のギフト販売大手のシャディ(同)は、6月16日、業界初となるメタバースカタログとなる今夏のギフト商戦向けの「Shaddy Summer Gift 2022メタバースカタログ」を発行した。ギフトとメタバースの親和性とは?シャディの戦略とは何か。

 「店舗以上の拡張性がある」

 シャディがメタバースカタログの開発に着手した背景は以下の通りだ。

 ①メタバースは、小売業にとって不可欠な一覧性・隣接性・視認性に優れており、バーチャル空間において商品カテゴリーを超えたさまざまなアイテムを一目で見て選ぶことが可能。したがって、まるで店舗にいるかのような直感的な「ギフト選び」体験ができる空間を実現できる。

 ②移動中など時間や場所を問わずどこからでもアクセスすることができる利便性も備えている。

 また、同社はカタログギフト専門店で、フランチャイズの「シャディサラダ館」とボランタリーの「シャディ店」を47都道府県に約2200の実店舗を有している。これらリアル店舗と年間12000アクセスがある自社のEC「シャディギフトモール」をつなぐ新たなタッチポイントとして位置づけた。

 「さらに良い体験を実現させるために、満を持して店舗以上の拡張性があるメタバースカタログを立ち上げた。商品を確かめたい、説明を受けたいというときに強みを発揮する非常に重要なタッチポイントである実店舗と、利便性で優れているECとを、メタバースカタログで有機的につなぐ狙いがある」(シャディ・飯田健作社長)

 「Shaddy Summer Gift 2022メタバースカタログ」は、単品やテーマ性のあるカテゴリーで構成されている。その中から気になるものを選んでクリックすると、「シャディギフトモール」の販売価格や商品に関する説明、詳細、配送、のし・包装に関する情報も掲載されている購入画面に移動し、決済・購入できる。

 今後は、メタバース内で決済機能やリアルな接客機能を持たせていく考えで、さらに既存のメタバースプラットフォームなどでも、商品やカタログを展開することも検討していく。

 

カタログのポイントは再会、共体験

戦略説明するラオックス社長、シャディ社長の飯田健作氏

 今回のカタログのテーマは、「再会、共体験」。「シャディギフトモール」のメルマガ購読者を対象にした今年の夏の過ごし方に関する調査の結果によると、今年は昨年よりも外出したり、人が集まる機会が増えることが期待でき、また久しぶりに会う良い機会に、贈り物を通して感謝の気持ちや再会の喜びを分かち合いたいという様子がうかがえることから設定した。

 このテーマに沿って、夏に贈り、共に楽しみたいサマーギフトをフルラインナップで展開する。品揃えのポイントは以下の4つ。

思い出語るアウトドア

この夏みんなで集まり、コロナ禍で会えなかった期間の孫の運動会や学芸会などの思い出を、映像を見ながら語り合う追体験の場にするために、思い出の映像を屋内外で使えるプロジェクターや、BBQグルメ、花火など外で賑やかに楽しめる商品を揃えた。

子どもも大人も楽しいサマートイ

サマートイの需要が例年に増して高まっている傾向にあり、家庭用プール、ウォーターガンなど人気アイテムや、いま注目されているスケートボード、キックボードも揃えた。

また近年、一昔前に流行したボードゲームへの人気が再熱しているため、子、親から祖父母まで三世代が一緒になって夏の思い出として楽しめる昔懐かしいアスレチックゲームや人生ゲームなども投入している。

③贅沢グルメ・スイーツ

みんなで集まる機会だからこそ贅沢なひとときを楽しみたいという声に応えて、国内にとどまらず、海外でも品薄を招いている希少和牛をはじめ、リッチなティータイムが楽しめ、目と舌を同時に喜ばせる贅沢スイーツなど、テーブルを豪華に彩るグルメを数多く揃えた。

和牛ニーズの高まりを意識し、「和牛苑」では、「松坂牛」、「神戸牛」、「近江牛」の三大和牛と、「土佐あかうし」、「尾崎牛」といった希少和牛をラインナップ。年間700万個が売れた大ヒット商品「ザ・スウィーツ キャラメルサンドクッキーも投入した。

シャディ限定の健康コラボギフト

コロナ禍にともない、相手の健康を気遣うギフトの需要が高まっている。そこで、健康を習慣化できるギフトをコンセプトに、メーカー各社横断のコラボレーションを実現し、朝食・軽食に最適な商品を組み合わせたシャディ独自のギフトセットを提供する。具体的にはカゴメの健康ジュースと伊藤ハムの減塩ハム、日清オイリオのアマニ油とアマノフーズの味噌汁といった組み合わせがある。

リテールイノベーションを加速!

 こうしてコンテンツを充実させ、需要を喚起し的確に取り込みながら、メタバースにおいては新規顧客の獲得をとくに意識せず、実店舗やEC誘導する入口として機能させ、集客増や売上拡大を期待している。

 メタバースという新たな武器を手に入れたことで、今後はさらに取扱商品を増やし、およそ2000社に及ぶ取引先とも連携して新たな物流網の構築も視野に入れ、体制整備も進めていく。

 シャディは2026年に創業100年を迎える。年間総発行部数3700万部のカタログをはじめ、店舗網、ECで顧客へリーチするなかで、次の100年に向けて、さらにDXだけではなく、トータルなギフトソリューションを提供するために、リテールイノベーションを加速させていく。メタバースカタログもその一環だ。

 「メタバース元年」と言われる2022年。小売業でも百貨店、アパレルなどを中心に取り組みが進み、実店舗やECとの融合を図ろうとしている。かつて、、ともすれば実像が不透明だったオムニチャネルが、メタバースによる有機的結合で明らかになってきた。

 そこでは全体のスキームのなかで、それぞれの役割を明確にしたうえで、情報システム、物流などのバック機能の拡充も求められ、そして何においても、消費者に向けた新たな価値創造につながる取り組みが必要不可欠となる。その意味でラオックス、シャディの取り組みは興味深いものとなるだろう。