ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は2021年7月6日、埼玉県川越市に「ヤオコー川越藤間店」(以下、川越藤間店)をオープンした。同店ではどのような売場づくりをしているのか。注目の総菜・ベーカリー売場にフォーカスしてレポートする。
メーンターゲットはシニア層
川越藤間店があるのは、東武東上線「新河岸」駅から1.1kmの場所で、徒歩では20分程度で到着する。住宅地や農地が広がるのどかな郊外への出店だ。もともとは「サミットストア川越藤間店」があった場所で、建物内には100円ショップやクリーニング店、フィットネスジム、介護施設なども入居している。
川越藤間店がメーンターゲットとするのは、子供が一人立ちした60歳以上の2人世帯。商圏内には単身者も多く住んでいるものの、駅前ではなく住宅地の近くに立地していることから近隣に住むシニア層を中心に幅広く支持される売場づくりに取り組んだ。
魚総菜はフルラインの品揃え
総菜売場では、店内製造したこだわりのメニューや埼玉県東松山市の「デリカ・生鮮センター」で製造した商品350SKUを取り扱い、初年度の売上高構成比は14.7%を見込む。
ヤオコーの総菜売場は、取り扱い商品やカテゴリーに応じてコーナー名がつけられており、一目で見てわかりやすい売場となっている。なかでも注目したいのが、魚総菜を集積した「漁火(いさりび)」コーナーだ。川越藤間店ではシニア層をターゲットとしていることから魚総菜に力を入れ、フルラインで品揃えする。定番の煮魚や焼き魚だけでなく、「するめいか唐揚の南蛮酢」(280円:以下、本体価格)、「広島県産かきフライ」(6個入り398円)などラインアップを充実させた。なお、同店では鮮魚部門でもマグロ関連商品を充実させるなど、構成比をほかの店舗と比較して高めに設定している(具体的な数値は非公表)
鶏肉総菜を集積したヤオコーおなじみの「幸唐(さちから)」コーナーでは、自社製の八方だしを使用した定番の「幸唐 若鶏ももからあげM」(100g当たり128円)を展開するほか、焼き鳥核種をパタゴニア湖塩を使用した塩だれ、鶏ガラと香味野菜仕込みの醬油だれの2種類で展開する。
少量商品も展開
中華・エスニック総菜を集めた「味庵(あじあん)」では、「黒酢肉団子」(298円)、「海老と春雨のタイ風炒め」(298円)、「コク旨♪ぷりぷり海老チリ」(298円)など、アジア各国のメニューを取り揃えた。
また、総菜売場の一部の商品では、多くの量が食べられないシニア層向けに少量商品も準備。「ちょっとがイイネ!!」のシールが目印だ。
オープン限定のフルーツタルトも販売
ベーカリー売場では、朝食で食べる頻度の高い食事パンを強化。「北海道産小麦のもっちり湯種食パン」(4枚切り300円)や「北海道あん食パン」(1斤498円)に力を入れ、個食サイズなど少量目を中心に品揃えしている。そのほか、「セミドライトマト&生ハムマルゲリータ」(500円)などのピザや「【辛】ヤンニョムチキンバーガー」(198円)を中心とするハンバーガーなど、若い世代にも人気が高そうな商品を取り扱い、選ぶ楽しさを演出する。
そのほか、タルトなどのデザート商品も取り扱っており、オープンから7月11日までの期間限定で「フルーツタルト」(1180円)も販売する。
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昨年は、コロナ禍で生鮮食品や加工食品が伸びる一方、日持ちがせず衛生上の懸念もある総菜は各社落ち込んでいたが、最近では売上が回復傾向にある。ヤオコーでは最近の新店を中心に、従業員が対面でお客に取り分けるという限定的なものではあるものの、一部店舗で夕方に総菜のバラ販売を再開しているという。川越藤間店では「まん延防止等重点措置」が出ている関係で現在はバラ販売を行っていないが、タイミングを見て実施したい考えだ。「出来立てを買いたいというお客さまは多く、バラ販売を再開した店舗では支持を得ている」(広報担当者)とのことだ。
総菜が以前のように買われるようになれば、顧客に支持されるうえで総菜の重要性はより高まる。ヤオコーの総菜のラインアップの豊富さや品質の高さ、少量商品も揃える細やかな気配りは、コロナ後も同社の大きな武器となるだろう。