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ハイスピードで出店するドラッグストア 時系列比較でその勢いを見る

店舗データ提供:(株)デジタルアドバンテージ/ロケスマ

出店位置を細かに地図上にプロットし、拡大したり、縮小したり、特定のエリアをクローズアップしたりしていくと、これまで把握していた出店状況とは異なる姿が見えてくる。
自力出店により勢力拡大を図ってきたドラッグストア(DgS)4社の、シェア奪取、新規開拓、そんな気になるエリアをつぶさに見ていく。

※文中の店舗数は各年5月末の数値
地図上、コスモス薬品<>、クスリのアオキ<>、薬王堂<>、Genky DrugStores<

大手同士による経営統合や、中小のドラッグストアチェーンのM&Aにより、勢力を拡大してきたDgSが多い中で、自力出店およびドミナント戦略により、成長を持続しているチェーンもある。

九州・宮崎で創業、九州での圧倒的なシェア獲得をエンジンに中四国から関西・中部に進出、2019年4月に関東での出店をスタートさせたコスモス薬品(福岡県)はその代表的存在だ。

商圏人口1万人をターゲットとした食品強化型の店舗(フード&ドラッグ)を展開。売場面積2000㎡の「メガドラッグストア」を主力フォーマットに、自社競合をいとわず、九州・中四国、関西・中部、関東でバランスよく、年間120店舗ペースの出店を継続している。出店が多ければ、退店も多くなるというのが流通小売業界の通例だが、同社の場合、退店が少ないのが特徴だ。

地盤とする北陸・信越を起点に、関東、東海・近畿に展開、2019年5月に福島県1号店を出店、東北進出も果たしたのが、クスリのアオキを展開するクスリのアオキホールディングス(HD、石川県)。スピード出店によるエリア拡大戦略で規模を拡大してきたが、いままた、足元のドミナントエリア強化にも注力を始めた。

クスリのアオキHDと北陸エリアのトップシェアを争うGenky DrugStores(福井県)も、自力での出店により、勢力を拡大してきたDgSだ。エリアでシェア1位を獲得するまでは新たな地域への出店を行わないという徹底したドミナント戦略をとり、店内レイアウトやオペレーション、品揃えなどを徹底的に標準化し、青果や精肉などの生鮮食品を扱う300坪タイプのレギュラー店を中心に展開を進めている。福井県、岐阜県ではトップシェアを獲得、石川県、愛知県でもトップ奪取をめざして出店を続けており、2021年8月からは新規エリアとして、滋賀県への積極展開をスタートさせている。

他の地域に比べ、少子高齢化が一段と早く進行する東北地方をドミナントに、商圏人口7000人で成立するビジネスを展開しているのが、薬王堂ホールディングス(HD、岩手県)。2018年3月の福島県への出店により、東北全6県への足掛かりを確かなものにした。

これら4社のDgSチェーンの出店状況を時系列に見ていくと、戦国時代の国盗り物語のように、本拠地を起点に、それぞれ版図を拡大してきた様をうかがいしることができる。
2019年から2023年にかけての出店状況を図示したものが、<図1>だ。

図1:DgS4社の出店状況 地図:国土地理院

<図1>を見ると、2019年から2023年の間に、これら4社の空白地帯がどんどん狭められていることがよくわかる。

個別エリアにフォーカスすると、例えば2019年には空白地帯だった静岡県から神奈川県にかけての東海道も、2023年段階では首都圏接続まで目前にところまでたどりついている<図2>。

図2:愛知・静岡県南部の出店状況 地図:国土地理院

それから目を凝らして見るとよくわかるのだが、この2019年から2023年の間に、各地で勢力争いが勃発している。その主役となっているのは、もちろんコスモス薬品だ。

2019年にはクスリのアオキほぼ一色に近かった関東エリアが、2023年にはコスモス薬品色が一気に強くなっている。また北陸地方でも同じような傾向が見て取れる。

茨城県から栃木県にかけての推移を図示したものが、<図3>だ。2019年にはクスリのアオキの姿しかなかったところが、2023年になると、クスリのアオキのあるところには、コスモス薬品がしっかりマークしている。

図3:茨城、栃木エリア 地図:国土地理院

同じような状況が、北陸・富山県でも見て取れる。富山県の売上シェアトップは、5割近くを占めるクスリのアオキだが、このところ売上げが頭打ちになっている。1店舗当たりの推定売上も下降トレンドにある。その一因にコスモス薬品の出店があるかもしれない。

図4:石川、富山エリア 地図:国土地理院

クスリのアオキが追い込む立ち位置にあるエリアもある。福島県への南下を進める薬王堂に対し、同社は北上を続け、薬王堂のドミナントエリアである宮城県、岩手県への出店攻勢を仕掛けている。

薬王堂はこの数年、全店舗数の1割を毎年の出店目標に掲げてきたが、今後しばらくは既存店強化に舵を切るという戦略変更を明らかにしている。クスリのアオキの勢いへの対抗策という面もあるのではないか。

図5:宮城、福島エリア 地図:国土地理院

コスモス薬品、クスリのアオキに加えて、Genky DrugStoresも参戦して、出店を競っているエリアもある。2021年8月、新規エリアとしてGenky DrugStoresが初出店を果たした滋賀県だ。

琵琶湖の東岸、東近江から彦根、長浜にかけての、東海道線、北陸本線沿線で、この3社がお互いににらみをきかせるかのように、店舗を増やしている。

2022年6月には、国道をはさんで200mくらいの距離にある「クスリのアオキ浅井店」(長浜市)、「ゲンキー浅井店」(長浜市)が新規オープンした。琵琶湖の西岸でも、JR湖西線沿線にGenky DrugStoresが出店、3社の争いが展開されている。

図6:琵琶湖エリア 地図:国土地理院
図7:琵琶湖エリア(長浜市近辺) 地図:国土地理院

豊橋市を中心とする愛知県東部も、3社が競う地域だ。JR飯田線沿線の山間部をはじめ、市街地から離れたところの出店が目立つGenky DrugStoresに対し、コスモス薬品は市街地中心、クスリのアオキは両にらみという違いはあるが、スギ薬局、スギヤマ薬品など地元企業が長年、市場を押さえてきたこの一帯も、県外企業からの攻勢にさらされている。

図8:豊橋エリア 地図:国土地理院

クスリのアオキ、コスモス薬品の空白地帯に進出し、勢力争いに加わろうかというところもある。地元企業のクスリのサンロードを交えて、大手チェーンがシェア争いを繰り広げている山梨県だ。2019年時点では未出店エリアだった甲府盆地に、2023年現在、クスリのアオキが3店舗、コスモス薬品が4店舗を展開するようになっている。他の地域と同じように、この2社は互いにけん制しながら出店を進めていくのだろうか。

図9:甲府エリア 地図:国土地理院