西友(東京都/大久保恒夫社長)と楽天グループ(同/三木谷浩史会長兼社長)は2022年5月28日から、茨城県つくば市で自動配送ロボット(Unmanned Ground Vehicle:UGV)による商品配送サービスを開始する。注文から最短30分で商品が届くオンデマンド配送サービスが実施されるのは国内で初めてのこととなる。
約1000世帯にサービスを提供
西友と楽天グループはこれまでも最新のテクノロジーを活用した配送の実験を重ねてきた。UGVを活用した取り組みでは、21年3月から約1カ月間の期間限定で、神奈川県横須賀市で配送サービスを実施。このときに初めてUGVによる公道走行での配送が実現した。
今回のつくば市でのサービスも横須賀市の実験を踏まえて行われる。UGVの開発は引き続きパナソニックが担当する。5月28日から7月30日までの約2か月間、毎週土曜日につくば駅周辺の約1000世帯を対象にサービスを展開する。「つくば市ではUGVが走れる遊歩道の整備が進んでいる」(楽天グループ広報担当者)ことから、横須賀市よりも大幅に対象範囲を拡大することができたという。
つくば市は楽天グループとパナソニックグループも参画する「つくばスマートシティ協議会」を立ち上げ、UGVでの配送サービスを含む「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の実現をめざしている。今回の実証実験もその一環だ。
遠隔でUGVを操作・監視
配送する商品はつくば駅近くの「西友つくば竹園店」から供給する。配送手数料は110円(税込)。利用者は楽天グループが開発したスマートフォン向け注文サイトから購入商品を選択し、配送場所と時間を指定する。配送枠は11~18時の1時間ごとの合計8便。配送中は利用者がロボットの位置情報を把握することができ、到着するとSMSや自動音声の電話で通知が来る仕組みだ。
配送ロボット「X-Area Robo」(クロスエリアロボ)は、遠隔管制システム「X-Area Remote」(クロスエリアリモート)を使用して遠隔で操作・監視したうえで自動走行する。ロボットには不具合が起こった際に停止する機能を備えているほか、遠隔管制システムにもAIを使った危険予知の機能も搭載。安全面に配慮した設計となっている。今回の実験では保安員がロボットのそばに付くが、「実用化するうえでは、将来的に保安員が必要なくなるようにする」(パナソニックホールディングステクノロジー本部モビリティソリューションズ部部長兼モビリティ事業戦略室エリアサービス事業戦略担当東島勝義氏)とのことだ。
また、時間指定での配送のほか、注文から最短30分で商品を受け取ることができるオンデマンド配送にも初めて対応する。ロボットの公道走行によるオンデマンド配送が実現するのは国内で初となる。
生鮮や冷凍食品も配送可能に
今回のサービスで購入できる商品は、生鮮食品や冷凍食品、総菜などを含む約2000品目。横須賀市での実験の際は、常温商品約400品目の取り扱いだったが、今回は商品の収納部に専用の保冷ボックスを開発し、常温・冷蔵・冷凍の三温度帯に対応したことで、大幅に取り扱い商品を拡大することが可能となった。「いますぐほしいというニーズに対応したオンデマンド配送や、生鮮食品への対応を含め、実用化を見据えたサービスとなっている」(楽天グループコマースカンパニーロジスティクス事業ドローンUGV事業部ジェネラルマネージャー向井秀明氏)
楽天グループは今後も実用化を前提とした安全性の担保やデータの蓄積を重ねたうえで、より広範囲にロボットでの配送サービスを展開していきたい考えだ。「さまざまな小売店舗や飲食店などを含め、街の配送ニーズの多くをロボットが満たせるような社会をめざしていきたい」(向井氏)
少子高齢化が進むなか、商品を運ぶ担い手も減っている。その一方で、「ウーバーイーツ」などのフードデリバリーに代表されるように、モノを運んでほしいというニーズは拡大している。こうしたなか、向井氏は「1人が複数のロボットを監視する体制を構築するなどの工夫で配送コストを抑え、最終的に人より安く運べるようにする。また、ロボットであれば深夜でも気兼ねなく注文できる。こうしたロボットならではの利便性を提供していきたい」と話す。
22年3月には道路交通法の改正案が閣議決定され、今後はUGVの制度化が進む見込みとなっている。配送ロボットが街中を行き交う風景が見られる将来は、そう遠くないのかもしれない。