本連載3回目、4回目では、「AIカメラ」について解説しました。今回から次回にかけては、「AIカメラ」と同様に私たちRetail AIが開発したIoT/AIソリューションの代表的ツールである「スマートショッピングカート」についてお話しします。
レジ待ちが不要となるツール開発が世界中で活発化
最初に、私たちが展開している「スマートショッピングカート」の店舗での使い方について説明します。まず、自身のプリペイドカードでログインします。その後、買いたい商品のバーコードをスキャンしてカゴに入れていき、最後にタブレット内で決済を完了します。「スマートショッピングカート」はPOS機能を有しており、決済をタブレット画面内で完結することで、レジ待ちが不要となる点が大きなメリットです。
レジ周りの顧客体験をシームレスにしようとする取り組みは世界的に始まっています。米国ではアマゾン(Amazon.com)が「Amazon Dash Cart」を展開しており、日本では東芝テックの「ピピットカート」や三井物産の「ショピモ」、イオンリテールの「どこでもレジ レジゴー」など、私たちと類似したツールの導入が進んでいます。
レジ待ちは買物における「最大のストレス」ともいわれています。これが解消されることにより顧客からの支持が高まるほか、コロナ禍では非接触ニーズが伸長していることもあり、無人決済方式の拡大は世界中で不可逆な流れになっています。このようなトレンドを鑑みると、近い将来、私たちが慣れ親しんだ有人レジはなくなってしまうでしょう。
顧客・現場視点での利便性を追求
ここからは、私たちが開発する「スマートショッピングカート」の実績などについて説明していきます。私たちは、2015年から買物カートのスマート化への挑戦を開始し、グループ会社に「トライアル」というリアル店舗を持つ強みを生かして現場で改善を続けてきました。既存店舗にフィットさせることへ主眼を置いたオペレーション・ドリブンの考え方を徹底し、現時点ではシンプルで使いやすいスマートショッピングカートを導入しています。
顧客及び現場視点の改善を積み重ねてきたことにより、「スマートショッピングカート」は多くのお客さまにご支持をいただいています。21年12月の月間利用者数は120万人を超え、タブレットが付属している買物カート(POS機能付き)としては、世界No.1といっても過言ではありません。つまり、「スマートショッピングカート」は世界で最も使われているのです(自社調べ)。
また、導入店舗数は58店舗(グループ外3店舗)、総導入台数6019台、利用率43%、来店頻度13.8%増、レジ人時20%減など、稼働実績、導入効果の双方で高い効果が示される結果となっています。
今回は店舗に来店いただいたお客さま視点を中心としてスマートショッピングカートの価値についてお話ししました。次回は、新世代カートでの取り組み、小売およびメーカーから見たときのメディアとしての価値などについて解説する予定です。
プロフィール
永田洋幸(ながた・ひろゆき)
1982年福岡生まれ。米コロラド州立大学を経て、2009年中国・北京にてリテール企業向けコンサルティング会社、2011年米シリコンバレーにてビッグデータ分析会社を起業。2015年にトライアルホールディングスのコーポレートベンチャーに従事し、シード投資や経営支援を実施。2017年より国立大学法人九州大学工学部非常勤講師。2018年に株式会社Retail AIを設立し、現職就任。2020年よりトライアルホールディングス役員を兼任。