新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大で消費環境が一変した2020年。食品小売業界ではどのような出店や店舗開発が進んだのか。ストア・オブ・ザ・イヤー上位入賞店からその傾向を解説する。
ロピア、ツルヤも!有力店が出店エリア拡大
コロナ禍では、日常の食を提供する「生活に欠かせない存在」として食品小売業の価値が再認識された。緊急事態宣言発令後、一時は店舗開発が滞ったものの、コロナ禍の消費者の期待に応える各社の“珠玉”の店舗が数多くオープンした。
なかでも店舗部門の上位入賞店は、コロナ禍でリアル店舗の価値が今まで以上に問われるなか、強い存在感を発揮した顔ぶれと言える。高い得票数で1位に輝いた「ロピア寝屋川島忠ホームズ店」は、高速出店によって首都圏で急成長するロピア(神奈川県)が関西エリアに進出し業界の耳目を集めた店だ。精肉店出身の強みを生かす精肉部門をはじめとした生鮮3品のほか、プライベートブランドや子会社の輸入貿易会社による直輸入品などで、圧倒的な低価格を訴求し、とくに価格と品質に厳しいともいわれる関西人の心をもがっちりつかんだ。
新規エリアへの進出で言えば6位のツルヤ(長野県)が県外初進出を果たした「ツルヤ前橋南店」も業界の話題をさらった。コロナ禍で“特需”に沸いた食品スーパー(SM)だが、このように有力SMがさらなる出店攻勢を仕掛ける一方、先行きの見えない消費環境下で消費は冷え込むことが予見される。2店の進出は今後の業界の勢力図に起きる波乱の幕開けと言えるのかもしれない。
コロナ禍でネットを通じて買物を済ませる人が急増するなか、リアル店舗ならではの買物体験を追求し高い評価を得たのが、2位のマックスバリュ関東(東京都)の「マックスバリュおゆみ野店」だ。「買物体験型スーパーマーケット」を標榜し、店内随所への対面コーナーの導入や店内調理の生鮮総菜の強化、店内外へのイートインスペースの設置などにより、「時間消費型」で「五感に訴える」店づくりを実践している。
コロナ禍は、人々の健康に対する意識がより高まる契機にもなった。そうしたなか注目を集めたのが3位の「ビオラル丸井吉祥寺店」だ。SM最大手のライフコーポレーション(大阪府)が開発する自然派SMフォーマットの2号店で首都圏初出店を果たした店だ。
イオン(千葉県)傘下でオーガニック商品を中心に扱うフランス発のSM「ビオセボン」も積極出店を進めており、今回19位に「コレットマーレ店」がランクインした。健康提案を主軸としたSMはこれまで大きな広がりを見せてこなかったが、今後は着実に存在感が増していきそうだ。
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