メニュー

写真満載!新中計「GG2022」のモデル店、サミット五反野店の戦略と売場づくりを徹底解説

サミット五反野店の外観

サミットストア五反野店

〒120-0011 東京都足立区中央本町2-26-13
電話:03-3848-0841
東武伊勢崎線「五反野」駅より徒歩約1分

サミット(東京都/服部哲也社長)は2020年12月9日、東京都足立区に「サミットストア五反野店」(以下、五反野店)を同じ敷地内に建て替えオープンした。同社が新たに掲げる、22年度までの3カ年中期経営計画でめざす店づくりのモデルと位置づける店舗で、デジタル技術を取り入れることで、持続可能性のある店舗運営や地域住民との関係構築を図ろうとしている。

地域社会に貢献し「SMの枠を超えた存在」へ

柴田泰弘店長
「気さくでフレンドリーな接客を心がけ、地域でいちばん愛される店をめざします」

 五反野店は、東武伊勢崎線「五反野」駅から北へ約200mに立地する。1977年に開業した旧店は、サミットにとって衣料品売場を併設した売場面積約400坪タイプの店づくりに初めてチャレンジした店舗だ。開店以降、長年地域に愛される繁盛店だったが、サミットが「新MD」と呼ぶ最新のMD(商品政策)をいまだ導入できていなかった。そこで今回スクラップ&ビルドにより競争力向上を図り、これまであまり取り込めていなかった若いファミリー層を獲得しさらなる売上増を図るねらいだ。

 建物構造は3階建てで、2階の直営の衣料専門店「コルモピア」は売場面積を改装前比で3割ほど減らした一方、1階の食品売場は同約1.4倍となる2102㎡に拡大した。2階にはファミリーレストランといった新たなテナントを誘致し、3階には今後、医療モールを導入する。

 基本商圏に設定する店舗から半径1.5㎞圏内には5万5728世帯/10万5624人が居住する。世代別人口構成比は10~20代が21.0%と東京都平均の19.4%より高い(19年)。

 近隣の競合店としては「マルエツプチ五反野駅店」のほか、ディスカウントストアの「ビッグ・エー」が2店舗あるが、大型の食品スーパー(SM)は比較的少ない。同店で注目されるのは、サミットが新・中計でめざすSMの具現化に挑戦している点だ。

 新・中計のテーマは「GO GREEN2022~社会に必要とされる新しいSMの創造~」(以下、GG2022)だ。「GREEN」には、サミットのコーポレートカラーである緑色のほか、「環境」「健康」「成長」などの意味も込められている。

 その具体的な方針について服部哲也社長は「これからはステークホルダーに『お客さま』『社員』『お取引先さま』だけでなく『社会』も加える。そして、食材を提供するだけでなく、事業を通じて高齢化や環境保護などの地域社会にも貢献できる、SMの枠を超えた存在になることを追求する」と説明する。これを実現することで、業態の垣根を越えた競争が激化するなか、消費者に選ばれる企業をめざす考えだ。

「ハイタッチwithハイテック」を追求

 では、「GG2022」の方針は五反野店にどのように反映されているのか。

 まず、同店では「ハイタッチwithハイテック」を掲げ、最新技術を活用することで、より地域住民に利便性や買物の楽しさを感じてもらえるようにしているのが特徴だ。

 たとえば出入口付近の4本の柱に、デジタルサイネージを設置した。19年10月開業の「テラスモール松戸店」(千葉県松戸市)では壁面に長さ10mを超える大型のディスプレーを設置したが、今回はより小型のタイプを導入した。店舗の外からもディスプレーが見えるようにして通行者の興味をひくとともに、入店すると全4本の柱が視界に入り、来店客が思わず店の奥まで足を進めてしまうような楽しい買物環境を提供する。

 また出入口すぐの場所には、新たな取り組みとして、ドイツ・ベルリン発農業ベンチャー企業であるインファーム(Infarm)の、次世代型屋内垂直農法のファーミングユニットを設置した(21年1月稼働予定)。専用什器によって店内、また「ハブ」と呼ばれる東京都内某所に設置された拠点の計2カ所で栽培したバジルやパクチー、レタスなどの葉物野菜を販売する。

 店内や店舗の近くで農産物を生産することで、物流による環境負荷を低減させるインファームの取り組みが、サミットのGG2022の方針と合致することから今回、業務提携に至ったかたちだ。今後、利用動向をみてその他の店舗への導入も検討していくという。

 さらに「ハイテック」の施策として、約20台ものセルフレジを導入した。サミットはこれまで、セルフレジを都市型小型店で実験的に導入してきた。大型店にこれだけの台数を設置したのは初の試みとなる。

 そうして浮いた人時を、サミットは接客やサービス向上につなげるねらいだ。たとえば同店では、サミットが近年、新店を中心に配置してきた接客専任の「案内係」を、1~2人体制の既存店と比較して多く配置したという。また、来店客から要望のあった商品を揃えるコーナーも大きく設けている。

地域住民とともに店を進化させる

 食品の売場づくりについて順を追って解説していく。取り扱いSKU数は1万2726で、新MDの導入により充実した品揃えを提供する。新MDとは、サミットが11年から取り組む施策で、「生鮮の総菜化」や部門横断型の売場づくりなどを行うものだ。具体的には、青果売場には「フレッシュサラダ&カットフルーツ」コーナー、鮮魚売場には魚総菜の「煮魚・焼魚」、精肉売場には肉総菜の「グリルキッチン」といった、店頭の素材を店内加工した即食商品の売場を生鮮各部門に新設した。また部門横断型の売場づくりでは、総菜部門による店頭の素材を使った寿司は鮮魚売場でコーナー化するほか、鮮魚や精肉部門が手掛ける冷凍食品の一部を冷凍食品売場に集約する。

 総菜売場については、壁面一面に大きなガラス窓を採用し、店内調理のライブ感を演出する。また、新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大の影響で揚げ物のバラ販売ができなくなっても、訴求力ある売場を提供するべく、専門店で人気を集めるメニューを商品に取り入れるほか、什器に傾斜や高低の差をつけて商品を魅力的に見せる工夫を行う。

 そのほか五反野店で特筆したいのが、地域とのつながりを構築するためのさまざまな工夫が見られる点だ。たとえば開店準備の際、SNSを通じて地域に根差して営業するデザイン事務所の存在を知り、イートインコーナーに飾る絵の制作を依頼した。またこちらもSNS上で、サミットの開店を待つ地域住民が「店頭に生えている木がイルミネーションされ、地域を明るくしてくれると嬉しい」という内容のコメントをしていたことを受け、実際に電飾を施した。服部社長は「このような積み重ねによって、近隣住民の皆さんに地域の一員として認めていただき、ともによりよい店をつくっていきたい」と話す。

 このように、サミットが新・中計「G G2022」の方向性を初めてかたちにした五反野店。ただし「現段階での完成度は3割程度」(服部社長)だという。サミットは「GG2022」において、地域住民やお客の“声”を今まで以上に重視しており、これを取り入れることで店を進化させていく考えだ。五反野店の初年度の年商目標は約35億円で、将来的には50億円を達成できるような店をめざす。

売場フォーカス

デジタルサイネージで楽しい買物環境を演出

五反野店では、出入口付近の4本の柱にデジタルサイネージを設置。店舗の外からもディスプレーが見えるようにして通行者の興味をひくとともに、入店すると全4本の柱が視界に入り、来店客が思わず店の奥まで足を進めてしまうような楽しい買物環境を提供する

屋内垂直農法のインファームと業務提携

初導入したインファーム社のファーミングユニット。生産効率が高く、約250㎡の畑と同等の栽培能力を有する。一般的な生産方法と比較して使用する水の量を約95%、肥料の量を約75%削減できるという

セルフレジを20台導入

これまで都市型小型店に実験的に導入してきたセルフレジを、大型店である五反野店に導入。20台もの台数を設置したのは初の試みとなる

新MDを導入

建て替えにより、サミットが近年進める新MDを導入した。鮮魚売場には天井までのガラス窓を設置して店内加工の様子を見せることで鮮度感を訴求。店頭の素材を使った魚総菜のコーナーも設置した

総菜部門の寿司を鮮魚売場で販売

部門横断型の売場づくりにも取り組む。総菜部門が手掛ける店頭の素材を使った寿司は、鮮魚売場の中央平台で売り込んでいる。既存店での実験によりそのほうが売上が高くなる効果が出ているという

あえて売場に凹凸をつくる

五反野店は本来は正方形をした店だ。しかし壁面にあえて凹凸を持たせて、その先の売場が見通せないようにして、来店客がさらに足を進めたくなるように工夫する。写真はとくにその特徴がわかりやすい精肉売場

出来たて感を訴求する総菜売場

総菜売場にも壁一面に大きなガラス窓を採用し、店内調理の様子を見えるようにして出来たて感を訴求する。五反野店では隣に同じく即食性の高い商品として冷凍食品のコーナーを配置した

高低のある陳列で訴求力を高める

総菜売場ではコロナ禍で揚げ物のバラ販売ができないため、別の方法で訴求力を出す取り組みを進める。什器に傾斜をつけて商品の“顔”がお客からよく見えるようにするほか、陳列に高低をつけて賑わい感を出す

専門店で人気のメニューを商品化

総菜部門では、コロナ禍で外食ができないぶん、自宅で本格的なメニューを食べたいというニーズに対応するべく、専門店のような商品開発に取り組む。写真はその一例で「ニラたっぷり黒豚パオズ」

地域住民とともによりよい店をめざす

 

地域住民とともに店づくりを行う方針を掲げる。イートインコーナーに飾られている絵は、地元のデザイン事務所の女性が手掛けたもの。

またお客から要望のあった商品を揃えるコーナーも大きく設けた

乳幼児食品ブランドを初導入

新商品として、乳幼児向け食品のD2C(消費者向け直販サービス)企業であるMiL(東京都)が展開するアレルゲンフリー商品ブランド「thekindest」を導入。人によっては必要性の高い商品として、主通路上でコーナー展開する

直営の衣料専門店「コルモピア」

2階にはサミット直営の衣料専門店「コルモピア」が入る。今回の建て替えにより、売場面積を改装前比で3割ほど縮小し、品揃えも実用衣料品に絞り込んだ

レイアウト

店舗概要

オープン日 2020年12月9日
店長 柴田泰弘
営業時間 9:00~25:00
売場面積 2102㎡
駐車台数 60台
レジ台数 計25台(セルフ20セミセルフ5)
従業員数 正社員28.5人、
パート・アルバイト113.9人(月173時間換算)
年商目標 35億円